「おっぱい」構文
オープニング曲「トキメキってください」
https://x.com/HanashioKikei/status/2040632557730193424?s=20
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挿絵はAI生成のモノ(場合により手直しアリ)
絵は描けませんので…
「あああああああ…疲れたぁぁぁぁぁぁぁ…」
時間は3時間目を終えた頃。1時間目の事故の後、その対応で2校時分の時が過ぎていた。だが澪的には『すでに体育祭と文化祭を終えてこれから通常の授業』くらいには疲弊している。
これから4時間目が始まる休み時間、廊下には移動教室の生徒が溢れる、が、先の事故の安全確認のため実技棟は閉鎖中なので、そこへ向かう生徒がいない分、普段よりは少ない。
その生徒たちの流れの中を、澪はトボトボと歩き、(彼女の感覚では)やっとのことで2ーBへ辿り着いた。
「ああ…やっと着いた…」
もはや砂漠を彷徨った旅人のようである。
さて教室内の景色がこれまた普段と違う。スプリンクラーのシャワーでもれなくびしょ濡れになったので全員ジャージ姿。南側の窓には男子生徒の制服がずらりと並べ干されている。窓という窓に上着もシャツもズボンも掛かっているので教室内が薄暗いほど。昼前の日差しと初夏のサラッとした風が「洗濯物」の水分を奪っていくが、乾くまではまだ時間が掛かるだろう。机やイスの背もたれも同様に物干し台となっている。中にはスカートを窓枠に干す剛の者もいるが、そのうちの一人が紗々羅であることは想像に難くない。そして女性生徒は一様に猫背気味。下着までぐっちょりになってしまったので、急遽学校側が近くの衣料品店から買い集め、男女問わず生徒へ支給された。ただ…「上」はいかんともし難い。
澪は教室へ入るや否や大樹の姿を探した。とはいえ探すまでもなく校長室に行く前に見かけたのと同じく、自分の席に着いていた。ただ普段とは違い頬杖をついてる。
(ふぅん…結構がっちりした体つきなんだ…)
ジャージがないのか学ランを脱いだだけで、白いTシャツはともかくズボンはまだ濡れたままだった。
「ご機嫌いかが?」
澪は大樹の机の前へ立ち顔を覗き込むように声を掛けた。
「…別に。いつも通りだ」
「あ、そ。なんか元気ないかな、とか思ったんだけど」
「…予告も無しに冷水シャワーを浴びせられりゃ誰だって機嫌の一つも悪くならぁ」
「あら、ご機嫌斜めなんじゃない」
「そんなことねぇよ」
と大樹はそっぽを向いた。
「そんな恰好で風邪ひかない?」
「着替えがないんだよ。今日は体育がないから持ってきてねぇんだ」
「ロッカーにでも入れておけばいいのに。ま、困ったことがあったら相談してね」
と、澪はなにやら恩着せがましく机を離れた。
(ちっ、うっせーな。なんちゃって委員長のくせにでっけーおっぱいしやがって)
言いがかりにもほどがある。が。
「ったく、とりあえずおっぱいでも揉ませろってんだ」
…ふと人の気配。なんだ?と思って見上げると…今しがた机を離れたはずの澪が、真っ赤な顔してプルプル震えながら大樹の横に立っている。
「…も、揉みなさいよ…」
「ああん?」
「いいから、私の、お、お、お、おお、おっぱい、も、揉みなさいよ!」
「はぁっ?! 何言ってんだ白鷺っ! 気でも狂ったかっ?!」
「狂ってないわよっ! あなたが、今そう言ったから…」
「え…オレ? そんなこと言」
(あ、やば…思考が漏れた…?! これが魔導ってヤツなのか?)
そんなわけがあるわけない。口から漏れ出た脳内モノローグに大樹が気付いていないだけだ。
「は、早くしなさい! そうしないと今度は火星が粉々になったりホッキョクグマの一斉お見合いパーティーになるかもしれないでしょッ!」
(私が…私が火星とホッキョクグマの未来を守らなくちゃ…っ!)
「何をワケの分かんねえこと言って」
「いいから早くッ!」
凄まじい圧。それは澪の様子が原因なのだが、グイッと目の前に突き出された2つの大きな塊のせいでもある。
「いいっ⁈ …そ、それじゃちょっと失礼して…」
目をきつく閉じ縛っている澪。彼女の胸へ大樹の手が恐る恐る伸び、触れた。しっとりと湿気を帯びたジャージ。ぬくもり。わずかに力を込めれば伝わる、ふわっとした柔らかさと微かに押し返す弾力が同居した感触。
「…んっ」
「あ?」
「な、何でもない! で、ど、どう?」
「あ、の、柔らかくて、その、素晴らしい、です…」
「そ、そう。これで気が済んだわね! それじゃ!」
澪はそう言うとツカツカと自分の席へ戻るや不機嫌そうにドカッと座り、机に突っ伏してしまった。そこへトイレから戻った紗々羅がやってきた。もちろん彼女は経緯を見ていない。
「どったの? 澪。なんか耳真っ赤だよ?」
「何でもないっ!」
「…何かあったの?」
紗々羅は周りにいたクラスメイトに聞くが
「さあ? …ご乱心?」
返ってきた答えは要領を得なかった。
一方大樹の手は未だ空中で先ほど触れた球体の曲面カーブ形状を維持したままワキワキと動いている。そこへ今しがた澪が立っていた場所へ二つの人影。
「神代、あんはん勇者やな」
「そうそうそう。シラサギサーンのおっぱい触るなーんて、思ったところでできなーいもんだよー?」
「はぁ?」
やってきたのはクラスメイトの松尾隼人と安倍瑠架。
「どういう構文使ったんや⁈ 教えろよ! いや、むしろ教えろください!」
頭を下げつつ松尾が迫る。
「いや、構文とかそういうのは…」
「そんじゃどういう魔導使ったってーのさ!」
謎のイントネーションで安部も追求。
「いや、魔導とかそういうんじゃなくて…なんか知らんが向こうから来た…」
「はあぁッ⁈ なんでそないなスケベプレゼンテーションが起こるんや⁈」
「なんなんだよ、そのスケベプレゼンテーションってのはっ⁈」
「ラッキースケベの上を行く概念だーね。偶然じゃなくて、チャンスが向こうからやってくーる」
「そんなイイ思いするなんて、あんはん一体どういう星の元に生まれたんや…恵まれすぎやろ…うくくく…」
「泣くほどかよ!」
「泣くほどやっ!」
澪は突っ伏した腕の隙間から大樹たち3人の様子を窺っていた。何しろ彼女は『仕事熱心』なのだ。だが冷静に観察してるつもりでもいまだ収まらない胸のドキドキはいかんともし難い。
(…バカみたい…)
◆
ここ望陵学園という場所ではウワサというのは光より速く伝わるのかもしれない。大樹が澪の胸を揉んだという話は澪が大樹に胸を揉ませたという話に変わり(大筋で間違ってはいないのだが)、2年全クラスはおろか他学年まで急速に広まっていた。
3-C。このクラスには天城がいる。誰と話すでもなく一人でスマホを弄っている彼の耳に、クラスのおしゃべりスズメたちの囀りが届いた。
「ねぇ聞いた? 2年の風紀のコ、男子に胸揉まれたんだって!」
(…風紀の子って誰だ?)
「あれ? ワタシ揉ませたって聞いたよぉ?」
「マジで? しかも学校で教室で、でしょ? だいたーん!」
「休み時間に早ワザでらしいよぉ?」
「休み時間っ⁈ うわぁ、マジで? で、風紀の誰なの?」
「ああ、それ、白鷺ってコだってー」
(澪ッ? 澪のことなのかッ?)
「白鷺ってあのコでしょっ? 長い髪の清楚な感じの。うわぁ、人って見かけによらないわよねぇ。相手は誰なの?」
「こないだ天城とケンカしてた転校生だって。来て早々もう手を出してるって、なかなかヤリ手じゃない?」
(転校生ってアイツかッ!)
「裏じゃ二人でナニしてるか分からないよぉ?」
「ナニってアンタ、ナニしたら魔力伸びなくなるじゃん。それはないっしょー」
「いやいや、分からないよぉ? おとなしいコほど大胆かもよぉ?」
(クッソォ…知らないところでそんな話が進むなんてェッ。ボクだって澪には触れたことすらないんだぞ? ボクが育てたってのにッ。クソォ…クソォ…)
◆
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ…疲れたぁぁぁぁぁぁぁ…」
先ほどと同じ「鳴き声」の澪、しかし声に力がない。彼女は「今日の分」の報告で校長室から出てきたところ。
生乾きの制服。自由であるがゆえに不安な胸周り。澪はできれば早く帰りたかったが当番なのでと風紀委員会へトボトボと向かっている。やはり仕事熱心なのではあるが、さすがに今日は気の毒だ。
委員会は本館3階の教室に割り当てられている。入り口の引き戸に手を掛けたところで中から「白鷺先輩が」との声が聞こえた。声の主は1年の陽菜か? 何やら噂されてるなぁと思いつつ131教室の戸を開けた。
「こんにちは。遅くなりました」
疲れているとはいえここは元気にあいさつしなければ、と残る気力総動員で笑顔を作る。
(あれ?)
澪以外の今日の当番7人が正方形状に並んだ長机に着いている。だが普段とは違う雰囲気。何となく場違いなところへ来てしまったような…重苦しい空気の壁に阻まれ澪は戸の前から先へ進めない。
「あの…何かあったんですか?」
尋ねるが、皆一様に目を合わせない。
「あの…私、なにか悪いことでもしてしまったのでしょうか…」
澪はオドオドしながら委員長を見た。3年早乙女涼。風紀の歴代委員長としては珍しく一般入試組。元々の魔力はあったものの努力でそれを磨いてきたことを澪は間近で見てきた。澪が模範とする人物が沈黙を破り重い口を開いた。
「あのね、澪ちゃん。落ち着いて聞いて欲しいんだけど…今学校で澪ちゃんのことがウワサになっててね、なんでも教室内で破廉恥な行為をしていた、とかで」
「…はぁ?」
「その、胸、お、おっぱいをね? 教室内で男子生徒に触らせて、ってね、その、ウワサよウワサ。でもね、どうなのかしら。それ、本当なの?」
「どうしてそ…ンンンンっ!?!?!?!?」
思い当たるフシが脳裏をよぎり、否定しようと開けた口を急速閉口。
(…あれかぁ…神代君の「とりあえず」の件…)
サァーっと血の気が引いていくのを感じた。
(え? あんなのがウワサになってるの? え? だって休み時間にちょっとだけ、だよ?)
「あられもない声を出していた、って証言もあるんだな、これが」
(桐谷君? …ははぁ、さてはコイツが震源地だな?)
その通りだった。2年の桐谷晴真は爽やか系のイケメン。その容姿を生かし普段からよく女の子たちからウワサ話を集めてくる。
(あられもない声って…いや、ちょっと声出ちゃったけど、でも、それにしたって…)
時間にしてみれば1分かそこらの出来事。それがこれほどまでに広まってしまっていると澪は思いもよらなかった。
(うわぁぁぁ恥ずかしいぃぃぃ…そんな目立ってたなんて…)
真っ赤になって俯くが、そもそも彼女は出自にしても容姿にしても、自分が目立つ存在であるという自覚がない。
「それで澪ちゃん。それは事実、なのかしら?」
「…はい」
蚊の鳴くような返答にザワつく委員たち。
「聡明な澪ちゃんが…どうしてそのようなことを?」
「…その…校長先生の指示で…」
「校長先生がっ⁈」
早乙女は折り畳みパイプイスを弾き飛ばさんばかりに立ち上がった。さらにザワつく委員たち。
「…なるほど。校長先生のおっしゃることなら何か深い意味があるのかもしれないわ? そもそも我が校は恋愛推奨。むしろ男女の関係は魔導の成果を上げていくためには必須ですものね!」
早乙女は「考える人」のようなポーズをとり深刻な顔で考え込んだ。
(ああ…お父様への信頼が嬉しいような悲しいような…)
「そうですよ! 間違いないです! 澪先輩が快楽に溺れるだなんて、そんなことあり得ませんから!」
1年の成瀬陽菜は付属中からの先輩後輩の間柄で非常に慕っている。むしろ信者。
(いや、快楽とかそんなんじゃなくてね? 陽菜ちゃん…)
「そもそも我々風紀委員は恋事不介入が原則。恋愛の自由に口出しすべきではないんじゃないかな?」
体育会系ジャージ姿の3年相馬陸は腕を組み神妙な面持ち。
(相馬先輩、真顔で何言ってんの…)
「でも人前でってのはマズくないっスかぁ?」
1年江藤颯太はムードメーカーと言えば聞こえがいいがちょっとノリが軽い。
(江藤君も…)
「江藤君さぁ、ちょっとは澪ちゃんの気持ち考えてあげなよー」
冷静沈着な2年藤宮凛は澪の良き理解者ではあるが。
(凛ちゃんありがとう。でも気持ちもなにもないのよ、これ…)
今日は空振りの模様。
「颯太君ってさー、おっぱい触りたい系?」
佐伯陽莉3年生は悩み相談を受けることが多く、口は硬いがノリは軽い。
「そりゃもちろんっスよ!」
(陽莉せんぱーい…江藤君もそこノリノリで答えるところかなぁ…)
喧々轟々の恋愛論議が始まった。校内での肉体的接触はどうなのか? キスまではOK? 恋愛は秘してこそ華。人前でイチャつくのはNG? そこは個人間の自由意志で…などなどなどなど。果ては「爪は切るべき」まで、もはやモノローグのツッコミが間に合わない。
(早くおうちに帰りたい…)
と心の中で呟く澪。図らずもそれは大樹が口にするものと同じ類の物。そして、本人そっちのけであれこれ話をされることの厄介さを痛感した澪は、大樹の気持ちがなんとなく分かった気がした。
(めんどくさい…)
「で、澪チャン、気持ちよかったん?」
桐谷の一言で場が凍りつく。
「気…キ…」
澪は引き攣り言葉が出ない。
桐谷はいつも一言余計だ。イケメンでありながらモテないのはこれが原因である。
「桐谷君ッ!」
早乙女の怒声を合図に桐谷への集中砲火が始まった。おかげで澪の件は有耶無耶になり、結局
「風紀委員は恋事不介入」
という結論に至った。いつも通りである。
◆
エンディング曲「厚底サンダル」
https://x.com/HanashioKikei/status/2050184791463743534?s=20




