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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

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迎え 2


 移転の神術で飛び出した所は背の高い針葉樹の森だった。

お城からこんな森が見えたことはないので随分と遠くに移転したのだなとわかる。


まだ夕方のはずなのに、生い茂った木であたりは暗い。


「ゆいっっ!!!!」


私達を追って移転して来た恭が私を認めて大声を出した。


「恭、ありがとう。私のせいで、ごめんなさい」


「っ違う!!これは我が里の失態!俺の責任だ!」


腕を取られ、そのあまりの力に驚く。


「ゆい、女達が失礼をした。全員捕らえ済みだ。あの様なことはもう二度と起こらない」


取られた手首がギリギリと痛い。

涼風(すずかぜ)が六尺棒を出したその時、低い声がした。



———「返してもらう」


「月宗、様…………」


 数メートル先、バサバサっと音がして月宗様とその後ろに四つ守さん達が降り立つ。


——迎えに来てくれた。

——会いに来てくれた。


「カラスごときが。我が狛犬族の領土に入ることまかりならん」


 恭が怒った声を出し、また腕を掴む力が増す。

私達と月宗様の間に透明な膜の様な物が現れていく。


涼風(すずかぜ)様!領土結界が戻っております!!もう一度鐘を!!」


類君が叫ぶ。

涼風(すずかぜ)のあの鐘は、領土の中に入る為のものだったのか。


————「必要ない」


月宗様はその場で刀を抜いた。

目に光がなくて感情が読めない。


ヒュンっと風を切る音がしたと思ったらカチャンと刀を鞘にしまう音が被さる。

途端ガラガラと目の前の透明な壁が壊れていく。


「悪ぃ。素振りしたら、当たっちまった」


何ごともなかったかのような呑気な口調で月宗様が話し、恭の額に青筋が浮く。


阿呆鳥(あほうどり)がっ!!!!!」


「謝ってんのに……結衣、来い!」


涼風(すずかぜ)が何か術を使い、恭の腕を弾いた。


 震える足を叱咤して月宗様の胸に飛び込むと、恭がまた私の手を取る。

壊れた透明な壁の境界の外に出たけれど、取られた左手だけはまだ中にある。


「触るな。駄犬が。」


「黙れ。ゆい、国益を損害した女達は斬首にしよう。俺はゆいを大切にしたはず」


「そんな事!!望んでない!!私のせいで彼女達が殺されるなんておかしい!」


 その時類くんが私の腕の中からくるりと出て来て人化(じんか)し、刀の(さや)で恭の腕を殴打した。

思いっきりやった様で一瞬拘束がゆるみ、月宗様の腕の中に抱かれる。


「類、やるじゃねぇか。馬鹿犬、花嫁は返してもらう」


「は!どうせまたすぐに俺が必要になる。お前ではゆいを幸せにできない」


「結衣の願いは全て叶う。俺が、惚れた女の願いを叶えるように生きるからな。諦めろ、鐘は鳴った。天が許さん」


 グルルっと低く唸る様な音がして、恭がくるっと踵を返した。そのままあたり一帯の木を剣で薙ぎ払って、消えた。


「こっわ!!!!あいつあんなんでしたっけ!?」


「怒りを抑えるの苦手ちゃんかな~?戦闘向きじゃないねぇ」

小四郎君が叫び、涼さんが答える。


「あの人、僕が一番戦いやすいタイプやわ。

ちょっと煽ったら、すぐ乗らはるし。素直なお人やわ」


「月宗様、紫波(しなみ)殿を邸にお呼び立て致しましょう」


「ああ。先に帰ってろ」


私の手首のあざを見て光久さんと月宗様が話す。


涼風(すずかぜ)、行きますよ」


「あーー…………まぁこいつはいい。結衣が怪我をしたんだ、今は絶対離れんだろ」


と言っても当の涼風(すずかぜ)は月宗様の顔にビタッと引っ付いていて、私から離れないって感じではない。

虫みたいに引っ付いてる。


類君を連れた四つ守さん達がヒュンッと消えて、私達だけ。

顔に引っ付いた涼風(すずかぜ)をそのままに、月宗様は私を抱き上げた。




◇◆◇



 

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