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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第4章
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うん、サクラちゃんのお父さん

「へぇ、そんな事があったんですか」


「な、何も言ってないよ、まだ」


 観てましたから、と答えるのは、澄まし顔のシャーリーくんなのです。だからエスパーかコイツは、相変わらず怖い子やで。


 はい、落ち込むのは後回し、いつもの場所でいつものご飯、佐倉サクラです、ぴーすぴーす。


 ですが、今回のランチタイムは、いつもとちょっぴり違っていました。ちなみに今日のメニューは串揚げ君です、テーブルの真ん中に現れた大型フライヤーで……もう、突っ込む気はないよ、学園島め……旬の野菜や海鮮からお肉まで、様々な食材を自分で揚げるスタイルなのですが、まぁ、それは良しとします、問題は、現在このテーブルを囲うこのメンツ。


「華村ちゃん、もう少し落ち着きなよ、まだ生じゃないの? それ……やれやれ仕方ない、お兄さんが作法を教えてあげようか、衣は付けてあげるからさ、華村ちゃんは後で衣を脱いでくれるかい」


 しゅびっ。


「栗原ちゃんはどう? 美味しい? そう、良かった、結構楽しいだろ、こうやって自分で作るのもさ、じゃ、後でお兄さんと子作りしよう」


 しゅびっ。


「マコっちゃんは……いらないや」


 しゅびびっ。


 突っ込む気はないからね。というか皆さん方がもうやってくれてるみたいだよ、私には見えないけれど。


 楽しいはずのランチタイムも、今日は変態を囲う昼餉(ひるげ)と化してしまっているのです、私とハナコさん、そしてシャーリーくんが占拠していたテーブルに割り込んできたのは『つらぬき姫』こと栗原リリィさんと、この……誰だっけ、これ、超絶イケメンさんではあるんだけど。


「ウォーレン先輩、お戯れも、程々に……わたくし今日は、いささか気が立っておりますの」


 再びに隣の席から、しゅびっと風切り音、私の前髪がふわりと持ち上がるのです。先程から聞こえてくるこの音楽は、おそらく百歩神拳(ソニックストローク)でしょう……なんか、三人とも遣えるんですね、かなり高度な技術のはずなんだけどね、怖いですね。


 というか、この技って、あのピッチリヘルメットの頭を吹っ飛ばす威力だよな……いくら変態イケメン変態先輩相手とはいえ、三人がかりでそれはやり過ぎな気もするよ、でも、ウォーなんとか先輩は、全くのノーダメージみたいなのです、なんか前髪だけはフワフワしてるけど……衝撃波を上に逃がしてるのかな? ひょっとして、この先輩も凄い強いんだろうか……変態だけど……変態仮面イケメンマスク先輩だけど。


「ウォーレン先輩、そろそろ空気を読んで退席願います、気持ち悪いし、きもちわるいです、ただでさえ、気持ち悪い女と同席してるのに、これ以上僕に負担をかけないでもらえますか」


「ん、んん? 私? いまの、私のことー? ひどいなぁ、私が可愛いのは認めるけど、そこは認めないよ、気持ちいい子だよ、ねぇ、サクラちゃん? 」


 あ、はい、こっちに振らないでください、今の私は冬場のクサガメですから、ちっこくなって存在消してますから……ほんと、勘弁してください、何このテーブル、私以外みんな超絶美形の集まりなんですけど、アイドルグループとそのマネージャーかよ……そういや学園島にもアイドルユニットあったな、なんだっけ、一年の時にハナコさんと栗原さんも強制参加させられてたとかなんとか……まぁ、私みたいなケンミジンコには、関係ない話なんですけれどね、いや、私だってね? 調子のいい時にはね、乗ってるときにはね、鏡の前で『お、なかなか可愛いじゃん? イケてるじゃん? 』とかも思うのですけれどね……こうして本物の超絶美形達に囲まれてしまうとね、自信喪失ですわ、いたたまれませんのことよ。


「……お兄さん的には、こんな自己中で自惚れ屋のブスよりも、サクラちゃんの方が百万倍可愛いと思うよ」


 ん? なに? 誰だ、なんとか先輩か。いや、フォローは有難いのですが、もう少し言葉は選んでくださいね……うぅん、この人もちょいちょい毒を吐くんだよなぁ……怖いなぁ、あとエスパーか、お前も、そっちも怖いからやめてください。


「……んー? もしかして、それ、私のこと……かな? 」


「あはは、他に誰がいんの、華村も、シャーリーだって、お前よりはマシさ……お前、中身から臭うんだよね……あと」


 かたり、と椅子を引いて立ち上がる先輩は、周囲の女生徒達に手を振りながら、キラリと前歯の輝く様な笑顔を見せたままに。


「サクラちゃんが同席してて助かったね、感謝しときな……例えおふざけでも、次、お兄さんに剣を向けたら、命は無いよ」


 おててふりふり、立ち去ってゆくのです。


「……ふぅーん、自信だけはたっぷりだよね……顔面偏差値が高いと、そうなっちゃうのかなー……ねぇ、どう思う? サクラちゃん」


「あ、あぅ」


 だから、なんで私に振るんだよ! 答えようが無いんですけれども! もうやだ、ネギま作る、没頭する、ちなみにネギまってのは、ネギとマグロが語源だそうですよ、串に刺して焼いてたんだって、なんか美味しそうだよね、今度やってみようかな。


「ウォーレン先輩が最低でド変態なのは間違いないですが、人間性はド底辺でも、剣力(けんりき)に関しては、まぁ、栗原先輩より遥かに上だと思いますよ? 正直、戦後叙任の天ぷら騎士風情が何を粋がってるのか、身の程を……あ、華村先輩もそうでしたか、ふふっ、笑えますよね? サクラ先輩」


「しらないよ」


 だから、私に! ……いや、ネギまネギま。


「うーん……まぁいいや、その時になったら理解(ワカ)るもんね……でもさ、私としては、辛島ジュートの方が気になるなぁ……アルタソマイダスとやり合って互角って聞いてたから、期待してたんだよね……私は1分も持たなかったしぃ……サクラちゃん、こないだのアレ、まさか本気じゃないよね? 」


 ん? 誰? アル……なに? また知らない名前が。


「サクラ先輩『剣姫』の事ですよ、剣姫アルタソマイダス……天領の戦でせんぱいと戦った中身空っぽの暴力装置サイコ女の事です」


「そ、そう、なの? あと、心読まないで」


 ああ、あの人ね、なんか物騒な人っぽいね、聞かなかったことにするよ、なーんか、ロボ君とも変な関係ありそうだしさ、知らないよ、聞かないよ……そしてハナコさん、なんか大人しいと思ったら格子状に串を組み立てて……何それ、串カツでカゴを作ったの? 中に具材を入れて? 一度に揚げる気か……うわぁ、かしこーい! って馬鹿! 私にもちょうだい!


「私はさー、ちょっと遊んでみるだけのつもりだったんだけど、手足バラバラにされちゃってさー、危うく死ぬとこだったんだよね……辛島ジュートはさ、ほんとにアレとやり合ったの? そんで無事に生きてるって? そりゃ、気になるよ、議長派に乗っかったのはさ、じつはそれが目的」


「僕も、せんぱいと剣姫の戦いは観てないんですけどね……天領に攻め入った当時のテンプル騎士30騎と主力騎士団が、巻き込まれてほぼ全滅したんですから、その少ない脳みそでも分かるでしょう? 違いますよ、次元が」


 う、何やらまた物騒なお話……やだなぁ、私の知らないとこでやってくんないかなぁ……あ、ハナコさん、銀杏嫌いなの? 好き嫌いしちゃダメだよ、ちょうだい。あと、議長派ってなに?


「はい、サクラさん、あーん……うふっ……あ、そうそう、議長ですか? 西京の……そうですわね、一番の権力者、と言えば分かりやすいかしら」


「へ、へぇ、じゃ、栗原さんは、その人の命令で、私に会いに来たの? 」


 お偉いさんかぁ、なんとなく嫌な予感しかしないけれど、でも、とりあえずは味方だって事なんだよね……向こうが言うには……うぅん、少なくとも、この栗原さんは腹芸の得意なタイプって訳じゃ無さそうなんだよなぁ……もし私達を油断させる作戦って事なら、ねぇ? もう少し、ねぇ? まともな人を連れて来そうなもんだよねぇ。


「まぁねー、頼まれたのはウチの団長だけど……でも、変だよね、お父さんなら直接言えばいいのにね」


 ん? なに? また訳わかんないよ? 誰が? 誰のお父さん?


「お、お父さん? 」


「うん、サクラちゃんのお父さん」


 は? ……いま、なんて?


 なんて!?


 


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