本庄 凛(ほんじょう りん)8-3
「さっきはありがとうございました」
病室に入るなり、怜が側にいた隊員にお礼を言う。
「いえ、無事で何よりです」
そう言って父の横にいる隊員は笑みを浮かべる。
「怜君…無茶をするね…」
呆れ顔で父が言う。
一連の報告が終わったらしい。
服の下に見える胸の包帯が、痛々しいけど…顔色は思っていたよりも良かった。
「お父さん…起き上がって大丈夫なの?」
「あぁ、…心配かけたね」
そこで怜が第二の隊員をかわしながら、扉の前に居た隊員の人達に助けを求めたことを聞く。
そして、今の現状も。
今組織は二分され、司令官と父の研究反対派と副司令と柳隊長の研究賛成派が出来上がり、賛成派が過激化しているらしい。
そして…私と怜を実験台として欲している。と…。
「もうすぐあんた達は排除される」
ジャンが言う。
「アイツらを研究して、利用しなけりゃ…人類は滅亡だ」
「…それに柳の…個人の感情やお前の欲は絡んでいないのか?」
父の返答にジャンが黙る。
「俺が撃たれる前に見ていた資料は、あれらのコントロールを目的とした物だったが…人体実験での不審が有った」
父の横に待機していた隊員が、横にあった書類をジャンの前に置く。
「これには人体内での繁殖…孵化のコントロールに関しても書かれていた。…お前たちは人間にアレを詰めて意図的に孵化させようとしている。…戦争にでも使うかの様に」
「人類を救うためだ」
「違うな。…副司令はこれを戦争に使う気でいる。こんな世界で。人類存続も危ういというのに」
父が頭を抱える。
「遺伝子を操作したアレは、命令に従う。だから…同士討ちをさせる為に…」
「同士討ちを想定するなら、タイプーAのみで良いはずだ。アレは他のタイプを捕食する。しかし、今、タイプーAだけでなく他のタイプも研究し始めた。…何故だ?」
私達も…他の隊員達も…2人の会話を静かに聞く事しかできなかった。
…父は知っていた。
あの蜘蛛の様な化け物が蟻…他のタイプを喰っていた事を。
「それは…」
ジャンが言い淀む。
「別に。戦争なんかに使わんさ」
部屋のドアが開き声がした。
柳隊長だった。
第一の隊員達が身構える。
「迎えに来たぞ。本庄凛、並びに滝中怜」
武装した隊員達が次々に入ってくる。
形勢逆転とでも言うのか、カイルさん達には銃が突き付けられ、ジャンが解放された。
そして、私と怜が拘束される。
「待て…柳っ…」
動こうとする父を隊員が押さえつけた。
「お父さん!止めて!!父に乱暴な事しないで…」
私の言葉で柳隊長が手を挙げて離す様に隊員に指示する。
「君達が言う事を聞けば、手荒なことはしない。…分かるね」
「凛…逃げなさい…お願いだ」
父の声が霞む。
「ううん。お父さん…」
従うようにと…柳隊長に、私と怜は廊下に出される。
ドアが閉まる前に柳隊長が父に振り返る。
「そういえば会議が始まる。新しい司令官と副司令官の紹介があるから君も来たまえ。車椅子で…そこに居るカイル隊員にでも押してもらって…な…」
柳隊長はそう言って病室のドアを閉め…高笑いをした。




