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二十九:自爆まであと

 軽快な音がした。風船がはじけるような音だった。

 暦の目と鼻の先に、鋭い刃がつきつけられている。目を閉じる暇もなく、一瞬でここまでロボは近づいていたのだ。それもすべてのロボが。


 しかしロボはそれ以上の活動を続けない。

 璃桜を撃ったことで、繭型から送り込まれるエネルギーが遮断されたのだ。

 水宮にいるロボは、いずれもこの繭型からエネルギーを供給している。要するに、繭型一つを止めれば、無数のロボを無理やり止めることができるというわけだ。


「……な」

 三波は驚愕と衝撃に揺れていた。信頼していた仲間を、少女は撃った。まだ優しさが抜けきらない少女が、仲間を傷つけるわけがないと踏んでいたのに。


 だが暦は撃った。



「よくやった」

 璃桜の声が聞こえた。たまらず暦は、そっと背後の璃桜の方に向く。

 

 璃桜に絡みついていた管は全てぼろぼろに崩れていた。わけもわからず撃ったあの弾丸は、どういう効果を発するものだったんだろう。


 繭型から自由になった璃桜は服装の乱れを正し、「失礼」と一本煙草をくわえた。くわえただけで火をつけない。

 ついでに、これ以上余計な動きをされては困るためか、三波を床に組み敷いた。その手腕たるや無駄のない見事なもので、三波が指一本動かす暇さえ与えなかった。

「……どうして」

 組み敷かれた三波が混乱しながら疑問を零す。

「どうして、撃てたのですか」

「ああ、それですか。

 後ろで、璃桜が撃てって言ったからです。だから撃ちました」

「それだけで? たったそれだけで、仲間を撃てるんですか!」

「ほんとはちょっとためらいました。だけど、璃桜が撃てって言うなら、それは勝算あってのことだと思ったんです。

 何の考えもなしに、璃桜は私にそんなこと頼みませんから」

「では……その銃は一体どんな仕掛けがあるんですか。いくら人口四肢の影響で年を取らないといっても、致命傷を受ければ死ぬ可能性もあったんですよ。それなのにどうして、ルブランは生きている!?」

「拳銃そのものに仕掛けはありません。問題は弾丸だと思います。……えっと、ちょっと待ってください」

 暦はのんきに端末から、弾丸のデータ詳細を開く。


「えーっと……あったあった。


 データ名称は『最後の弾丸』。

 んーっと、製作者は茶苗(さなえ)・ミストランド。

 被弾した対象の生命活動を一時的に停止する――とあります。


 使い方は……拳銃データに本データを貼り付ける。だけですね」

 暦は詳細を確認しながら推測した。


「さっきまでの私は、無数の旧式ロボに囲まれていました。それも、璃桜を傷つけることにつながってしまうから、ろくに反撃ができなくて、攻撃さえできない状態でしたよね。でもロボはそういうことお構いなしに私の方へ来ますから、私も自分を守らなくちゃなりません。


 その解決方法は、ロボを動かす電池を切ることです。その電池は繭型のロボ……もっと詳しく言うなら璃桜だった。

 その璃桜の生命活動を一度だけ止めることで、繭型から貰っていたエネルギーが途切れた。これで戦うロボたちは止まります。

 そして繭型は璃桜の命が消えたと勘違いしたんです。これ以上璃桜からエネルギーを吸い取れないって判断になって、璃桜を縛っていたあの管がぼろっと取れたんじゃないかなと。


 武器は使えない、敵に攻撃ができない、敵はたくさんっていう、私が一方的に不利な状態をひっくり返すための弾丸だったんです、きっと」

 三波の顔から表情が消えて行く。顔色が青ざめているようだった。


「それを」

「はい?」

「それをどこで手に入れた……!」

「ああ、これは水宮さんに来る少し前、電話がかかって来たんです。その電話してきた人が、私へのプレゼントということで送ってくれました。名前はわかりませんでしたけど」

「馬鹿な……その弾丸は、わが社で秘密裏に造られていたはずなのに……!? 製作者も知らない名前の者だなんて、どういうことなんだ!?」

「うーん……この辺りは私にはよく分からないですけど、でももらったものはもらったものですから。


 さて、長話はここまでにして、お仕舞にしましょう、三波社長」


「……ふ、ふふ。甘いですね、まだ甘い。


 わが社に大きな損害を与えた貴女を、生きて帰すわけにはいかないのですよ」

「人質として、父をおびき出すんじゃなかったんですか?」

「だからこそですよ。あの男は近くにいる。


 『最後の弾丸』のデータを貴女に送ったのは、間違いなく霧島要だ!! あの男以外に、そんな芸当できやしない」


 暦は一瞬心臓が跳ね上がったのを覚えた。

 

 少年だと思っていたあの電話の主は、自分の父だった可能性が高いなんて。

 いや、本当は何となくではあるもののそんな気がしていた。ただ、認めるのが癪だっただけだ。


「愛娘の命が今度こそ危ないとわかれば、あの男もここへやってくる。


 その前に、全員道連れで爆死だけどなぁっ!!



 起爆準備!!」



 繭型のロボから、不吉な電子音が聞こえた。

 そこから無機質なアナウンスが流れる。『起爆準備完了。爆発まで残り一分五十九秒――』



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