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報復屋  作者: 稲草 狐依
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報復予告

 俺はそいつを無視して携帯を開く。

「この学校って修学旅行とかどこ行くの?」

 無視。

「面白い先生とか面倒そうな先生とかいるの?」

 彼は俺が無視している事を気にせず聞いてくる。

「そんな奴と話してないで俺等と話しようぜ」

 生徒が言う。

 彼はこちらを一瞥すると、その生徒の元に行き話を始めた。

 俺は携帯の画面を眺める。

 数分後に彼を見ると、仲良く話をしている。

 生徒と目が合った。

「何見ているんだよ」

 その一言で俺は目を携帯の画面に戻す。

「その言い方酷くない?」

 彼の声だ。

「別にいいんだよ。アレはな」

「……まあ、そう言うなら」

 彼も同じか。

 チャイムが鳴った。

 殆どの生徒は席に戻る。

 教師が教室に入って来た。

「欠席にされたくなければ席に戻れ」

 その一言で席に座っていない全員が戻る。

 その間に携帯をしまい、生乾きの教科書と新品のノートを出す。

 教科書乾かすの忘れてた。

 元々、来るつもり無かったからな。

 授業が始まる。

 教師が生徒達に背を向ける。

 すると隣の生徒が消しゴムを教師に投げた。

 昨日、俺が使っていた消しゴムだ。

 消しゴムは教師に当たり、こちらを向き一言。

「誰だ。投げたのは」

 誰も答えない。

「友人庇うのは良くないぞ」

 教師は言う。

「投げたのは誰だ」

 怒鳴る。

 すると生徒が指を刺す。

 投げた生徒とその後ろの生徒が俺を。

「またお前か。いい度胸だな。教科書も開かないし、教師を馬鹿にするとはな」

 確かに俺は教科書を開いていない。

 接着剤でくっ付いているせいで、開かないからだ。

「すみません先生……お腹が痛いのでトイレ行って来てもいいですか?」

 遠慮がちな声で誰かが言った。

 声の方を見ると彼が手を小さく上げている。

「行ってきていいぞ」

「ありがとうございます」

 彼はゆっくり立ち上がり、お腹を押さえながら教室を出て行く。

 だがすぐに戻って来た。

「どうした」

「……トイレの場所が分からないです」

 数秒の沈黙。

「その位確認しておけ。お前、授業やる気無いだろうから案内してやれ」

 俺の事みたいだ。

 この場を逃げるように、教室を出て行く。

 俺は彼の前をトイレに向かって歩く。

 ふと振り向くと真っ青な顔でお腹を押さえて歩く彼がいる。

 数十メートル歩いた所でトイレの前についた。

 確かに転校生には分かりずらい場所にある。

 トイレに案内する義理も無かったが、案内をしっかりしてやった。

 彼は「ありがとう」と言うと、中に早歩きで入って行った。

 ついでなので俺も用を足そう。

 俺も中に入る。

 すると彼が何をするでも無く、立っていた。

「腹が痛いんじゃなかったのかよ」

 彼は少し考えた後、こう答えた。

「片腹痛い」

 誰が上手いこと言えと。

「サボる口実か」

「あんたをここに連れて来る口実だよ」

「案内するのが俺と決まった訳じゃないだろ」

「実は名指しで呼んだよ。勉強の邪魔になるだけだから、そいつでいいんじゃないか。って」

「トイレの中に入らないかもしれないだろ」

「紙が無い。とか行って呼ぶつもり」

「ちゃんと案内…」

「その時のも考えてある」

 話を切られた。

「なら、なんで俺をここに呼んだ」

「今から報復をする。それを教える為だ」

「頼んだつもりは無い」

「単なる自分の趣味だ」

「なら勝手にやっていろ」

 俺はそう言うとトイレから出て行く。

 教室に戻る気にもなれない。

 だから屋上に行く。

 太陽が眩しい。

 屋上にはパイプ椅子があるだけ。

 誰もいない。

 俺はそれを蹴飛ばす。

「なにが報復だ」

 俺は入ってきた扉レバーを回して鍵を閉め、扉を背にして床に座る。

 授業を受ける気になれない。

 財布と携帯は持って来ているし、鞄がなくなってもそれ程害は無いな。

 昨日、よく眠れなかったせいか眠い。

 暖かいし、寝るか。

 俺は目を閉じた。

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