「非日常」への帰還
沈黙。誰もが言葉を発せられなかった。
ルーンは破壊され、スルトJr「だったモノ」も動く様子はない。ドライサウナと化していた屋内は、急激に元の温度へと戻っていく。
プシャァァァァァァァァァァァァァ…
突如制御を取り戻したスプリンクラーからは、その機能通りに水が噴き出した。
「うぉぉ、冷たあちィッ⁉」
水道管が熱されていたのだろう、降り注いでいるのは水というよりお湯。温度設定を間違えたシャワーのようだ。
「でもこれで火は」
「ゆーとる場合かっ! 間もなくココ崩れるで!」
「なんで⁈」
「チンチンに熱くなったモンに水ぶっかけたら割れるやろっ!」
「あ、そうか!」
「おー、チンチンねー…」
「急いでここから脱出やっ!」
「任せろっ!」
大樹は熱で変形した(むしろまだ熱を持っているはずだが)出口の戸を蹴り一発で破壊。
「よし!」
「神代君!」
下の方から声がした。澪はまだ尻もちをついたままだった。
「あの、お願いします…」
「ああ、任せろ!」
大樹は澪に駆け寄り、軽々と抱き上げる。
「よっこいせ!」
松尾も天城を背負って回収。
「さぁ行こか!」
見慣れた、体育館へと続く渡り廊下へと駆け出した。
◆
校舎はおおよそ消火活動が終わっていた。周囲に漂う、物が燃えた焦げた臭い。それは悪臭に他ならないのだが、誰もそこから動こうとはせず、変わり果てた校舎をただ見つめていた。
「さくらちゃん! あれ!」
紗々羅が突然声をあげる。
体育館の方からこちらへ駆けてくる者たちがいる。走っている者。背負っている者。そして抱きかかえている者。抱きかかえられている者。
「お前たち…無事だったか!」
「ご心配をおかけしました」
澪は代表のように頭を下げ詫びた。
ともかく、女子更衣棟にいた大樹たちも、クラスメイトと合流できたのだ。
「よかった…よかった…」
さくらは澪を抱きしめ大泣きだ。だがその手を放し
「ごめん、ちょっと行ってくるね」
と言い残し駆け出した。行った先は陣頭指揮を執っている校長。
「2-B、胡桃沢さくらはじめ全32名。全員無事生還しました!」
さくらはそう報告し、校長へ敬礼。文弥もこれに敬礼で応えた。
◆
澪は紗々羅をはじめ、クラスメイトたちと無事を喜んでいる。それを眺めていた大樹だったが、その背景にある、黒焦げになった校舎を見て呟いた。
「…またオレの居場所がなくなっちまった…」




