93 シロイナワ高地の死闘
93 シロイナワ高地の死闘
ーーシロイナワ高地ーー
ダビスが醸し出す不気味な煙が雲と混ざり合い、
空が不気味な色に染まる。
空から降り注ぐ岩に加えて、
不気味な雨も降りはじめる。
地上では4体の竜キメラと
セイレーン軍+ヌルの仲間達が死闘を繰り広げる。
ミスリルドラゴンのような鳥人間キメラが
高速の滑空と急降下で動き回る。
その人間離れした動きを
全開のうまーるが引きつけている。
ミスリルを含む羽毛には電撃が効かず、
また高速で動き回る相手には、
ローレンツショットの狙いも付けにくい。
互いに決定打にならず、膠着状態が続く。
黄金のフクロウのような鳥人間が
太陽の光を浴びて帯電し、
首周りの液体を利用した冷凍ビームを放つ。
射線を見極め、なんとか回避するクルム。
しかし寒さが徐々にクルムの動きを鈍らせる。
クルム「連射されないのが救いね。
冷凍の合間にくる音の波動も
厄介だけれど。」
クルムが放つ風は簡単に躱される。
羽音はなく、銀竜に比べると
緩慢な動きに見えるが、その飛行性能は高い。
金竜「ホアアアアアアア」
充電中に放たれる、収束した音の衝撃波。
クルムは耳を塞ぎながら、
味方がいない方に衝撃波を誘導していた。
池に身を潜め、時おり顔を出し
強烈な水のブレスを放つ水竜のキメラ。
水面をアイススケートのように
走りながら応戦していたのはレスベラであった。
アクロバットな動きで水ブレス躱し、
水竜の顔を斬りつけるレスベラ。
怒った手負いの水竜は、
顔を出さずに水中から水で狙撃するようになる。
水の抵抗のせいなのか、威力が落ちた
ブレスであったが、足元からいきなり現れる
水柱は出どころが読めず、
レスベラは被弾するようになる。
しかしレスベラの防具は水に対して
強い耐性をもち、さほど影響はない。
しかしレスベラも攻撃手段がなく、
膠着状態が続く。
地上では
ティラノサウルス型のキメラが大暴れしていた。
キムスケが槍で応戦する。
激しい噛み付き攻撃に
槍で丁寧にカウンターを突くキムスケ。
キムスケを援護するようにアルベルトと、
りおんが援護射撃をする。
そこへヌルと、パンを咥えたフロが
シロイナワ高地に転移してきた。
フロは襲撃された里の様子を見て顔色が変わる。
滅亡したオーリヤマの惨劇が
頭の中でフラッシュバックしていた。
フロは一目散に負傷者への元へと駆け出した。
フロが負傷者に治癒を施す。
フロが咥えていたパンが地面を転がる。
ヌル「フロさんはヒーラーか。
それでもありがたい。
戦況は……。」
ヌルは地面に転がる白いものに注目する。
それは、
小さなカエルがひっくり返った物だった。
よく見るとそれは、あちこちに点在している。
また、小さな虫の死骸も目立つ。
ヌル「これは……毒物か!
考えられるのは、雨。
しかし敵も浴びてるぞ。
空中にいる敵将も。」
ヌルは塩素系の匂いに気づく。
ヌル(まばらな雨。
そして考えられるのは空気より重いガス。
2種類以上の液体を、まばらに降らせて
地上で混合させ、空気より重い有毒ガス。
これは、地表への攻撃!
混ぜるな危険か!
仕掛けているのは……
あの煙を出しているヤツか!
それに虫の指揮を執るヤツも厄介だ。
先に倒すのはヤツラだ!)
「レスベラ!水竜の相手は俺が引き受ける!
あの空にいる、煙のヤツを倒さないとまずい!
俺たちは雨による毒攻撃に曝されている!」
ヌルは水竜が潜る池の表面に手をあて、
氷属性の魔法で凍らせた。
レスベラのそれは、
本能としか言いようが無かった。
理屈ではなかった。
レスベラは降りしきる雨を足場に
空を翔け上がる。
レスベラは煙の男を射程に捉える。
一方、煙の男ダビスは
レスベラの刀の長さを見て、
あまりにも離れている状態で
宙返りを始めるレスベラを見て油断していた。
まだ攻撃は届かない、と。
レスベラは右足を振り上げる。
足の先から水の刃が伸びる。
そのままバク宙を決めた。
水の刃がダビスを両断した。
レスベラ「酒乱足刀流・酒様」
レスベラは振り上げた右足を振り下ろし、
さらに左足を振り上げる。
水の刃が鋏のように、蠅男を両断する。
レスベラ「酒乱足刀二刀流・鏡割り+酒様
【大銀顎】」
レスベラは空中で態勢を立て直し、
角笛の男に向けて走り出す。
ヌルは息を潜めて待つ。
ヌル(水竜は肺魚だ。必ず呼吸のために顔を出す!)
氷をぶち割り、水竜が顔を出した。
ヌルは靴の裏に氷の刃を作り出し、
アイススケートのように滑走し、
水竜の喉元にウルフバートを突き立てた。
左手に握りしめた包丁も突き刺す。
ヌル「雷魔法・ディフィブリレイター」
ヌルはAEDの原理で
水竜の体内に電気ショックを叩き込む。
水竜は動かなくなった。
ヌルは周りを見る。
うまーるとクルムが苦戦を強いられている。
ヌル「金竜は炎が弱点だ!
銀竜には毒が効く!
金竜は俺が引きつける!
2人で銀竜を叩いてくれ!」
ヌルは氷が割れた水面から水を吸い上げ、
水を噴射しながら空を飛ぶ。
ヌル「海で使った魔法・フライボードだ!
くらえ! 炎魔法・火球!」
ヌルは金竜に向けて炎の魔法を放つ。
金竜は火球を華麗に避ける。
そして攻撃の矛先をヌルに向ける。
金竜「ホアアアアアアア」
金竜が音の衝撃波を放つ。
ヌルは耳を塞ぎ、衝撃波に
頭から突っ込み、被弾する面積を小さくする。
うまーると銀竜が激しい攻防を繰り広げる。
クルムは角笛男が浮かせた岩の影を巧みに使い、
移動していた。
クルムの防具は夜のみの効果かと思われたが、
影にも溶け込む事が可能であった。
クルムは銀竜の死角から突然現れた。
驚く銀竜。
銀竜は咄嗟にクルムと距離を取るも、
既に毒を吸わされていた。
金縛りのように、麻痺で動けなくなる銀竜。
うまーるが狙いをつけ、必殺の弾を放つ。
うまーる「ローレンツショット・サザエ」
音速を超える木ネジが高速回転をしながら、
硬い銀竜の胸を貫いた。
銀竜は落下し、地面に叩きつけられた。
炎が弱点であるという話を聞いていた
アルベルトが竪琴の弓を奏でる。
七羽の火の鳥が金竜に向け放たれた。
七羽の火の鳥は金竜に向かいながら一つになり、
一羽の巨大な火の鳥となる。
アルベルト「火の鳥×7・極楽鳥」
金竜は華麗に火の鳥を躱す。
ヌルは風の魔法を使い、
極楽鳥の進行方向を変えようとしている。
クルム「私にソレ寄越しなさい!」
ヌル「え!? 考えがあるんだな?
わかった! 任せる!
風属性魔法・スーパーローテーション!」
ヌルは風速100を超える強さの風で、
クルムに極楽鳥をパスする。
クルム「レイカちゃんのアレ、なんだったかしら。
風の攻撃は倍返しけ。」
クルムは卓球のラケットのように扇を構えた。
風で風を捕まえる感覚。
風を意のままに操る感覚。
クルムはイメージを魔力に反映させる。
スマッシュを決めるように風の魔法を放つ。
クルム「火の鳥圧縮風炎魔法・飛燕
てとこかしらね。」
極楽鳥が小鳥ほどの大きさになり、
更に高温となって色が赤から青へと変わる。
超スピードの飛燕が金竜に襲いかかる
金竜は勢いよく風ブレスを吐き出し、
尚且つ体を捩り、ギリギリで飛燕を躱す。
しかし金竜の体に火が付き、延焼をはじめる。
慌てた金竜が火を消す行動に出る。
ヌル「アレも避けるのかよ!!」
クルム「そんな逃げないでよ。
追いかけたくなっちゃうじゃないの。
素直に貰っておきなさいよ。」
クルムがくるりと左回りのターンを決め、
舞うように手首のスナップを効かせ、扇を翻す。
金竜の横スレスレを掠めた飛燕が
突如急旋回し、金竜に命中。爆発炎上した。
黒焦げの金竜が地面に叩きつけられた。
クルム「飛燕【燕返し】
名前付けるなら、こんなとこかしらね。」
クルムは口元を隠すように扇を構え
不敵な笑みを浮かべた。




