第一話
第一話
「さあ、行こうか、ニール、メア」
白いドレイクホースのニールの背に乗り、法衣フードを被り大きめのバックを背負いその中に入る黒の猫のメア。
「取り敢えずブロワの町で挨拶していかないと」
ツヴァイヘンダーの法丈を持ち、ニールの鞍に跨り進み出す。
《ゆっくり行きますか?、それとも走りますか?》
「ゆっくりで良いかな、早く走るとニールから落ちちゃうし」
ニールもメアも神獣に近しい存在。
互いに認め合うと念話が出来るよになる。
「それにメアが起きちゃうしね」
《うう、分かりました、まあ夜の番をしてくれてるので、寝かせてあげます》
「また、監獄に連れてて上げるのでゆっくりでお願い」
《監獄!監獄!絶対ですよ?連れてくださいね!》
「うん、また息抜きに行こうね」
ブロワの町まで普通の馬で3時間程度掛かる、その道をゆっくり移動する。
新緑の森を抜け青々あると背伸びをする小麦畑を横目に道を進む。
途中、霊峰トムサクから流れる小川の辺りで休憩し、再びゆっくりと進み出す1人と二匹。
小麦畑の中に現れたしっかりとした擁壁の町が見えてくる。
「ロイ!今日は癒しの日だったか?」
町の門兵に声を掛けられる。
「ちょっと用事があってサラノ様に会いに行きたんだよ」
「そうか、ニールも久しぶりだな、元気そうで何よりだ」
「ありがとう、って言ってるよ」
「そうか、気をつけてな」
門兵に見送られ町に入ると町の人達がロイに会いに来る。
「ロイ、この前はありがとね、お陰孫の熱は下がったよ」
「ロイ、ウチの女房に三人目が出来たみたいなんだ祝福をしてくれよ」
「みんなごめんよ、サラノ様に会いに来たんだ、行かせてもらえないかな?」
ロイが大きな声でお願いすると人々が道を開ける。
「リランドさん!後で寄るから奥さんと家に居てね」
「ありがとう」
ロイ一行は領主館に到着し下馬して門をくぐる。
本館横に少し大きめの馬小屋があり、そこにニールが入りくつろぎ始めた。
《ちゃんと藁が変わってますね、良い心がけです》
「この前来た時は新人が普通の馬だと思って掃除したらしいよ、もう許してあげて」
《貴方に免じて許します》
領事館に入り主人の居る事務室に通される。
「珍しいな、癒しの日で無いのに来るなんて」
初老にしてはまだ現役でいける様な体躯の持ち主がそこには立っている。
ロイの顔を見て何かを感じる。
「とうとう逝ったか」
「はい、朝方息を引き取りました」
「あいつとは生まれた時からの付き合いがあるが、行くにはまだまだ早いだろうに」
「どうもかなり体を酷使してきたみたいで、本人も分かっていたみたいです」
一通の書簡を渡す。
受け取り中身を確認するサラノ。
「ふむ、そうか」
「これから聖峰都市フィニステールに向かいます」
「わかった、これからみなを集めて説明する、聖峰教会本部に招集された程をとるので、話を合わせてくれ」
「分かりました、その様にします」
「あと、本部に着くまで奴の事は極秘となるから他言無用だ」
こうして町の住人達が集められサラノから聖峰教会本部へ旅立つ事が言い渡された。
住人の人々はロイ一行と別れを惜しむかの様にそれぞれ言葉を伝える。
「リランドさん!、何処に居るの?」
人々を掻き分けロイに近づくリランド夫妻。
「多分、出産までには戻って来れそうに無いけど、元気で過ごしてね」
「おう、ロイも道中気を付けな」
「じゃあ、儀式を・・・」
《あるじ、ちょっと待って》
それまで寝ていたメアが声を掛けてきた。
「あ、ごめん、ちょっと待って」
《シロ、儀式するから来な》
《シロって言うなクロ》
ニールがロイの元に来る。
「皆んなごめんちょっと大掛かりな儀式になるから離れて見てて、リランド夫妻はこっちに」
町の中央に位置する広場に誘導して中央に夫妻に祈りをして待つ様に指示をする。
「さあ、今から儀式を始めるよ」
ロイの掛け声と共にニールとメアが夫妻を中央に三角形になる様に配置に着く。
我、神からの力を借りて人に癒しを与えん、我、太陽の代行者にて人に生力を与えん、我、月の代行者にて人に安楽を与えん、我らの祝福を夫婦に宿し生命に与えん
夫妻を中心に方陣が展開され光の中に包まれる夫妻、やがて光が収縮し夫妻の中に収まっていく。
「終わったよ、ニール、メアありがとう」
「ニール様、メア様私たち夫婦の為にありがとうございます」
「メアは奥さんがくれたハンバーグがとても気に入ってたそうです、いつかまた来た時は食べさせてくれと言ってます」
「ありがとうございます、いつでも良いので来て下さい、レシピは生まれてくる子にも教えますので」
泣きながら感謝する夫妻。
「生まれてから暫くの間は祝福が続くから安心して生活して下さい」
「ありがとうございます」
夫妻の手を取り声を掛ける。
サラノがロイに所管と紋章の入ったブレスレッドを渡す。
「書簡は要塞都市エルベムの領主に渡せ、良くしてくるはずだ、門番にブレスレットを見せれば簡単に入れる」
「ありがとうございます、では行ってきます、また来ます」
皆に感謝と声援をされながらブロワの町を出る一行。
「このままだと野宿になりそうだから、ニールにちょっと走って貰おうかな」
《良いのですか?》
「うん、メア起きてるし、走りたいでしょ?」
《おい、シロ、余り揺らすなよ》
《慣れなさいクロ》
「さ、長い道のりだけど仲良く行こう」
《では、行きますよ》
ニールの周囲が静寂に包まれ、空気が澄んでいく。
ロイは鞍に体を押さえつける様に身構え手綱を掴む。
瞬間、ニールが走り出す。
景色が消える様に流れるが音はしない。
《もうちょっと揺らさないで走れシロ》
《振り落としますよクロ》
「この早さの中でも仲が良いね二人とも」
《《仲良く無い》です》
「あはは」
暫く走っただろう、小さく見え始めた要塞。
ニールが足を緩め、一行に景色が戻ってくる。
「あれが要塞都市エルベムか」
《シロのおかげですっかり目が覚めたじゃ無いか》
《もう歩くにでゆっくり寝てて良いですよ?》
《だから寝れるなら寝てるよ!》
「まあまあ、メア、今日晩ご飯はジャイアントベアーだから我慢して」
横の森から突如出てくるジャイアントベアー。
ニールから飛び降り持っていた法丈を逆さに持ち構える。
ジャイアントベアーがこちらを認識して身構えるより速く後ろ脚に法丈で一撃を与える。
脚を払われ、滑り転ぶジャイアントベアー。
「メア、お願い!」
《了解》
メアの目が紅く黒く怪しく光り、ジャイアントベアーがその場に立ちす尽くす。
「上手くいったね」
法丈を持ち直し、服の埃を払うロイ。
《ねえ、良い?良い?、食べて良い?》
「良いよ、食べて」
《やったー!、たまには早起きもするもんだね》
メアが立ち尽くしているジャイアントベアーの前で座るとジャイアントベアーの目を凝視する、ドス黒い光に包まれやがてジャイアントベアーを小さく凝縮していく。
愛らしく小さな口を大きく開け凝縮されたジャイアントベアーだった小さな塊を飲み込む。
ゴクリッ
《まあまあかな、負に満ち溢れた人の魂よりは美味しく無いけど、野生の魔獣にしてはそこそこだね》
「この辺りにマナの溜まりが出来たかもしれないね」
ニールが周辺を観察する為にマナを放出すると反応が出る。
《森から200メル程に人らしき反応がありますね、一人で動けないようです》
ロイも確認でマナを広げる。
「そうだね、ニールは認識阻害の陣に居てね、僕とメアで行ってくる」
メアがロイのバックに入り、反応がある場所へ向かう。
「何とか間に合ったみたいだね」
森の中で少女が倒れている。
腹部は裂け出血が酷く、意識は無い。
「メアの存在に気がついて、僕達を襲ってきたんだね」
野生の魔獣や獣がこの状態の生き物を放置してまで離れた所に襲いに来たのは食べている間に自分がやられ無い為の本能だった。
「メア、回復掛けるので離れて」
バックの中で毛繕いしていたメアが離れ座る。
法丈を立てると少女の周りに魔術陣が現れる。
「回復陣展開」
光が少女を包み込む。




