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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第4章
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決まりね、海行こう!

 ハローみなさんこんばんは、玄関開けたら2秒で矛盾、佐倉サクラです、いぇいいぇいぴーすぴーす。


 はい、いつも通りのハイテンションなんですけどもね、でもね、これは仕方ありません。えぇ、そうですとも、仕方のない事なのです、だって、こうでもしないとね、もぅね、目の前の光が強すぎて、私が見えなくなってしまうでしょうから。


 西京の北に浮かぶ孤島、この聖十字学園には、4人の『姫』が居ると評判なのだそうです。えぇ、そうですよ、姫ですとも、プリンセスでごわす、まぁ、本来の意味でのお姫様では無いのですけれどもね、要はこの学園島に、超絶可愛い4人の美少女が存在すると、そういう事なのです。


「ほっほーぅ、キミが噂のサクラちゃんなのだね」


 まず一人目は、みなさんご存知の『怪獣王女』こと華村ハナコさん……まぁ、説明する迄も無いですね、金髪ぼいんぼいんの美ゴリラさんです。そして二人目は中等部の『白銀(しろがね)王子』シャーリー真くん……うん、まず言いたいのはね、なんで王子なの? そして白銀はどっから来たのさ、シャーリーくんは金髪だよね? 誰だ名付け親は、センスねーな! まぁ、でも、なんとなく、そうね、ふんわりと納得してしまいそうになる不思議なチカラはあるね……よし、許します。


「ほぅほぅ、なかなか可愛いじゃないのさ……いいなぁ、私、黒髪って好きなんだよねー、ツヤッツヤだしさぁ、あ、いいニオイする、うへへ」


 三人目は『ミス聖十字』これは、大等部にて毎年行われるコンテストの優勝者に与えられる称号とかで、ちょっと意味合いは違うのかもね、でも、今の学園島で『四美姫(よんびき)』って呼ばれてるのは、この人達らしいので、このカテゴライズも私の責任じゃありませんのですことよ。


「……ほっぺたもちもちだし……なんか、美味しそうかも」


 そして、最後の一人が『つらぬき姫』と呼ばれる……うぅん、なんかまた物騒なあだ名だなぁ……やだなぁ……すっごい嫌な予感するなぁ、また騎士さまなのかなぁ……たぶん、きっと、また変態だよなぁ。


「……味もみておこうかな」


「や、やめっ! 」


 やっぱり変態だった! なんやこいつ、まじか、初対面やぞ! おいよせペロペロすんな! 抱き着くな! ハナコか貴様、よぉし分かった理解した、やっぱり騎士は変態ばっかりや、そこになおれ、脳天唐竹割(えくすかりばー)やぞ!


「あはっ、冗談だってば、華村さんじゃあるまいし……でも、さっきからずっと話しかけてるのに、無視してるサクラちゃんも悪いんだからね? 」


 あ、はい、それについては謝りますとも、ごめんなさい、また現実逃避してました……でもさ、だってさ、何回も言うけどね、仕方ないんだって、この、目の前で小気味良く笑うね、この人はね。


 超絶、美少女! だったのですから。


 もうね、なんと言って良いのやら、ですよ。わたしは良く知らないけど、女子校なんかでは、体育会系な女の子がね、女子からモテモテなんて話を聞いたこともあるんですけどね、うん。


 わかるわー。これ、わかる気もするわ。


 すらっと高い身長は168センチってところかな? 胸は無いけど、均整のとれたプロポーションというのか、彫刻家が見たら涙を流して悔しがりそうな感じ、美的感覚とか芸術的なセンスとかに乏しい私でも理解できるよ、これ、完成されてるわ、仕上がってる。短めの髪は薄い栗色で、この長さなのに、風が吹いたらふんわりと舞い上がりそうな柔らかさ、少しだけ目が鋭い感じだけど、表情はニッコニコだから綺麗に中和されてるね……うーん、確かに、これは甲乙つけがたいよ、ハナコさんともシャーリー君とも、また違ったタイプの美少女だね。


「は、はい、あの、か、考えごと、してて、ごめ、なさい」


「あはは、いーよいーよ、こっちこそごめんね、突然話しかけちゃってさ、でも、実は前から気になってたんだよね」


 くすくす、と悪戯っぽい笑顔も満点ですわ……ちくしょう、なんか悔しい、神様は不公平だよ、せめて少しだけ身長を分けてください、お願いします。


「そしたら、こんな所をヨチヨチ歩いてるじゃない? これはもう、襲っとくしかないやーってさ、なるじゃん? 」


 ん? いま、なんて?


「サクラちゃんってさ、わりと不用心だよねー……ねえ、あのさ……自分の置かれてる状況、ちゃんと理解してる? 」


 ここは、第十三校舎の待合待機室。ハナコさんが用事を済ませるまで、わたしはここで暇つぶしをしていたのですが……ひょっとして、あの、これ、まずい感じなのでしょうか……じりじりと詰め寄ってくるこの美少女に、わたしは壁際まで追い込まれてしまいました……そういえば、いくら放課後とはいえ、この生徒達の憩いの場に、誰も居ないなんて珍しいとは思ってたんだけど。


「こいつが不用心なのは確かだが、お前に人の事が言えるのか? 」


「言えるよー? だって、知ってたもん」


「ろ、ロボ君! 」


 やった! 助かった、ありがとう、今日は早いよ、さんきゅさんきゅ……そっか、そういや以前に、なんかそんな事を言ってたような……確か、もうお前を離さな……おっと危ない、思い出すな、いかんぞ、いかんいかん。


「知ってたなら話が早い、どけ、さもなくば腕をちぎるぞ」


 おいこら、言い方! あのね、ロボ君や、君はこうね、もう少しこうね、人間味というかね、いや、ありがたいんですけどね? いつも感謝してますよ?


「やだの助」


「そうか、残念だ」


 次の瞬間、わたしの身体が壁に押し付けられた、うぐぐ、これはなんだ、風圧? 思わず目を閉じた私が、次にそれを開いたとき、しかし眼前には、信じられない光景が広がっていたのです。


「むっふーん、おっそいおっそい……ひょっとして手加減してくれた? 私可愛いから? ありがとね」


 いつの間に入れ替わったものか、入り口のドアの前に栗色の美少女と、そしてわたしの目の前には、ロボ君の後頭部が……え、なんでこの高さ? 膝ついてる? 嘘、あのロボ君が?


「……手加減はしてないが……悪かった、ちぎるのは首にする」


 だから、言い方! というか、ここじゃまずいよ、校舎が壊れちゃうから、ちょっと一旦落ち着こう、ね、ロボ君、ここはひとまず退却しよう、なんか強敵っぽいし、ハナコさんとも合流してからだよ。わたしは、ぐいぐいと彼の背中を引っ掴み、この怪獣を止めようとしたのですが。


「私、栗原リリィ、テンプル騎士やってるから、これからよろしくね」


 ……ん? あ、ちょっと待って、なんか分かった、こいつ変な奴だ。いや、変な奴だとは最初から分かってたけどね、多分この人、とりあえず敵意は無いっぽい感じの人だ、ただの変な奴だ。


「そうか、言いたい事は、それで良いか? それが最後か」


 だから落ち着こうね? ロボ君落ち着こうね? ちょっと待って、この人は話が通じるみたいだから、聞いてみようよ、とりあえず、やる気は無いみたいだしさ。


「え、違うよ? まだあるよ……ちょっと待って……えーと、うーん……そうだなぁ、とりあえずは……お肉……いや、今は、甘い……違うな……あれ? なんだっけ」


 はい訂正します、話は通じないみたいです……うん、帰ろうロボ君、なんかお腹すいてきたよ、今日は昨日の合成豚を天ぷらにしたげるからね。


「……海! そうだ、海行かない? 」


 いや、行きませんよ? そういうのはね、友達同士で行きますからね? でも、そうだなぁ、ハナコさんと、シャーリー君も誘って泳ぎに行くのも良いかもね、うん、そうだね、なんだか楽しそうだし、計画してみようかな……でも、栗原さんとは行きませんからね? 友達じゃないし。


「……い、行き、ません」


「決まりね、海行こう! 」


 え、なにこいつ、強い。





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