デジャヴ
ここから少し卑劣で過激な表現が増えて来ますので
苦手な方は観閲をご遠慮して下さい。
目が覚めると、太陽が高くに登っていた。
携帯電話の時計を見る。
昼休みに入ったぐらいの時間だ。
お弁当は持ってきていないし、この学校には食堂は無い。
なので俺は購買部に向かう。
立ち上がり、屋上のドアを開く。
開かない。
鍵をかけたのだった。
鍵を解き、ドアを開く。
開かない。
開くとは呼べないぐらいしか開かない。
内側から何かで押さえつけられているみたいだ。
ドアを強く蹴飛ばす。
開かない。
屋上から出られなくなった。
「飛び降りろって事か」
そんな言葉が口から漏れた。
けたたましいサイレンが鳴る。
校内からだ。
何のサイレンだか分からない。
焦げ臭い。
校舎の下の方から煙が上がっている。
火事だ。
屋上からグラウンドを覗くと、生徒達が集まって行く。
俺は逃げる気はない。
本来ならば俺は死んでいるから。
どちらにしろ逃げられないが。
開かない扉を見る。
すると扉の向こうで音がする。
耳を凝らして聞いてみると、荷物か何かをどけている音だ。
しばらくすると扉が勢い良く開き、全身が濡れた生徒が飛び込んできた。
俺は目を疑った。
それは授業中に俺に罪をなすりつけた、消しゴムを投げた方だ。
それはこちらを見るなり、真っ青な表情でこう言った。
「助けてくれ」と。
どういう事だ。
「それは無いよ」
開いた扉の向こうから声がした。
生徒は扉を閉めようとするが、すぐにそれを止めて屋上の端まで走る。
「あんたがゆっくりしてるから追い付いちゃったな」
扉から現れる人物。
彼だ。
片手には金属製のタンクを持っている。
「彼を屋上に閉じ込めるつもりでやった事が、自分を追い詰める事になるとはな」
彼は楽しそうに言う。
そうか扉の向こう側に荷物を置いたのはあの生徒か。
「俺に何か恨みがあるのか?」
生徒が息を切らして彼に言う。
「自分は無いよ。そこの人は有るだろうけど」
「お前がコイツに何か頼んだのか」
二人がこちらを見る。
答えは頼んでいない。
だが答える意味が俺には無い。
「いやただ単に自分の趣味だよ」
「人を殺すのが趣味なのかよ」
「違うよ。いたぶる事だよ」
彼は笑顔で言う。
「お前おかしいよ」
「そうだよ」
生徒の顔は真っ青だ。
「そんな悠長に話していていいのか」
彼は笑いをこらえている。
「かけたガソリンが滴って導火線みたいになっているぞ」
焦げ臭いので気付かなかったが、確かにガソリン臭い。
あの生徒が濡れているのはガソリンをかけられたから。
そして状況と言動から、かけたのは彼だ。
「服を全部脱げば多少は違うんじゃないの?」
彼が生徒に言う。
どこかで見た光景だ。
いや体験した光景だ。
躊躇無く、上着を脱ぐ生徒。
「下着は脱がないの?」
彼はライターを掲げて笑っている。
もう片腕に持っていたようだ。
「やめてくれ」
「自分はやめないよ。まあそこの人が止めに入ればなんとかなるかもしれないけど。止めてメリット無いじゃん」
生徒は何も言わないがこちらに助けを求めているのが簡単に分かる。
「むしろ嫌な奴が消えてくれるから止めないだろうね」
彼は生徒に近づいて行く。
俺は――。