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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

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盟鎖の盃


 おじさまとハクさん、ヨダカ君が黙礼をして入室し、ヨダカ君を見た涼風(すずかぜ)が飛びついていく。


 先頭におじさま、少し後ろ脇にハクさんとヨダカ君が座り平伏していくのだけれど、膝に涼風(すずかぜ)がふんす!と居座るヨダカくんだけ平伏できずに大混乱しちゃってる。


 私も膝の上は恥ずかしすぎるので、しれっと横に降りて大混乱中のヨダカ君に目で大丈夫だよと合図する。

 どうせ月宗様気にしてないし。


 月宗様はずっとおじさまばかり見てる。

 え?これ何の時間?


 光久さんと雲雀(ひばり)君が入って来て、後ろの角に一人ずつ座り、じいやが瓦礫と化したにじり口に外を向いて立つ。


「結衣ではなく、俺なのは何故だ」


「蛇一族がバックについたとあらば姫様を狙う者が無駄に増えましょう。他の眷属神も同じ。それでは姫様のおん為にならない」


「まだ婚姻が成されたわけではない」


「どう転ぼうとも、姫様を大切に思う方のもとなれば」


「条件は」


「ありませぬ。元より死を覚悟した身、我が名と嫡男の名を献上する。八咫烏(やたがらす)の臣下となりて医術薬術の一切を捧げる」


 宗主どうしがなんだか難しい話をしている。

 腹の探り合いと言うよりはおじさまが晴れ晴れとしているのを月宗様の方が(いぶか)しんでる感じ。


 無言の時間が過ぎていく。

 これなんの苦行?


「蛇一族に二心はありませぬ。お許しを賜り盟鎖(めいさ)の儀、(わたくし)と嫡男の名をもって結ばせて頂く」


 おじ様が筆を取り口に横に咥え、柏手を打った。


 パンッと小気味よく茶室に響く。

 白い炎のようなゆらめきがおじ様の全身を包み、頬から首にかけてと腕に白い(うろこ)が現れている。さっきまでは無かったのに。


 綺麗な所作で筆を取ると、巻物型の半紙がおじさまの前の空間に浮き、止まる。


「蛇一族宗主紫波(しなみ)八雲、並びに嫡男ハクの名において、蛇一族は今この時をもって八咫烏の臣下に下る事を盟約申し上げる」


 (すずり)も墨も使っていない。

 使っていないのに、おじ様の持つ筆は薄青く光る文字を綴ってゆく。


 ちょっと達筆すぎて読めないけれど、さっきおじ様が言った事が書かれているんだと思う。


 筆を置いたおじ様は、月宗様の前に半紙を広げ、その上に白い盃をおく。

 結婚式の三々九度で使われるような何でもない白い盃。


 トンと置かれた盃に、綴られた文字の光が集まっていく。盃に美しい青い模様が浮かび上がり、あ、これ神代(かみよ)文字だなと何となく分かった。


「お含み下さい」


 おじ様とハクさんがまた平伏する。


 盃は空だったはずなのにいつの間にかお酒で満たされていて、月宗様は静かに飲み干す。

 盃を持つ筋張った長い指が綺麗だなとぼんやり思う。


 ——————「臣下として迎える」




 ◇◆◇




 何だろう。

 何で二人とも私を見るの…………?

え?謎の儀式まだなんかあって私がそれをする番とか??それなら式次第を用意してほしい……。



「結衣、望みはあるか」


「望みって…………?」


「何を言ったかは知らんが狙ってやったわけじゃないんだろ」


 なんか臣下にとか言ってたし、おじ様達はもう大丈夫って事かな?


「おじ様達は、もう殺さない?」


「逆に俺が守る側に変わった」


「えと、乳母さんは?」


「俺は手を出さない。紫波(しなみ)に任せる」


 おじ様も息子二人も驚いた顔で月宗様を見る。


「よろしいのですか…………?」


「構わない」


「わぁ!おじ様!よく分かんないけどこれで全員助かったね!!」


「お二人のご慈悲に感謝を」


「過度にへりくだる必要はない。物言わぬ臣下は不要だ」


「…………え、いいの……?」


「父上っ!!」


あ、なんかこれデジャヴ。


「ふふ、あははは!」


 膝の上でウトウトとする涼風(すずかぜ)に気を遣って静かに涙を流すヨダカ君に駆け寄り、小さな私の天衛(てんえい)君を抱き上げるとそのままおでこを畳に擦り付けて平伏する。


「姫様…………!もう、申し訳……!!あり、ありがとうございます」


「不安だったよね?良くがんばったね。おじ様?乳母さんにはこれ以上罰をあたえないでね?」


「あーーっと、まぁそういう訳にもいかんくて……妖力没収の上、メイドの身分からやり直しってとこかな」


「父上っっ……あ、あ、ありがとう、ございます…………!」


 軽い罰なのかどうか判別がつかないけど、ヨダカ君の涙は感謝の涙っぽいから大丈夫なんだろう。


「おじ様?なんか臣下にとか言ってましたけど、私大変な事やらかしました?」


「いや?元々中立を保てなくなって来ていたんだ。俺達蛇は疑り深いからな。どこかに付くぐらいなら衰退を選ぶ。遅かれ早かれ一族は消える運命だった。それでもいいと思っていた。今回の事は、蛇一族にとっても暁光なんだよ。姫ちゃんのめっちゃ怖い旦那が守ってくれるからな」


「まだ旦那じゃない!彼氏!!」


「……………………」


「ご宗主殿、下の息子は既に毒と薬については叩き込んである。好きに使ってくれて構わない」


「分かった。薬と薬師は優先してこちらに流すが、蛇の里は引き続きお前が宗主としてみろ。剣士は派遣してやる」


「有難い。こちらに不利益が無さすぎるが……良いのですか」


「構わない。他族への薬も今まで通りの値段で良い。上前はねるつもりもねぇよ」


「は?いやいやいや、上前は跳ねようよ!逆に怖い!!」


 おじ様どんどん素がでるな。

最初頑張れてたのに。


ハクさんため息ついちゃってるし、ヨダカ君はまたオロオロしてるし。


「えーっとじゃあ、姫ちゃんは何か欲しいものない!?おいちゃんエグい商売してるからお金持ちなんだよね!!何でも買ってあげる!!」


「は?殺すぞ紫波(しなみ)


「何でここで急にキレんの!?情緒不安定なの!?」



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