自序
そこは、まっしろな場所でした。
まっしろな空、まっしろな大地、どこまでもまっしろな、でも、はっきりと境目の生まれた世界。
そんな、まっしろな世界にの真ん中にひとり、日記を読みふける人が座っています。
相変わらずまっしろな、まるで、もやのように心もとない姿の人なのです。
しかし、熱心に日記を読み続けるその人には、よく見ると、ページをめくる為の指が生まれていました。今まで、随分と時間をかけて、何日もかけてめくっていた日記帳も、今はすらすらと読み進めることができるのです。
それから何百年が過ぎたものか、ふと、その真っ白な人は気付きました、なぜだか、日記の文字が読みづらいのです。
世界が、暗くなり始めていました、夜が訪れていたのです。闇が生まれていたのです。
ああ、ひかりが欲しい。
真っ白な人は願いました、だって、この暗さでは、日記が読めなくなってしまうから。
そして、真っ白な人の願いは、真っ暗な空に届きました。
夜空に瞬くいくつかの星と、日記を照らす、柔らかな月明かり、世界に光が生まれたのです。
もうじき、夜が明けて、太陽も生まれることでしょう。
でも、真っ白な人は朝まで待てません。
日記には、まだまだ続きがあるのですから。




