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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第3章
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たぶん、天領の

「へぇ、そんな事があったんですか」


「う、うん、そう、なんだけど……」


 いつも通りの通学路、夏真っ盛りの日差しと、合成セミのシャワーを浴びながら、私はシャーリーくんと仲良く下校中なのです。いえね、今日は私から誘ったんだよ? 珍しくね、なんていうか、ちょいと相談したい事があったしね……でも、ふふん、ちんちくりんの私が、他人より目線が高いのって、なんか新鮮、隣を歩くシャーリーくんは、私スケールによると身長163センチくらいだから、10センチほど下駄を履いた、今の私の方が高いはずだよね……えへへ、楽しいな、リニアギプス様々だね、どやっ。


「何ですかその目は、サクラ先輩の分際で、僕を見下してるんですか、そういうの、イラつきますからやめてください、引っこ抜きますよ」


「ふわっ!?ご、ごめ……なにを? 」


口蓋垂(こうがいすい)


 ……なにそれ? でも、なんか痛そうなのは分かったから、やめてくださいね。もう、相変わらず過激な子だなぁ……可愛い顔してんのになぁ、勿体ない……ところでいつズボン脱ぐの? もう暑いから脱いじゃおうよ、うへへ、半ズボンでもいいよ? はよはよ。


「……のどちんこって言えば、馬鹿な先輩にも分かりますか? あと、また目が華村してますよ、気持ち悪い……じゃ、口開けてください」


「ごめんなさい」


 私は、こきっ、と腰を直角に曲げて、全面降伏。同時にのどちんこもしっかり隠す策士っぷりですわ、でも、のどちんこってなんの為に付いてるんだろね? まぁ、何かの役には立ってるんだろうからあげないよ、勘弁してくださいね、あと、目付きに関しては本気でごめんなさい、だから早く脱いでね、そうだ、今度みんなでプール行こっか……ぐふふ。


 すぱん。


 あいたっ、後頭部を叩かれた……な、なぜだ、顔は見えなかったはず、さてはよく分からずにしばいたのか? なんやと、そんな理不尽、許されざるよ!


「……気持ち悪い息が漏れてるんですよ、わかりますからね……はぁ、何でこんな人と、せんぱいが……」


 俯いて吐息を漏らすシャーリーくんは、その金髪に陽光をきらめかせ、まるで、木漏れ日の中に佇む妖精の如き、神秘的な可愛らしさなのです……はぁ、いいなぁ、ハナコさんとはまた違う別嬪さんだよ、少し中性的で冷たい感じだけども、そこがまた……ん? ちょっと待って、ひょっとして……こないだのも全部観てたの? つまり、アレも? なんとなく恥ずかしいから言わなかったけど、私の、は、初、はつ。


 ぐいぃ。


「ふがっ、いはい、ひゃーりーふん、いはい、いふぁい」


「思い出し笑いしてんじゃないですよ、そういうのも、イラつきますから、やめてください……まったく、いやらしい……男を(たぶら)かす淫売……ビッチ……白拍子(しらびょうし)……」


 ぐぐぅ、すんまへん、私が悪ぅございました、ほっぺたが千切れるから、やめてください……ところで白拍子ってなに?


「はぁ、まぁいいです、別にせんぱいが誰を抱こうと、誰に抱かれようと関係ないですからね……それで? わざわざ僕に声をかけて、何か話があったんじゃないんですか? 念のため言っておきますけど、恋愛相談なんかしたら引っこ抜きますよ」


「ち、ちがうよ! そうじゃなくってさ……そ、その、シャーリーくんは、どこまで知ってるの? 私の事……もし、知ってる事があるなら、教えて欲しいの、わたし、何も知らないから……今のままじゃ、何も、出来ないから」


 うん、今度は私が俯く番だよ、だってさ、今の状況、私に原因があるのは分かってるのに、それが何なのか、私は知らないんだもの、何にも知らない、どうしたらいいか分からないんだもの、ロボ君やハナコさんは、多分、知ってても教えてくれない気がするよ、きっと、私に余計な心配をさせない為、だと思う……でも、シャーリーくんなら、そんな事ないよね? なにか、手掛かりでもいい、きっかけでいい、少しでも、知りたいの。


 そんな事を、たどたどしくも伝えてみたのだ、勿論、きちんと伝わったかどうか自信は無いのだけれども、それでも、彼女はこんなに気の利く子なんだ、私が真剣なのは分かってくれるはず……だから、お願い。


「僕は、サクラ先輩になんか、何の興味もありません、汚ならしい吸血鬼みたいに、血を吸いたいとも思いませんしね、それで力が手に入る、なんて思ってる奴らも居るみたいですけど、正直、先輩にそんな力があるとは思えません……だから、好きにすれば良いと思いますよ」


「す、好きにって、で、でも、それを、どうすればいいのか……わかんないもん……ねぇ、シャーリーくん、私って、誰なの? 何でみんなが、私を狙ってるの? 」


 そうなのだ、まずはそこから分からない。こんなちんちくりんの女子高生に、いったい何の力があると思ってるのか、もし、思ってるのだとしたら、それには理由があるはずなのだ……例えば、私の生まれについてとか。


「……知りません、これは、隠してる訳じゃありませんよ、噂なら色々ありますが、僕は憶測でものを言うのが嫌いなんです……でも、その噂のひとつなら、今から聞けるんじゃないですかね」


「え? それ、それって、どういう……」


 いくつもの疑問符を浮かべる私に、シャーリーくんは、ぴっ、と前方を指差すのです。まるで犬のようにそれを追いかけた私の視線の先には、並木道の向こうから、並んで歩いてくる二人の男女。


「騎士ですよ、二人とも」


 ああ、そういえば昨夜、アシナガさんから、そんな事を聞いただろうか。……え、嘘、もう来たの? 何で来たの? どうしよう、ロボ君もハナコさんも、ここには居ないのに……うぐぐ、またやっちゃった、シャーリーくんと話したいからって、二人を遠ざけちゃった、ちくしょう、私の馬鹿、ポンコツ太夫、白拍子……ところで、白拍子ってなに?


「たぶん、天領の」


 え、それは聞いてない、それは聞いてないよ! 初耳だよ、予想外だよ、忍者すごくない。


 ど、どうしよう。





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