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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第三章 龍族編

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百鬼議 3

 

「わぁ…………すごい……」


 灰色煉瓦の壁に白い石柱、アーチ状の回廊。

天井は信じられないほど高く、丸いドームに金の装飾が走っている。

ステンドグラスから月光が落ちて、床の大理石に淡い色が揺れる。


 百鬼議(ひゃっきぎ)の会場は既に沢山の人達がいたけれど、月宗様が入場すると潮が引くような静けさが訪れた。


 何の反応も興味も見せずに私をエスコートする彼は気配だけで周りを圧倒していく。


あまりの研ぎ澄まされた気配にたたらを踏む人達までいる。


『これは眷属(けんぞく)神の勢力図が崩れるな』


『噂には聞いていたがこれ程とは……此度の花嫁のお力は歴代一ということか。大穴を当てられたな』


『最下位の眷属(けんぞく)神と侮って、今まで関係を築いて来なかった種族が慌てておるな。蛇一族は上手くやったものよ。先読みの力でもあったのか』


 周りの噂話にも全く動じず飄々としている。

私は身の置き所がなく涼風(すずかぜ)を抱き上げて安心をもらう。


『本当に第一天衛(てんえい)を連れている。上位の天衛(てんえい)など初めてお目にかかる』


『第一天衛(てんえい)に守られておるのか…………天のご寵愛の深さよ』


そうだった。涼風(すずかぜ)も目立つんだった…………これはいかん。


きょとんとした涼風(すずかぜ)を獅子丸の上に戻す。


「お(ひい)さん、結局何しても目立ってしまわはるんやし、もう開き直って、好きにしとき」


私のメイン護衛らしい雲雀(ひばり)君に頷いてみせる。


「ジャリ坊、単独で動くなよ?今日は常に僕とお(ひい)さんの位置を見て動きぃ」


獅子丸に乗った涼風(すずかぜ)がはーいと元気に手を挙げる。


「月宗様、お時間です」

光久さんが言い、月宗様を奥に続く大きな扉へと促す。


「ああ。結衣、行ってくる。すぐ戻るから涼風(すずかぜ)と待ってろ。必ず雲雀(ひばり)を側に置け」


「うん。行ってらっしゃい」


 去って行く彼の背中を未練がましく見つめてしまう。


宗主のみの会談が行われ、その間は伴侶や子供はここで社交をするのが決まりらしい。


護衛を付けられるのは宗主家族のみらしく、類君は控え室。

月宗様には光久さん、私には雲雀(ひばり)君が付いてくれた。


 少し離れた所で笹音(ささね)さんが私に笑いかけてから一礼し、扉をくぐって行く。


狛犬のご宗主様も私に簡単な挨拶をしてから入って行った。


「姫ちゃん~!冬乃さんがいれば大丈夫だからね!おいちゃん自慢するために婚約者のころから連れてきてるから冬乃さんが全部把握してるよ!」


「ご宗主様より直々に姫様をよろしくと頼まれましたの。言われずともお守り致しますのに…………ハクもおります故、ご安心下さい」


入り口近くで他種族の御令息と話すハクさんを目線で示し、冬乃さんが言う。


「はい、心強いです。ありがとうございます」


 伴侶と婚約者、その子供の社交の場。

私は人間だけれど、八咫烏(やたがらす)一族の代表としてここにいる事の重圧に負けそう。

月宗様はなぜ飄々としていられるのか分からない。


「冬乃さん!?貴方は自分が綺麗な事を忘れないでね!?男が来たら殺していいからね!僕が全部責任とるから!!!」


後ろ髪引かれまくって振り返り振り返りしながら八雲おじ様も扉をくぐって行った。


「ふふ、おじ様、冬乃さんにベタ惚れですね」


八咫烏(やたがらす)のご宗主様には及びませんわ?お気付きではないかもしれませんが、全て姫様の為の配置なのです。雲雀(ひばり)殿が貴方様に付くのも、控えの間の位置取りも。」


きょとんとした私に冬乃さんがおっとりと笑う。


「守りの利く一番いいお部屋を用意されておりますし、元より個人プレーな涼風(すずかぜ)様に合わせて動く事が出来るのは雲雀(ひばり)殿が最適でしょうねぇ。女同士の社交は、(わたくし)が側にいれば手出し出来るものはおりませんもの。全方位から守る気満々という感じでしょうか」


 そうなのだろうか。そうだったら嬉しいな。

彼といるといつもふわふわした気持ちにさせられる。過度な程大切にされているのにまだ足りないという顔をする彼に気持ちがどんどん奪われていく。


 ハクさん達若い御令息の中に恭が見える。

私と目が合って、軽く手を挙げる。

和解できて本当によかった。

彼に助けてもらったから、今の私があるのだから。


「狛犬の跡取り様も少しは考えるようになりましたわね?本当ならば今すぐにでも尻尾を振ってこちらに来たいのを我慢なさって」


「え?そうですか?」


八咫烏(やたがらす)のご宗主様の婚約者となられた姫様に不用意には近付かない対応をとれるのならば及第点でございましょう。尻尾が揺れておられたのでマイナスですわ?ご宗主が戻られたら改めてご挨拶に来るおつもりでしょう」


社交の場、難しい…………。

立場を考慮して裏の裏まで読む必要がありそう。


「以前の私なら……元婚約者だったかすみさんならこういう場も上手くやれたんだろうなって考えたと思うんです。実際そうなのでしょうし……けど、月宗様の為に頑張れる自分の方が好きです」


「かすみ嬢は生粋のお嬢様です。生まれた時から教育を受けている。姫様は彼女から全て盗んでいけばよろしいのよ?」


「はい」


「それに…………彼女なら嬉々として宗主の妻の全てを姫様に授けると思いますわ?ねぇ、雲雀(ひばり)殿」


「……………………」


「ふふふ残念。ガードが固いですわね」


お、おう。大人な会話だ。腹の探り合い、凄い。


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