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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第1章
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いただきます

「……そんな事が……分かりました、その二人はわたくしが責任を持って、すり潰しておきますわ」


「おちついて」


 ふっかふかのベッドの上に腰掛けて、私達はパジャマパーチー中なのです。明日は学校をお休みして、みんなで新居に引越し作業、私の荷物は一旦ハナコ邸に運び込み、今は客間の隅っこに、ちんまりと積み上げられていたのでした。


 しかし、私の荷物はね、良いんだけどね、ハナコさんの分が問題なのですよ、新しく購入した家は、庭付き一戸建て3LDKという、中々に良さげな物件でした、代金は三人でお金を出し合ったのですが、正直、私の今までの金銭感覚からすれば、とんでもない額だったのです、まぁ、支度金として用意されていたマイ通帳の残高には、微々たるダメージであったのですがね……うん、あの口座はあんまり見たくないよ、なんか人間が駄目になりそうだから……やっぱり、私には金魚のお財布が似合ってます、おやつは300円までだよ。


 とにかく、住処としては申し分の無い建物なのですが、ハナコさんは何故か、大量の私物を持ち込もうとするのです、いや、貴様の企みには勘付いてるぞ、ひと部屋を物置きにして、わたしルームにイントルードするつもりだろ、そうはいくか、断固拒否の構えやぞ、徹底抗戦だ!


「ですが、気になる事もあるのです、ここ最近、学園内で多発している生徒の行方不明事件……被害者は中等部の者が殆どでした……ウォーレン先輩の言う通り、もしも、シャーリーさんが関わっているとするならば、納得のいくところですわね」


「え、そんな、そんなことは……ない、と、思う」


 いや、私としてもね、シャーリーくんは、変な子だとは感じるんだけれども、何というか、あの子じゃないと思うんだよね『ことが終わったら』なんて言ってたし、そんな騒ぎは起こさない気がするんだよ、それに彼女は、そう簡単にキレたりしなさそう……ロボ君の事以外には。ふん、なんだよ、なんとなく面白くない気がしないこともないぞ、いや、良いんだけどね、今はそれよりも、少しづつ近付いてくるハナコさんの方が気になるよ! さり気ないつもりなんだろうけどね! 息遣いがね、大きくなってるから! 最近はもう隠す気ないだろ、このやろう。


「そ、そうだ、おもい、出した、ハナコさん『うぷいーり』って、何のこと? 辛島、くんが、言ってた、の、あの、例の二人組の、こと」


 ハナコさんの気をそらす為に、私は質問を投げかける、そういえば気になってたんだ、ロボ君に聞いても無反応だし、ちょうどいいや、教えておくれハナコ先生。


「……うぷいーり、ですか? さぁ、わたくしは……あ、いえ、何処かで……」


 小首を傾げたハナコさんは、その細いあごに人差し指をあてがい、目を閉じて考え込むのです、うわ、色っぽい、うぅん、こんな細いのに、あのゴリラちからは、どっから出てるんだろう……しかも、それでいて、ぼいんぼいんだしなぁ、ずるいなぁ……というかネグリジェがスッケスケなんですけど、おぱんつがヒッモヒモなんですけど、なんなの、どこのプレイメイトだよ、もうね、私が男ならもうね、即、押し倒してぼいんぼいんにしてやってるよ。



 ……ロボ君も、ぼいんぼいんの方が、好きなのかなぁ。



「サクラさん」


「うひょい! 」


 な、なんだ、なんだそのジト目は、心を読まれた? こやつ、エスパーか、それとも女の勘か。


「……お願いですから、そういったことは、心の中だけで思っていてくださいまし……あと、わたくしは、サクラさんの幼児体型も、可愛らしいと思いますわよ、美味しそうですし」


 え……えっ!?……ぐわーっ! 出してた? 私、口に出してたの? いやーっ! ハズい! なんたる不覚! ちょっとやめて、銀河の黒歴史がまた1ページだよ! ほんと、やめて、お願いします、ロボ君には黙ってて、でも、ハナコだっていつもダダ漏れやぞ! 分かってんのか!


 きゅっ、と、くびれたハナコさんの腰にしがみつき、私は懇願するのです、ほんと、おなしゃす、あ、でも良い匂い、お風呂上がりだもんね、すんこすんこ……というか、なんか今も最後におかしなこと言ったな、相変わらず怖いぞハナコ、すんこすんこ。


「もぅ、仕方ないですわね……そうそう、先程の『うぷいーり』ですが、これは、じいやから聞いた話なのですけれどね、中京との大戦末期に、その様な改造戦者が戦線に投入された、と兵士達の間で噂になったそうなのです……ですが、これは所謂、都市伝説というもの、なんの証拠も無かったそうですし……辛島さまは中京の騎士ですから、西京の戦者を、そう呼んで蔑んでいるのかしらね」


「そ、そう、なんだ」


 うぅん、でも、あんなゾンビ顔……奉基署の戦者って、みんな、ああ、なのかな? でも、あのヘルメットが素顔を隠す為なら、そうなのかな、そうなのかも。……うげ、嫌なこと思い出しちゃったなぁ、どうしよう、ひとりで寝るの、ちょっと、怖いかも。


「あ、あの、あの、ハナコさん……今日は、その、い、いっしょ、に、寝てもいい? 」


「ええ、構いませんわ、明日はお休みですし、うふふ、今日は夜更かしして、ゆっくり、お話しましょうか」


 ハナコさんの、悪戯っぽくも優しげな笑顔は、相変わらずに、とびきりの美少女っぷりなのです、うう、怖がってるの、バレてるよね? 恥ずかしいなぁ、ハナコはちょっと察しが良すぎるよ、おのれ、少し分けてやってください、あの朴念仁に。




 私達は、お布団の中でおしゃべりしました、今までの事、これからの事、たわいもない世間話から、ちょっと恥ずかしい話しまで。えへへ、なんか楽しいな、おばあちゃん以外と、こんなに話したのって、初めてかも。


 たどたどしい私の語りにも、彼女は根気よく付き合ってくれるのです、やっぱり、ハナコさん、良い人だなぁ……なんで、こんなに良くしてくれるんだろ、私なんか、面倒くさいだけなのにね、ほんと。




 ゆっくりと、しかし確実に、私の目蓋に睡魔が覆いかぶさってくる。うつらうつらとし始めた私を見て、彼女はそっと、こめかみの辺りを撫でてくれるのです、あ、なんかそれ好き。


「サクラさん、そろそろ、お休みしましょうか? 」


 うん、もう、ぜんぜん、怖くないよ……ありがとう、ハナコさん。


「おや……すみ、なさ……はなこ、さ、ん……」


「はい、おやすみなさい、サクラさん……」



 目を閉じると、たちまちに私の意識は、深い深い海の底に沈んでゆくのです、でも、それは心地よい、安らぎに満ちた、温かい海なのです。


 ハナコさんは、私の額に口づけすると、優しげな声音にて、そっと、呟きました。



「いただきます」



 よし、目ぇ覚めた、しばこう。


 





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