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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第4章
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狙いは佐倉くん、君であるのだ

 いやー、遊んだ遊んだ、なんか10年ぶんくらい、いっぺんにハシャいだ気もするよ、やったね……はい、遊んだ後はおねむの時間、エネルギーを使い果たした幼年児こと佐倉サクラです、すぴーすぴー。


「お初にお目にかかる、それがしはビッケ=パイパン、西京テンプル騎士団総団長を務めており申す」


 いやね、ほんとに疲れました……騎士どもの体力舐めてたよ、よくよく考えたらね、私みたいな一般ズンが、あんな怪獣どもと同レベルで遊べるはずもないのですよ、ほんとホント。


「それがし、ビッケ=パイパンと申す」


 ……なので、私的にはね、もうお休みしたいのです、あ、でもまだご飯は食べるからね、焼きそば焼いてる途中だもんね、海鮮たっぷりの超豪華焼きそばだよ、バーベキューもするよ、その後で皆んなと花火してね、それからお風呂入るでしょ。


「ビッケ=パイパンと申す」


 ……ぐっ……お風呂は露天なんだって、ちょっと恥ずかしいけど、せっかく水着なんだから混浴にするんだってさ、でも、うん、楽しみだね、あと、お酒を持ちこもうとしてた栗原さんは注意(エクスカリバー)しといたよ、未成年の飲酒ダメ、ぜったい、佐倉家は健全なのがモットーです、健康優良不良少女は強制帰宅させるからね。


「パイパンですぞ」


「うるさいよ! 」


 うるさいよ! なんやコイツ! また新たな変態か! せっかく人が突っ込まずに置いといてあげたのに、地雷原に突進してくんな、レディーファーストか! 私は行かないよ、歩かないよ! 次に言ったら容赦せんぞ、初対面からのエクスカリバーやぞ!


「だんちょー、持ちネタはいいからさぁ、ちゃちゃっと説明済ませちゃってよー、お腹すいたし、いたしかたなしだよー」


 テント下の大きなテーブルには、何処かへ消えたなんとか先輩の代わりに、男1人に女性が2人……たぶん、全員テンプル騎士だと思うよ、これ、だって見るからに強そうだし……はい、ともかく、新しいメンバーが三人ほど増えていたのです。


 ……というか持ちネタかよ! いつもやってんのかこの変態セクハラ親父、ちょっと渋いオジサマだからって許さへんぞ!


「そうであるな、では、手早く済ませよう……それがしの名は……」


「うるさいよ」


 もうイイっつってんだろ! しばくぞコイツ、えぇい、もこたん、やっちまいな。


 めぇ。


 てろん、と伸ばされた彼女の舌はしかし、何をされたものか、テロテロと巻き戻されてしまいました。えぇ、何やったの? 何したの? まさか先端呪術? うぬぬ、変態のくせになかなか芸達者だな……でも、見た目はカッコいいんだよなぁ……なんでかなぁ……なんで騎士ってのは皆んなこうなのかなぁ。


 ビッ毛団長さんは、見たところ四十路(よそじ)の後半くらい、身長はロボ君よりも低いけれど、白い制服の上からでも分かるほど、ムッキムキに鍛えた身体にロマンスグレーのオールバック、整えた同色の口ヒゲが、なんとなく古風な感じの美中年さんだよ……変態セクハラ親父だけどな!


「むはは、これは失敬……でだ、佐倉くん、君のお父上についてだが……まぁ、それがしのチクワの友という奴でな、長い付き合いもあって、今回の件を任されたのだ」


 はいはい、竹馬の友ね……なんかこのオッさん、ちょいちょいボケてくるけど、相手しないよ、進行は円滑におこないますからね、お腹すいてるからね。そもそも、ロボ君が言うには、私に親なんて居ないのだ、こんな初対面のオッさんと、彼氏……うぅん! んぅ、げふんげふん……ロボ君の言う事なら、どっちを信用するかなんて、火を見るよりも明らかなんだからね、でも、彼の情報源がおばあちゃんな以上、酔っ払って適当な事を……じゃなくて、私の為を想って、あえて嘘付いてる可能性もあるよ、そのくらい理解してるよ……だから、ちゃんと聞くのです、これも、私が判断することだよ。


 そこから、このおじさまの話が始まったのですが、彼が言うには、天領と西京は長い間冷戦期間であったと、それを憂いていたのは、先代の天帝……つまり私のお母さんと、西京の御三家であるジルオール家の若き当主……これがお父さんね、んで、御三家ってなに?


「西京で最も古く、力のある華族の事ですよ、サクラさん、議長のジルオール家と、いつぞやのバラン家……あとは、わたくしの華村家、ですわ」


 バラン?……あぁ、ダゲスのおウチか、へぇ、そんな良家のおぼっちゃまだったんだね、ゲスだけど……そういや、あいついま何してるんだろう、ゲスだから、なんか仕返しとか企んでそうだよなぁ……やだなぁ。うーん、しっかし華族様かぁ、でも、私のお父さんカッコカリが、どんな人だって、私が変わる訳でもないしなぁ……うん、やっぱり関係ないな、それは放置しとこ。


「へ、へぇ、そうなんだ、ううん、でも、そう言われても、特に、何も変わらないよ……正直、私には関係ないし」


 何か、言いにくそうに、少しだけ哀しそうな表情のハナコさんだったのですが、私の答えを聞いた瞬間に、抱き着いて頬ずりを始めるのです。だからなんでだよ、ハウスして、ハナコさんハウスして! えぇい、話が進まないでしょ。


「うむ、尊いであるな……そして、想いを同じくした若いふたりは、手を取り合い、天領と西京の和解の道を模索し始める、なれば自然と惹かれ合い、愛し合って、いやらしい事をし、そして佐倉くんが生まれたという訳である」


「うるさいよ」


 ホントうるさいなコイツ! なんや、今いい話だったろ! 台無しだよ、余計な言葉挟んでんじゃないよ、あと、最初のはなんだ。


「しかし、事はそう簡単に進むものでもない……仇敵との和解を好しとせぬ勢力が、戦を引き起こしたのだ……天帝は暗殺され、そしてその混乱に乗じて、天帝の、彼女の力を手にしようと、佐倉くんを狙う不届き者も跋扈し始めた……剣聖どのが長らく匿ってはくれていたが、彼女亡き今、佐倉くんを守る者はもう居ない、君のお父上であるバランタインも、例え娘といえど迂闊に囲えば、その力を独占するのかと疑われる……まぁ、これは大人の事情であるな……せめて、この学園島に連れてくるのが、奴なりの親心であったのだろう」


 ……うーん、どうなんだろう、なんとなく、筋は通ってる気もするなぁ……もしもお父さんカッコカリが、おばあちゃんとロボ君の関係を知っていたなら、彼に私の事を任せようと考えたのかもしれない……私に顔を見せなかったのも、親子関係まで隠してたのも、それが私の安全に繋がるからと、そう考えたのかもしれないよ……でも、うーん、どうなんだろう? うぬぬ、難しいなぁ。


「あ、あの、あの、でも、どうして、議長さんは、その、今さら、私を守ろうと? あの、あなた達を寄越したのは、どうして、ですか」


「うむ、良い着眼点である、成る程、胸が無いのは、知恵に回ったからであるか」


「うるさいよ! 」


 くっ……こいつ、後でやったる、絶対にだ! 今は我慢だよ、情報を入手するまで、我慢だからね……というかロボ君は少し怒ってもいいんじゃないの? かの、ぐぅ、かのじょがね、なんかさっきからディスられてるんだけれども、ちょっとくらい……あれ? おい、どこ行った……焼きそば焼いてんじゃ無いよ! 何してんのよ、アシナガさんに迷惑かけてんじゃないでしょうね? というかなんか距離が近いからね? 後で説教だよ?


「それがしの派遣された理由であるが、どうにも、天領の残党どもが、怪しげな動きを見せているようでな……実は、学園島の大規模マス防御結界に穴が空いていると判明したのだ、場所は分からん、しかし奴らは結界の一点に連続して特攻し、僅かづつトンネルを開けたらしい……戦者100人が我が身を捨てたのだ、恐るべき覚悟である……残る新生天領騎士が十六席も、全て中京から姿を消した、ならばこれは、決戦であろう……舞台はここ、学園島である、そして」


 え、なにそれ怖い……そう言えば、ラーズさんが、多くの仲間がどうとか……うわ、言ってたよ! 確かに聞いたよ、これのことか、なんて無茶をするんだろう……100人なんて、中京の残存する戦者全部じゃないの? なにしてんのよ、そこまでするの? 本当に、私みたいなちんちくりん手に入れて、どうするつもりなのよ。


「狙いは佐倉くん、君であるのだ」


 うぅ、知ってたけど……知ってるけどもぉ……どうしよう、これ。


 どうしよう。




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