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ロボ君と私的情事 作者:露瀬

第4章

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別に、嫌いではありませんよ

「サクラはずるいです」

 なんですか突然に。私はズルくないよ、いや、うーん……まぁ、ちょっとは、そういうところがあるかもしれないけどさ、でも、そこは許してください、大目に見てくださいよ、これでも結構、ハードな人生歩んできてますから、多少の小狡さは生きる為のアレだもん、サバイバルスキルだよ、だって東京にいた頃なんかね、弱肉強食の世界だよ? 長手熊だって罠で仕留めて晩御飯にするよ、生物兵器だってお肉は美味しいからね、ひとりで解体だってできるんだからね。

「欲しいから捨てたのに、欲しいものが捨てられてるじゃないですか、そんなのおかしいでしょう、ずるいでしょう」

 ……ちょっと、なに言ってるのか分からないけど、人生ってそんなもんだと映画で聞いたことあるよ? 私だって、色々と欲しいものあるけどさ、もう少し身長も欲しかったし、ぼいんぼいんにもなりたかったし、でも、私が成人したって、おばあちゃんやハナコさんみたいには、なれないだろうしさ……ぐぬぅ、悔しいけど、そこは諦めよ? 我慢しようよ、他に良いとこ見つけていこうよ、ポジティブなシンキングだよ。

「我慢なら、ずっとしてました……ずっと、ずっと前から……生まれた時からです」

 うん、それは知ってるけど……ん? あれ? いや、知らないな? 私しらないよ、というか、あなたは誰ですか。

「だから、私だって、少しくらいしても良いはずです、ええ、そうですとも、そうに違いありません」

 おいこら、人の話を聞きなさい、なんか分かってきたよ、君はちょっと先走ったり突っ走ったり暴走したりする、思い込みが激しいタイプの人ですな?

「……少なくとも……さんは……べき……しょう……どう……いつ……まぁ……ことが……き……のは……」

 あれ、なんだ、声が遠い、というか何だこれ、誰だいまの……なんか怒ってるというよりも、拗ねてたような。



「サクラさま! サクラさま! ……良かった……ですが、あれほど言ったでしょう、離れないでくださいと、私の結界では直撃に耐えられません……キアシ、セグロ、盾になれ! フタモンは退路の確保! 敵が見えない、先行して餌になれ! 」

 ちよっ! な、なんだこれ……また意識が飛んでた、なんだこの状況、なんだ……確か、天領騎士とピッチリ合同軍が……それから……そ、そうだ、思い出した。



「真正面からやって来るとは……ふむ、腐っても天領騎士団、堂々たるものであるな」

「それにしても正直過ぎるだろう、数が合ってる、伏兵も無いのか? 多勢だからと舐めてるのか、それとも隠し玉があるのかな」

 ハナコさんのビーチにて、私達は敵を迎え撃つ事にしたのです。どうやらこの人口海岸は、大規模な襲撃にも備えた造りにしていたようで、砂の中には対戦者地雷やアキレス腱クリッパー、海中からは大型投爆機に頭部破砕用遠距離クラムシェル、そして空中には合成破裂ニードルモグラを抱えた戦闘用強化ウミネコ達が、準備万端と待ち構えているのです……もっとも、ピッチリ相手ならばともかく、抜刀した騎士には、全く通じない兵器群なんですけどね。

「それは、例えばぁ……私達の裏切りとか、かなー? 」

 おい、不穏当な発言はよせ、くすくす笑ってんじゃないよ、シャレになんないからね? 念の為に栗原さんとは距離をとらせてもらいます! ……でも、ほんとに何のつもりだろう、ラーズさんやイムエさんを見るに、新生天領騎士さん達が真面目な堅物っぽいってのは、なんとなく想像つくんだけど、それにしても変じゃない? これじゃ真面目っていうより、馬鹿正直というか、無策というか、普通にバカっぽいよね。

「天領騎士団はともかく、奉基署の連中まで、雁首そろえて前進してくるのはな……まぁ、どうせやる事は同じか、行ってこよう……華村、サクラを頼む」

「はい、お任せください……辛島さま、ご武運を」

 全くに気負いのない様子で、ひとり進み出たロボ君の後ろを追いかけ、ハナコさんが、カカッと、肩口で切火を切る……だから、夫婦か! なにそれ、いつ用意してたのよ、そんな暇あるなら着替えなさいよ! みんな水着じゃん、きちんと戦闘服のビッ毛おじさまとお供の人が逆に浮いちゃってるからね? 私も水着だけど、栗原さんも水着だけど……栗原ァ! 妙な対抗心燃やしてんじゃないよ、カチカチすんな、やった事ないなら大人しくしときなさい!

 ふんだ、結局、こっちを見もしないんだから……やっぱりロボ君はロボ君だよ、心配して損したよ。まぁ、信じてるけどさ……でも、ちょっとくらい、ねぇ。

 不安の中に、少しだけの不満を抱え、私は唇を尖らせて、悠然と歩く彼の背中を見つめていたのですが。

 そのロボ君がいた場所が、突然に大爆発。少し遅れて、ごぅん、と大音響。

「うわ、な、なに? なに? 」

 舞い上がる砂塵と震える鼓膜に、私は眼と耳を固く閉ざし、その場にへたり込んだのですが。

「なっ……ばっ、ば、馬鹿な! 」

「あれは、まさか! アシナガ! サクラさんを守りなさい! 後退して! 」

「嘘、まじで、ちょっと……シャレになんないんだけど……」

 な、なに? 何が起きたの? いまのなに? まさかロボ君、地雷を踏んづけちゃったとか? うぐぐ、耳が痛い、砂埃で目が……いったい、どうなってるの。みんなの慌てた声と、駆け出す足音、これは、戦闘が始まったのか、どうなのか。

「サクラ先輩、アルタソマイダスですよ……なんでしょうかね? 今の今まで放置してたのに、この場面で投入してくるなんて……まさか、来てるとか? ……どうかな、それはないか」

 アル……なんだって? え、ひょっとして剣姫とかいうひと? なんで? どっから来たの? というかこれ、不味くない? し、シャーリーくん、どうしよう、確かあの人って、かなり物騒な……だったよね。

「どう、と言われても……せんぱいが抑えられちゃったら、勝ち目は無いですよ? まぁ、華村先輩が頑張れば……どうでしょうね、サクラ先輩の脱出くらいなら、なんとか」

「し、シャーリーくん、助けて! 」

 思わず口をついてしまった言葉は、やはり少し、ずるいものでした。なので、こんな状況なもかかわらず、いつもの澄ましたお人形フェイスにも、わずかばかりの歪みが見て取れたのです。

「前に、言いましたよね? 僕は、サクラ先輩がどうなろうと……」

「は、ハナコさんを助けて! お願い、シャーリーくん! 」

 こんな事、頼める立場じゃないのは分かってる、この状況、シャーリーくんを海に誘ったのは、打算的なものだと思われても仕方ない……でも、私は、仲良くなれたと思ってたから、嫌われてるのは知ってたけれど、それでも、仲良くなりたいと思ってたから……だからお願い、一度で良いから、なんでもしますから。

「……気持ち悪い顔、してますよ」

「い、いたた、痛い、いたい」

 ぐみぃっ、と頬を抓られ、私は悲鳴をあげる。ちくしょう、諦めないぞ、かじりついて拝み倒してやる、私のしつこさを思い知れ。

「はぁ……まぁ良いです、別に、サクラ先輩がどうなろうと、僕には関係ないんですからね」

 砂埃の向こう側では、どどどどどっ、と新たな爆音と新たな煙幕。砂を通して伝わる振動は身体を浮かせる程であり、よろめいた私は、アシナガさんの豊満な胸にキャッチされるのです。

「でも、関係はないですが、後ろには逃げない方が良いですよ? 死にますから……あと、勘違いしてるみたいなので、一応言っておきますが」

 どおん、と再びに爆発音、これは、私の背後から。え、なにそれ、なんで後ろから……まさか挟まれてる? なんで、どっからだ、まだ敵が居るの?

 続けざまに弾ける轟音と、アシナガさん達の叫びに紛れ、シャーリーくんの次声は、ほとんど聞き取れませんでした。

「別に、嫌いではありませんよ」

 おそらくは、わざとなのでしょう。


 ……ずるいなぁ。

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