二十二:増援と退路絶たれた戦場
「まったく、仕方がないなあ」
暦の口端がにっと吊り上がる。何も持たなかった武力ロボの手には、機関銃が握られている。足にはミサイルががちがちと装着された。人間相手には度の過ぎた武装だ。兵器の破壊が目的だったんだろう。
あれの攻撃をやり過ごしながら元を絶つために、一体どれだけ神経を使わなければならないんだろう。報酬を上乗せしたい気分だった。
ロボが異形に操られ、本来の力を無理やり引き出される。
無造作に機関銃を暦めがけてぶっ放してくる。
暦は動作を予測して、発砲される前に横へそれて回避に成功する。
自分を狙う手をのらりくらりやり過ごしながら、地中の本体を目指す。
「もうっ!」
暦は舌打ちし、端末からあらかじめ取り出しておいた小型爆弾をロボめがけて投げ放つ。ロボは機関銃でそれを叩き落とした。それも暦には予想済みだった。爆弾は白煙と弾丸をまき散らすものだ。
白煙と共に、小さな鉄の矢がロボだけを狙って撃ちこまれていく。ロボは一瞬だけ怯んだ。手もロボの態勢を立て直すために数を裂かれる。
自分への追撃が手薄になったところで、暦は地面へ本命の爆弾を放り投げた。
簡素な白い地面にかんかんと跳ねかえる球体爆弾が、異形を巻き込んで容赦なく地面を抉る。
一発の爆弾だけでは、地面にひびを入れるのがやっとのようだった。ならば数を重ねて掘り出してやればいい。
「これなら!?」
暦はもう一度爆弾を放り投げる。強烈な爆音と一緒に、地面の罅が一層広がる。
一気に攻める必要はない。璃桜が戻ってからが本番だ。それまでは何としても生き残る。体力と根性がものを言う。
しかし、そんな作戦を打ち砕いて来たのは、異形でもロボでもなく。
『暦、緊急事態だ』
璃桜本人からだった。
端末から緊急の通信が開かれた。常に冷静な璃桜の珍しい焦燥にかられた声色だ。
「どうしたの」
『まずいことになった。
鳥居の外に、脅威が潜んでいた』
「もっと簡潔に! あともっとおっきい声で! こっちは爆音と銃声でうるさいの!」
暦は苛立ちまぎれに叫ぶ。端末をスーツの上着のポケットに突っ込み、ひたすら爆弾データをダウンロードしては異形に投げつける。
操られたロボの銃撃をかわし続けながら、璃桜の状況報告を待った。
『鳥居の外へ私と飛鷹が逃げ込むのまで計算済みだったのだ。
いいか、おそらくこの通信もあと一分で切れてそれ以上の会話ができない』
「どういうこと。誰がそこにいるの? まさかロボが結界を破ったとでも言いたいの!?」
『違う、私達を取り囲んでいるのは人間だ。
人間といっても、同じ業界の人間達だ。奴らは戦闘能力も高いし武器データも充分にため込んでいる。私一人でどうにかなる相手ではない。数も多いし足を潰された』
あの愛車は要からのプレゼントだというのに、というぼやきが聞こえた。
「今回の依頼、人間によって仕組まれたってこと?」
『そういうことになる。いいか、今回の依頼は遂行不可として仲介者へ報告しろ。敵から逃げろ。端末にステルスデータが入っているから、それを発動してから鳥居の外へ出るんだ。
飛鷹の身柄は何としても私が守る。きみはきみの身を守れ』
「待って! 首謀者は! 誰が仕組んだことなの!?」
『首謀者は、』
端末の通信が、ぶっつり切れた。




