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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

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花嫁と序列

「俺たち八咫烏(やたがらす)は他の眷属(けんぞく)に比べて力がない。だから一度も嫁御を迎えた事がない」


「?うん?」

 

 月宗様はパフェの中のアイスを大きくすくって口に入れ、スプーンを咥えたまま話す。


「嫁御の気にいる洋風なドレスや宝石を用意してやれなかった。あいつらは、嫁取りのために自領に洋城まで建ててるからな。ドレスとか宝石とかは得意なんだよ。力のない質素なカラスは見向きもされなかった」


 でもこの洋館は月宗様の物だといっていたし、身につけているスーツや時計もブランド物だと一目でわかる。質素というイメージはこの人からは感じられない。

今は違うのだろうか。


「俺はお前に会う為に頑張ったぞ」


「私?当主になった事?」

 

「ん。青幽(せいゆう)と聞いて、思い出すことはあるか?」


セイユウ?何だろう。謎かけ?


「あれ?セイユウ財閥??」


「ん。後ろ盾のない俺が当主になるには手っ取り早く金が必要だったからな。俺が作った」


 現代で財閥は存在しないけれど、青幽グループはここ数年で大きくなった会社で、ITから不動産、ホテル業までグループ化してのし上がった様が財閥のようだといってSNSを中心に名前が広がった。今や就職したい会社No.1だったはずだ。


「ええ…………」


 何と言ったらいいのか分からない。すごいね、も違う気がするし、私の為にありがとう?も違う気がする。


「す、涼風(すずかぜ)、クッキーたべる?」


 気まずくて、わたわたと別の話題をふったけれど、涼風はフルフルと首を振る。

あれ?おかしいな、さっきはお菓子たべるってうなずいたのに。


「天衛は物は食べない。気にしなくていい」


「あ、うん……」


「もうお前に辛い思いはさせない。贈り物全てに結衣のイニシャルを入れさせてある。そんな事させないけど万が一桜子がとりあげても、もっといいのを買ってやる」  


「桜子のにも、イニシャルが?」


「うん?そーいえばなんの指示もしてねぇな。あいつのには」


 当たり前だけれど、桜子にも月宗様からのプレゼントは送られている。

きっと部屋にたくさんのプレゼントが置かれているのだろう。


 私だけじゃない。私だけ特別なわけじゃない。

すごく大切に優しくしてくれるけれど、桜子と平等。

気を抜いたらドンドン気持ちは溢れてくるというのに、彼はただただ私達を平等に見ようとしてくれているだけかもしれない。


「結衣?どうした?」


「なんでもない」





◇◆◇





 晩餐まで少し休めと、自室としてあてがわれた部屋に案内された。執事のお爺さんが手際良く部屋の説明をしてから下がっていった。


 日当たりがよく、お庭がよく見える。

天蓋のついた大きなベッドに、猫脚のドレッサー。ドレッサーには有名ブランドの化粧品が並んでる。


 ソファーとテーブルには所狭しと3人からのプレゼントの箱が並び、メイドが2人、手に花束を持ち控えている。


「花瓶に入れ替えてもようございますか?」

年かさのメイドさんが私に聞く。


 花柳院の娘なのに、切り花は苦手だ。

枯れていく様を見ていくようで。

怪我をした花の命の灯火(ともしび)を見ているようで。


曖昧にうなずくと、二人とも下がっていった。


 部屋のプレゼントをよく見ると、3つの山にされている事がわかる。


 妖狐、狛犬、八咫烏(やたがらす)、三者からのプレゼントとして贈り主ごとに分けてくれているのだろう。


 無意識に月宗様からのプレゼントを探してしまう。

家紋が全てに入っていると言っていた。


 よく見るとリボンに焼きごてで刻印してあったり、ボックスや袋に密蝋で家紋があったりと分かりやすい。


————八咫烏(やたがらす)。三つ足のカラス。


 (たか)のようにも見える大きなカラスの紋。すぐに見つけて、1番大きな箱のリボンを解く。


 月宗様から贈られたプレゼントの山だけやけにラッピングにリボンが多い。

綺麗なサテンのリボンに、ジャガード織のもの。絹のものや、刺繍がなされたもの。ビーズや宝石がついているリボンまであった。


 胸が苦しい。

彼のことを思うと胸が苦しい。

恋って、ドキドキしたり、キュンキュンしたりするものだと思ってた。

全然違う。

想いが溢れて、いっぱいになって、息が苦しい。


「リボン、覚えててくれた……」

小さく囁いて涙を追い出す。

ドアの外にいた涼風(すずかぜ)が、気配を察したのか慌てて部屋に入ってきて私の顔を見上げる。


「う゛~~~~~~」

リボンをかかえ、うずくまった私の頭をオロオロと撫でる小さな手が心地いい。


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