小さな彼氏
「暇だなぁ…………」
お城のお姫様が住んでいるみたいなお部屋。
とーっても可愛いけどあちこちさわって桜子に怒られても困る。
お部屋のテーブルにも沢山のプレゼントが置いてあるけれど、これも全て桜子の物。同じ物が二つずつあるから明らかに二人分だけれど、桜子が半分こなんてするはずがない。
「お散歩に出よう、探検しよう!」
桜子との二人部屋をすぐに抜け出して、庭に出る。
楽しそうな話し声が聞こえる方とは逆の方向に歩き、作り込まれた庭を抜けていくと手入れのされていないエリアに出た。
やっと人の声もしなくなり安心する。
一人になって、誰もいないと安心したら急に寂しくなってきてしまった。
「ママのところに帰りたい……ママ…………」
大きな木の下でぐずぐずと泣いているとコツンと上から何かが落ちてきて頭に当たった。
「どんぐり!!」
ポトン、ポトン、コツンと私の周りに落ちたり、頭に当たったりする。
「どんぐり雨!!!」
「ぷは!!!」
夢中でピカピカのどんぐりを拾い、声のした方を見ると高い木の上に男の子が座っている。
「拾ってから見るのかよ」
楽しそうに笑う顔が優しくて、どこか耀と名乗ったカラスのお兄さんに似ていた。
「涙は引っ込んだか?もっと欲しけりゃ落としてやるよ」
「ピカピカのやつがいい!!」
「ん、まかせろ」
男の子は木の幹に手を当てて、何か力を込めたようだった。
とたんにバラバラバラ!と大量のドングリが落ちてくる
「ピカピカのばっかりだ!お兄ちゃんすごい!」
「木に頼んだ。この木もお前を元気付けたかったんだろ」
「きーきさん、ありがとう!!!」
木の幹に抱きついてからドングリを両手いっぱいに拾う。
「いっぱいあるのに、もう持てない……明日また拾いに来てもいい?きーきさん!」
サラサラと風に葉っぱが擦れる音がして、木が返事をしてくれたみたいで嬉しくなる。
「明日は袋をもってくるね!ママの作ってくれたやつがあるから!!」
「良かったな、さあもう会場に帰れ。皆探しているだろ。俺はスペアだから会場には入れない。近くまでは、送ってやるから」
ストンと私の横に着地したお兄ちゃんはそう言って会場の方を見やる。
「お兄ちゃんもスペアなの?私もだよ?お揃いだね!」
「は?」
「わたしはね、桜子みたいに祓いの力があるわけじゃないし、桜子に何かあった時のためのスペアなんだって!」
「そんなわけないだろ!」
「お兄ちゃん?」
「そんなわけない。お前からは濃い甘い匂いがする。桜子とは、お前の姉か?今回は姉妹が選ばれたと聞いている」
「ううん、桜子は妹だよ。桜子はすごいの。邪気の祓の力が強くて、みんな桜子に群がってたよ。わたしは何にもできないし、スペアで選ばれただけだもん」
「チッ、そんなやつら気にするな」
「時間まで一緒に遊んでくれる?邪魔をしたら桜子に怒られちゃう…………」
「————っ……」
男の子は絶句しながらも私と遊んでくれた。
木の蔓に手を当てて、蔓かごを作って一緒にドングリを拾ってくれて、喉が渇いた私にキイチゴの実のジュースを竹筒に作ってくれた。
どれもこれも木や竹に手を当てるだけで手品みたいに出来上がって、私は手を叩いて喜んだ。
「お兄ちゃんすごい!魔法使いね!?」
「…………木に頼むだけだよ、誰でもできる」
「誰でもはできないよ?お兄ちゃんはすごいよ!」
キョトンとした私に苦笑して「もう遅いから、送っていく」と言う。
「お兄ちゃんも一緒にいこう?もっと遊んでほしい」
「会場に、遊んでくれるやつが沢山いるだろ。あいつらはその為に来てるんだぞ」
「あのキラキラしたお兄さん達?桜子の《《カレシ》》なんだって。カレシって何?お友達?」
「あ~………………そうだな」
「じゃあお兄ちゃんは結衣のカレシ?」
「は?」
「違うの?」
しゅんとした私に男の子は慌てて頭を撫でる。
その手が柔らかくて暖かくて気持ちがいい。
「あ——まぁ……そぅ、だな」
「じゃあまた明日も遊んでくれる?」
「ん」




