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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第1章
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眠れるわけ、ないじゃない

 はい、皆さんこんばんは、佐倉サクラです、てんやわんや。


 いやね、てんやわんやですわ、どったんばったん大騒ぎでございますことよ。まぁ、いつもの事ではあるんですがね、そして主たる原因として挙げられるのは、いつもこの男なのですよ、ちくしょう、人の気も知らないで、気持ち良さそうに寝てやがる。


 ……いや、そんなんじゃないからね? バイオ雀が朝からちゅんちゅんしてる訳じゃないからね? まだ夜中だし、夜ちゅんだよ、ミッドナイトちゅんちゅんですわ……ん、なんだこれ、手か、ハナコか、こいつまだ起きて……いや、寝てんな、無意識か、怖いわ、えっと、とりあえず順を追って説明させてくださいね。


 まず、第一に、今も私のお布団に身体半分ねじ込ませ、すやすやと寝息をたてる美少女なのですがね、こいつときたらもう、呆れたものだったのですよ、おっぱい揉んどこう、これも原因のひとつだし……うわ、やわっこい。




「……サクラさん、大変なのです! この家には、調理機がありませんわ! 」


 ええ、そんなはずないよね? 買ったもん、ちゃんと注文ボタン押したよ、わたし、一式あるよ、ロボ君が昨日受け取りに行ってたし、うふふ、お鍋も包丁もね、結構、いいやつ買ったんだよ、なんだかよくわかんないんだけど、ロボ君が言うには、いざという時に役立つもので揃えたらしいよ、16ミリくらいなら防げるとかどうとか、なんだろね、知らねーよ、物騒だなぁもう。


「……華村、まさかとは思うが、お前、科学調理しか出来ない、なんて言うんじゃあるまいな」


「何を言ってらっしゃいますの、それ以外に……えっ? まさか……原始調理? ですか、これが? 調理器具、なのですか? 」


 ……うん、実はね、知ってた、こうなる事は分かってたんだ、まぁね、今どきフライパンなんか使うのは、伝統文化継承会の人か、懐古回帰主義者くらいのもんでね……あとは、そうさね、私みたいな東京の田舎もんかな! ワハハ。


 いやね、それでもちょっとだけ期待はしたんだよ、ハナコさんは華族だそうだし、かなりの旧家らしいし、そういったスキルもあるのかなーって、まぁいいけどね、ごはん作るの好きだからね。


「言っておくが、ここで調理機は使わないぞ、色々と理由はあるが、まぁ、簡単に言えば、俺がそっちの方が好きだからだ」


「そのように身勝手な! では、私の羊丼はどうなるのですか、まさか、辛島さまが作るとでも? わたくしの口に貴方の手料理などと、どういったおつもりですか! 破廉恥な! よもや、栄誉ある華村家に、中京の血を入れよう、などと画策していらっしゃるのではないでしょうね! 嫌らしい! あと、今晩のごはんはどうなるのですか、明日の羊丼は! わたくしの」


「わたしがやるから」


 ハナコさんはちょっと、かなり、いやしんぼだよね、なんか分かってきたよ、ああ、ロボ君もね、全くもう。仕方ない、チャーハンでも作ったげるから、お風呂入っちゃいなさい、でも、羊丼は知らないよ、そんな怪しげな食べもの、私、知らないよ。


「ちゃーはん、それは、いったい、どのような……いえ、この丸い器具からお米の香りがしますわ、はん、飯……そうか、わかりました、お茶漬けのようなものですわね」


「いいから」


 ハナコを浴室に押し込み、私は手早く料理に取り掛かります、こう見えて、結構なお点前(てまえ)なんだよ、手前味噌だけどね……うん、ロボ君、後ろで見られてるとね、やりにくいからね、どっか行ってくんないかな、なんやこいつ、私のこと信じるって言っただろ、信じろよ、料理もできないくせに、注文だけは多いタイプか、言葉のドメスティックなんちゃらやぞ……まぁ、実際のところは知らないけどね、でも多分、この男は煮るか焼くかの二択だと思う、あ、生もあるな、三択か。




「ちゃーはん! これがチャーハンなのですね、覚えましたわ、たのもしい、力強い味わいです」


「かに玉もいいぞ」


「かにたま、それは、どのような……いえ、そう、蟹の、たまご? それは……」


「いいから、ちゃんとたべて」



 念の為にと、大型の炊飯器を購入はしていたのですが、この二人は、あっという間におひつを空にしてしまいました。こいつらどんだけ食うねん、私の倍は食べてたぞ、途中から白米オンリーになっちゃったよ、トータルで15人分くらいお米炊いたぞ……おい、計算はするな、乙女の秘密やぞ、内緒だからね。



 まぁね、でも、楽しかったよ、女子寮にいた時は、一人で寂しく食べてたもん、自分で作って自分で食べるのってさ、なんか、虚しいんだよね……こんなにね、いっぱい食べてくれてね、美味しそうな顔されるとね、うん、やっぱり嬉しいな、えへへ。


 お片付けは、ハナコさんと二人でしました、料理を教える約束もしたんだよ、楽しみだな、また増えたよ。でも、ロボ君も少しは働こうね、もこたんにご飯あげてきなさい。




 とまぁ、そんな感じなのです。


 仲良く楽しく、初めての共同生活をスタートさせた私達だったのですよ。


 ここまでは、良かったのですが。




「……お布団が、ふたつある」


 マイ部屋に戻った私は、じろり、とハナコを睨みつけるのです、当然だよね、おかしいもん、というかいつのまに準備した、あと、お布団にネグリジェは似合わないと思うよ、明日からはパジャマにしようね。


「えっ? いえ、わたくしは、寝る前にお話ししようかと……ですが、サクラさんが、こうして用意してくださるなんて、うふふ、なんだか、すこし、恥ずかしいですわね」


 あれれー、なんかおかしいなー、反応がおかしいよー、このパターン、どっかで見た記憶があるなぁ、やだなぁ、私の部屋で暴れて欲しくないなぁ。


「なんだ、まだ居たたのか、今日はもう寝るぞ、明日は登校前に防御機構に手を付けたいんだ、遺伝子登録もしたい、五時には起きるからな……華村も早く部屋に帰れよ」


 ぶわっ。


 ああっ、お布団がっ! ちょっとやめて、せっかく敷いたのに、私じゃないけど、せっかく敷いてあるのに、というか破れちゃうでしょ、やめなさい! 私の部屋で力比べすんな!


「……辛島さま、おふざけは大概に、と、前にも言った気がしますわ……婚姻前の男女が同衾(どうきん)などと、許されるはずがないでしょう……」


 ……どうきんってなに?


「別に、手を出すつもりは無いんだ、気にするな、そういうもんだろ……出されたならば、俺のせいじゃないが」


 ん? なに、ひょっとして、えっちなこと?


「それを! その冗談を! 大概になさいと、言っているのです! 」


「相変わらず小さい女だな、胸だけか、無駄にでかいのは」


 あ、これ、えっちなことだ、でも、ふーん、そうなんだ、大っきいとは、認識してたんだね、なにさ、さも興味ありませんって顔してさ、しっかり見てんじゃん……いやらしい。


「分かりました、ならば、実力で排除します、やはり中京の敗残兵、相容れぬ存在だとは理解していたつもりなのですが……わたくしの認識不足でありましたわ、ええ、今度こそ理解しましたとも」


「敗残兵敗残兵と、うるさい奴め……いくさも知らないくせに、実力だと? 自信ばかりは大層だがな、どこで試した、知っているのか、自分の実力とやらを」


 あ、だめ、ちょっとロボ君、挑発し過ぎだって! ハナコさんが本気の目になってるよ、だめだめ! おうちが壊れちゃうから!


「まって、まって、さんにん! 三人で寝るから! それで、いい、でしょ! 」


 何となく、なんとなく嫌な感じはしたのですが、私は二人の間に割り込みました、うう、背に腹はかえられぬよ、お布団の平和は、私が守らなきゃ。


「まぁ、そういうことでしたら」


「華村、早く布団持ってこいよ、明日早いって言ったろ」


 ……くっそ、むかつく! 知ってたけども! 分かってはいたんだけども! けどさ、こいつら止めないと本気でやりそうな気がするんだもん、仕方ないじゃん、うう、おばあちゃん、ごめんなさい、悪い奴等に騙されて、私の貞操は絶対絶命なのです、サンドイッチです、ツナかキュウリか、美味しくいただかれてしまうのです、いや、どうせならハムになりたい、厚切りのやつが好き。


 部屋いっぱいにお布団を並べて、ようやくに私達は落ち着きました。荷物が少なくて良かったね、良くはないけど。


「では、おやすみなさい、サクラさん」


「う、うん、おやすみ、ハナコ、さん……ろ、辛島、くんも」


「ああ、おやすみ」



 しーん。



 あ、ちょっと、これ無理だわ。無理ですわ、なにこれ、近い、寝息が近い、ちょっと手を伸ばしたら、触れちゃうじゃん、触られちゃうじゃんよ、なにこれ、ありえないだろ、なんでこいつら、あっという間に眠れるんだよ、スイッチでも付いてんのか! どこだよ、まさぐったろか。


 うう、どうきん恐るべし。いやだってね、意識するじゃん? ロボ君にだって、胸は見えてるわけじゃん? おっぱい気にしてたじゃん、私が寝たら、まさぐってくる可能性もあるんじゃん? ……無いな、それはないな、色んな意味で無いよなぁ、あ、胸はあるぞ、私にだって、ちょっとくらいな。


 ワハハ。



 ……はぁ、もう寝よ。




 こちこち、と、電磁時計が刻む音に、私の心音が、いつのまにかリンクする。それは、目をつぶっても、耳を塞いでも、私の心を揺すっているのです、まだ、朝じゃないのに、明日も早いのに。



「眠れるわけ、ないじゃない」



 どうしよう。





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