95 新たな脅威
95 新たな脅威
キムスケ「聖盾蟹は、絶滅した。
呪いの雨によって。
イムの御石鉢を欲した
魔王軍の策略によって、
イムの御石鉢はもう、
2度と作れぬ物になってしまった。
我々セイレーンは、イムの御石鉢と
聖盾蟹を守り後世に残すため、
この地に移り住んだのだ。」
ヌル「そんな……。ここまで来て……。」
ヌルは途方に暮れた。
遠くを見つめるしかなかった。
池で泳いでいた水鳥が飛び立ち、
洞窟に入るのが見えた。
洞窟から、少しだけ滝のように水が流れていた。
それが川となり、池へと続いている。
ヌル「もしかしたら!
キムスケさん! あの洞窟ですよ!
あの中に、あの水の中に、もしかしたら!」
ヌルはキムスケとアルベルトに力を借り、
池の上の洞窟へと入った。
細い川を上流に向かって進むと、
岩壁から染み出した水が溜まった
小さな池があった。
ヌルはエコーロケーションで探る。
すると、亀のような生物を感知した。
ヌルは顔を突っ込み、
その生物を掴み水から引き上げた。
体調約30センチ。
白銀に輝く甲殻、背中に浮かぶ赤い十字の模様
そのカブトガニのような生物は
元気に脚をバタバタさせている。
ヌル「いた! やったぞ!
どんな僻地の池や湖にも魚や生物がいる。
水鳥が運ぶんだ。
羽毛に着いたり、卵が消化に耐えたりして。
ここは洞窟の中だから、
酸性雨の影響が少なかったんだ。
生きてた、生きてたぞおおおおお!!」
キムスケ「こんな奇跡が。この人間……。」
アルベルト「案外、
勇者の再来なのかもしれないな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーオーリヤマ国・カイセイ城下町ーー
ヌルはキムスケを連れ、仲間と共に帰還した。
雷切は、うまーるに託された。
ヌル「うまーる、これはアーク放電を利用する
中距離武器らしい。
アーク放電はまぁ、伸びる電気だ。
練習しておくんだ。」
うまーる「あーく? うん。わかったんだよ。」
カバとの死闘を繰り広げた
オーリヤマのカイセイ城は
国連軍の本部となっていた。
城下町にもたくさんの人がいる。
金儲けの匂いを嗅ぎつけた商人や冒険者、
ボランティアの人などが集結しているようだ。
「ヌルさーん!」
懐かしい声がヌルを呼ぶ。
ヌルを呼ぶ声の方を振り向くと、
パンダの女性が手を降り走ってきた。
ヌル「ぽちぽちさん!
どうしてこんなところに?」
ぽちぽち「お久しぶりです。
その節はお世話になりました。
皆さんお元気そうで何よりです。
母のユミィも元気になりまして、
ここで宿屋をやることにしたんです。
世界の命運を握る戦いの
裏方をやりたくて、来ちゃいました。」
クルム「あの時はありがとね。
無理して料理出してくれて。
今度なんか奢るわ。このゴリラが。」
レスベラ「そだな!
戦争終わったらパァッーと飲もうぜ!
アタシの旦那の奢りで!」
クルム「捕らぬ狸の皮算用。」
レスベラとクルムのケンカが始まった。
うまーる「ぽちぽちさん、
蓬莱村は大丈夫なんだよ?」
ぽちぽち「ヌルさんの薬のおかげでね、
みんな元気よ。」
ヌル「それは良かった。」
キムスケ「ごほんっ。」
ヌル「あっ。そうだ。俺たち急ぎなんだ。
俺はキムスケさんと本部に行くから。
よかったら3人は色々お店見てきてくれよ。
良いものあったら買ってもいいからさ。」
ヌルはクルムにお金を渡した。
何故か3人と一緒に歩き出すフロ。
ヌル「フロさん……。仕事いいのかな。」
ヌルとキムスケがカイセイ城に入る。
入ってすぐの一階の広間が
国連本部の会議室となっていた。
ヌル「ただいま帰りました。
こちらはセイレーンの里の頭首、
キムスケ殿です。」
キムスケ「お初にお目にかかります。
シロイナワの領主、
キムスケと申します。」
キムスケの姿を見た皆が驚く。
ソナが1番驚いていた。
キムスケは歩き出し、ソナの前で跪く。
キムスケ「貴方が王家の……。
私はキムスケと申します。」
ソナ「キムスケさん、はじめまして。
ソナです。
共に戦ってくれるのですね。
ありがとうございます。」
隣のヨーリーが笑顔で話しかける。
ヨーリー「あら。イケメンのセイレーンじゃない。
頼りにしてるわネ♪」
キムスケ「人魚族……!」
キムスケはヨーリーを睨みつける。
張り詰める空気を、レイカが遮断するように
ヌルに話しかける。
レイカ「ヌルちゃん、シロイナワ遠征の成果は?
浮かない顔、何かあるんじゃん?」
ヌル「さすがレイカ様。実は。」
ヌルはイムの御石鉢の素材を手に入れたこと、
その製法も教わったこと。
腕の良い魔法具職人に頼みたい事を話した。
ムラ「それなら任せろ!
俺とカズチョンでやっとくわ。
ヌル殿、実は問題があってな。
レイカ殿、話を進めてもかまわんな?
ということで、詳しくはレイカ殿からな!
どれどれ……。」
ヨルグ「待て! 王の責務を投げ出すな!
俺とカズチョンでやる!」
ヌルから素材とレシピを受け取ったムラは、
喜んで工房へ向けて走り出した。
ムラの後を追いかけ、ヨルグも退席した。
エミー「まったく困った馬鹿どもだよ。
あのくらいの情熱を政治に向けてくれると
いいんだけどね。
女いじりと魔法具いじりの時だけ、
ヤル気出すんだからね!」
レイカ「まぁまぁ。
茶碗の完成も大事な任務だからさ⭐︎
ムラちゃんに茶碗任せて、
こっちではアノ話進めるからね。
こまちゅ、アレ頼む!」
こまちゅ「はぁ……。めんどくさい。」
ヘンゼルが酒の甕のような魔法具を取り出した。
アカマルが魔法具に魔力を込めると、
甕の上の仙人のようなフィギュアが周り出す。
仙人のフィギュアが北東の方角を指すと、
甕の周りに付いている8の竜の頭の中の
北東の竜頭の口が開き、鐘のような音が鳴った。
ヌル(なんだろう、アレは。
指南車と地動儀を足したような道具だな。)
考え込むヌルの横に、いつのまにかエルがいた。
エル「指災儀っていうんだって!
災いが起こる方角を
教えてくれる魔法具なんだって!
どんな仕組みなのかな!?」
ヌル「それはすごいな。
なるほど、それで問題ごとを見つけたのか。」
アローヒが鏡の魔法具を取り出し、
こまちゅに持たせた。
こまちゅが鏡に魔力を込めると、
鏡に映像が映し出された。
レイカ「これはエルフの秘宝・沖津鏡だよん♪
この映像はね、フォトンアラウンド大陸
アズマ火山地帯の禁足地【エゲレ火口】の
映像よん。」
そこには火山で蠢く、青く光る
スライムのような物体が映っていた。
防護服のような服を着た作業員が数名、
何かの作業をしている。
ヌル(十至珍宝の沖津鏡!
こまちゅ様が持っていたのか!)
「なんだ、
この青く光るスライムのような物体は!?」
こまちゅ「禁足地。この地は呪われておる。
近づくだけで死ぬ。
火口直前で引き返した者も、
後日体が溶けて死ぬという呪いの地だ。」
マーボー「どうやらコレまだ
未完成みたいなんだがよ、
完成したらヤベエって話なワケよ。
ああコレな、魔王軍の新兵器らしい。
この青いマグマのゴーレムが
暴れ出す前に始末してえんだわ。
ヌル、なんか良い案ねえか? ピュイ♪」
ヌル「青いマグマ。禁足地。呪い。
……まさか!」
(この青い光はチェレンコフ光なのか?
だとすると、コレはウラン!
しかも核分裂反応を起こしてる!!
ウランのゴーレムだと!?
歩く原子炉じゃないか!!)




