A班 救助用機体5021 カイル隊員9-5
「結局、主導権も何も取れなかったわ」っと言い捨てて、彼女は足早に去った。
「待ってくれ!まだ聞きたい事が!」
止める間もなく姿が消える。
「タイプーAとCの混合…」
「ともかく追いかけましょう」
各部屋のドアを開け、探したがどこにもいない。
結局、見つからないまま元独房の外まで出た。
「あの方は…多分、凛のお父さんを助けたいとか…ではなくて…」
「あぁ、邪魔したかったんだろう。柳隊長と誰かの…」
「あの人って…誰の事でしょうね」
「分からん。もう一度見つけて…今度こそちゃんと話をしてもらおう。肝心な事が聞けていない」
江島女史はこの基地に残っている。
それが確認できた事は良かったし、彼女の打った物で本庄上官は助かった事は有難い。
例えそれが仲間内の…不協和音の産物だったとしても。
「あっちも一枚岩ではないって事か…」
「 どうでしょう」
「え?」
「 …いえ、何でもないです」
「?…まあ、とにかく次は…『本庄親子の部屋』に行こうと思う」
「凛の?部屋ですか」
「ああ。凛さんのお世話をしていたんだ、着る物や何か…分からんが、取りに行ったのかもしれない」
昨日、ここを通った時とは違い、隠れ進まずに済んだ。
上官の病室まで行く間、眺めた頭…黒髪の…二カ所で髪を束ねた少女…。
強気な部分も繊細な部分もある…無謀な時も…目の前の彼に似ているなと思う。
彼女の身に宿された生物が、救世主…。
14歳の少女の…犠牲の上に立つ平和など、有ってはならない。
実験が失敗すれば…他の実験者達の様に…。
では…成功すれば?
横に走る滝中君を見る。
…この子より小さな少女が…「産む」のだろうか。
それは…無理な話ではないか?
失敗が前提の実験ではないのだろうかと…頭に過る。
出産…それ以前の…行為すら経験のない子供に…。
そんな子供を復讐の為に使う…一体何をそんなに恨んでいるのか。
本庄上官は柳隊長に何をした?
まさか、上官が司令官と懇意で…出世とかの嫉妬…と言う訳では…ないよな?
そんなバカげた理由では…。
「ドア…開けますか?」
走りながら考え事をしていた所為で、部屋の前に着いたのも気付いていなかった。
「カイルさん?」
「あ…あぁ。すまない。考え事をしていた…」
「…開けますね」
鍵を…と言う前にドアが開いた。
「誰か…居ます」
ゆっくりとドアを開ける。
玄関にはオレンジのハイヒールが揃えて置かれていた。
「やはり、ここに来ていたのか…。」
「…」
滝中君が何か言いたげな顔で、じっと俺を見た。
「ん…?どうした?」
「いえ…今度こそ聞く為に、鍵をかけておきましょう」
「そうだな、足止めになる…。なんせ彼女は思いの外、素早い」
しかし、彼女に鍵がかかっている事を気付かれない方が良い。
ゆっくりと…慎重に鍵をかける…。
ちっ…と音が鳴りかけたが、どうやら奥に居る彼女には聞こえなかったみたいだ。
靴を…脱がない方が動きやすいが…。
滝中君が脱いだ為、俺も合わせた。
「すみません。どうしても靴のままは…」
融通が利かない自分が歯痒そうだ。
「大丈夫だ…文化の…育ちの良さだ」
藤田もそんな奴だった。
刻み込まれた習慣は抗えない。
目の前のドアを開け、俺達はリビングに踏み入った…。




