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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第三章 世界探訪
57/138

57 アンタが最強だったのは、アタシたちと遭わなかったからじゃんね☆

57 アンタが最強だったのは、アタシたちと遭わなかったからじゃんね☆



 燃え上がり走るレスベラの足下に、

炎の鳥が現れ、レスベラを乗せて飛び上がる。


アカマル「加勢する。」


 鳳凰に乗ったレスベラは、

鳳凰をミヅハノメに纏わせ、

アマツミカボシに斬りかかる。


レスベラ「酒乱一刀流【焼け裂け・ヤケザケ】」


 斬られたアマツミカボシが、炎に包まれ倒れた。



「やった!やったぞおおあ!」

「わあああああああああ!」


 スカディ達が歓声を上げる。


 レスベラが、フレームアイとゴリアシと

ハイタッチしている。


 炎に包まれたアマツミカボシが立ち上がった。


「ホアアアアアアアアアアア」


こまちゅが頬杖をつき、溜息をつく。


こまちゅ「はぁ。


     おとなしく死んだフリでも

     しておればよいものを。」


レイカ「ヤル気で溜めてたクセに。


    強すぎて、溶けない氷で封じるしか無い?

    違うよね。


    アイツが最強でいられたのは、

    アタシらと遭わなかっただけじゃんね☆」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーこまちゅの回想ーー


 こまちゅが子供だった頃の記憶。

 大規模なアマツミカボシ討伐作戦から帰還した

こまちゅの母親〈アン〉が、白い仔犬を連れて帰ってきた。


こまちゅ「母様、この犬は何?」


アン「新しい家族よ。私の親友の氷狼の息子。

   名前は"ゼット"よ。仲良くしてね。」


こまちゅ「私は、こまちゅ。よろしく。」


 こまちゅは握手をしようと手を出すも、

ゼットは応じない。

 ゼットは母親を失ったショックで

塞ぎ込んでいた。


 ゼットの母親はアマツミカボシを封じるため、

その命と引き換えに、溶けない魔法の氷で

相手を封じる、氷狼族の"禁断の秘術"を使い、

命を落とした。

 残された我が子を、アンに託したらしい。


 こまちゅは、そんなゼットを不憫に思ったのか、

姉のようにゼットの面倒を見た。


 並んで食事をし、一緒に風呂に入り、

一緒に寝た。

 時には絵本を読み聞かせ、文字などを教えた。


 ゼットは次第に、こまちゅに心を開いていく。

 やがて外で一緒に遊ぶようになり、

同じ集落や隣の集落の同世代の子供である、

レイカ、アローヒ、ヘンゼルなどとも

交流を深める。(アカマルは少し歳上である。)


 やがてゼットは、自分だけ姿が違うことに

悩むようになる。

 姉のように親身に接してくれる、

こまちゅが時間経過とともに成長し、

どんどん美しくなる。

 やがてゼットは、こまちゅを姉ではなく、

1人の女性として見るようになる。

 ゼットは、こまちゅに恋心を抱く。


 ゼットは"自分もエルフになりたい"と、

こまちゅに打ち明ける。

 これを聞いた、こまちゅが色々な文献を紐解き、幻獣をヒトにする方法を模索する。

 その結果、魔獣を拘束する

魔法具『グレイプニル』を改造するという

手法を思いつき、実行する。

 その結果ゼットを人型にすることに成功したが、その見た目は、エルフというよりは獣人寄りで、

ゼットは氷狼としての能力の大半を

封じられてしまった。

 それでもゼットは、幸せだった。

 今までよりも、よりヒトに近い

コミュニケーションが取れるようになったためだ。


 こまちゅは、ゼットの左手首に嵌められた

腕輪型の魔法具グレイプニルに、

5個の薔薇の花飾りを施した。


 そして、こまちゅ自身は自分の左手首に

5輪の薔薇の花飾りが付いた荊のアクセサリーを

身に付けた。


 ただ、その5輪の薔薇の花言葉の意味を、

こまちゅからゼットに伝えられる事はなかった。

 こまちゅの心の中だけに秘められた

秘密であった。



5個の薔薇の花言葉は、


【あなたと出逢えてよかった】。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 こまちゅは、首に巻いていた蛇皮のストールを

外し握りしめ、魔力を込めた。


こまちゅ「『蛇比礼・おろちのひれ』+荊魔法

     【金鞭】」


 こまちゅが着ている薔薇ドレスの裾が伸び、

荊のツタが編み込まれ、

それに蛇比礼が伸びながら巻きつく。

 巨大な二対の大蛇が作られた。


 その大きさは、アマツミカボシに匹敵する

大きさであった。

 それが二体。

 三体の竜が乱闘する怪獣映画のような

構図になった。

 その大蛇は、全身荊の棘だらけであった。


 転がり炎を消し、

逃げ出そうとするアマツミカボシを、

謎の光が縛る。


アローヒ「こまちゅ、捕まえといたよ。」


 アローヒが、魔法具"パンドーラーの匣"を

操作し、アマツミカボシを拘束する。


挿絵(By みてみん)


 解き放たれた二対の大蛇が

アマツミカボシに噛みつき、

絡みつき、縛り上げる。


 アマツミカボシが絶叫する。


「ホア…ホロロ…ホアアアアアアアア」


 ギリギリと雑巾を絞るように、締め上げられる

アマツミカボシから、血が噴出する。


 呆然と見上げる、レスベラとフレゴリの3人。

 3人の顔に、飛び散るアマツミカボシの血が

付き、垂れた。


 強靭なメンタルを誇るレスベラの顔が青ざめ、

ガタガタと肩を震わせていた。


 キン●マが無いフレゴリであったが、

キン●マがキュッとするような感覚を覚えた。


 締められながら、ゴリゴリとトゲで削られ、

後に残ったのはイチゴジャムとトマトジュース

のような物体のみであった。

 ヌルはスキル『ショックフリーザー』

を手に入れた。


 その光景を見たスカディ達は、

深く反省したという。


 魔王より恐ろしい者を敵に回してしまった

ということを。

スカディの伝承に新たに加わったのは、

"エルフ族と争ってはいけない“

というものであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 スカディの長『ほえほえ』が、レイカと

こまちゅに謝罪をした。


 そして今回の顛末を話した。


 魔王軍の使者が来て、氷の大陸に来たエルフと

戦うよう強制されたこと。

 従わない場合、アマツミカボシを封印から

解き放つこと。

 魔王軍に協力するなら、様々な資源を

融通してもらえる。

 というような内容であった。

 そこから推測されたのは、飛蝗でエルフ国に

大打撃を与え、氷の大陸の種子保管庫に

エルフの精鋭を誘導し、スカディとアマツミカボシを利用しエルフの精鋭を抹殺する。

 という魔王軍の策略であっただろうという

結論に至った。


 今回の反省を踏まえて、スカディ達もエルフと

共に魔王軍と戦うことを誓った。


 ヌルは、スカディ達が資源が乏しい土地で厳しい暮らしをしている事を聞いて考えた。


 ヌルは提案した。


 資源が乏しいなら、素材を仕入れ、

加工して売るのはどうか?という提案だ。


 ヌルは、アローヒの荷物から牛乳とハチミツを

取り出し、うまーるの協力のもと、

海鳥の卵を入手した。

 ヌルは3つの素材と氷の魔法を使い、

アイスクリームを作り、皆に試食させた。


レイカ「ヤバッ!旨っ!なにコレ!?」


 高級ハチミツを食べ慣れ、舌の肥えたレイカが

アイスクリームを絶賛する。


レスベラ「旨いなコレ!

     けど、ここだと少し寒いゾ。」


 レスベラは寒そうに震える。


 うまーるは、寒さに震えながらも

目を丸くしている。

 よほど美味しかったようだ。


 クールなクルムが、いつまでもスプーンを

舐めている。

 よほど気に入ったようだ。


 アローヒは満面の笑顔。

 普段、感情を表に出さない、

こまちゅでさえ目を丸くしている。


ヌル「どうですか。

   エルフとスカディが協力すれば、

   このアイスクリームを量産できますよ。


   生クリームというものがあれば、

   もっと美味しくなるんですけどね。」


 ヌルは、白エルフの森にたくさんの

"サトウカエデ"があった事を思い出した。

 サトウカエデは、その樹液を煮詰めると、メイプルシロップになる木である。

 ヌルは、こまちゅとアローヒにメイプルシロップの生産を提案した。


レイカ「やろうよ!

    コレ、世界中で大ヒットするよ!!」


 エルフとスカディが和解した。

 今後は協力してアイスクリームを製造すること

で合意した。


 ほえほえは涙を流し、感謝した。

 スカディ達は去っていった。


 10人は、当初の目的通り、

種子保管庫へ立ち入り、目的の種子を手に入れた。


 そして船へと戻り、エルフの国へと帰還する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帰りの車の中で、フレームアイとゴリアシが

ヌルに小声で話かけてきた。


フレームアイ「少年よ。セック●はしてるか?」


ヌル「いやあ、最近は全然。

   てか、嫁が死んでしまったので。」


フレームアイ「嫁!?既婚者だったか。」


ゴリアシ「でも少年よ、あんな可愛い3人の

     女の子を連れて、

     何も無いってことはないだろう?」


ヌル「いやあ。手は出せませんよ。

   3人とも男経験ないですし。

   俺は保護者だと

   自分に言い聞かせています。」


フレームアイ「若いのに真面目だなぁ。

       相手を好きにさせちまえば、

       悪い事じゃないんだぜ。」


ヌル「それでもやはり、

   素人の子だと悪い気がしますよ。」


ゴリアシ「お、お?お店の子なら

     罪悪感無いってか。わかる。わかるぞ!

     良い店教えてやるよ。」


ヌル「この世界にも、そういうお店が?」


フレームアイ「あるぞ〜。人魚の国にはな。

       あの国は自由奔放だから、

       規制ユルイんだよ。」


ゴリアシ「少年は、人魚の女を抱いた事は?」


ヌル「な、無いっす。」


ゴリアシ「プリティな人魚ちゃんと

     お遊びデキる、お店あるんだぜ。」


フレームアイ「人魚の国に立ち寄ったら、

       行くといいぜ。

       店の名は

       【パイオーツおぅふカリイヤアン】

       だ。」


ヌル「絶対行きます!

   ありがとうございます兄貴!」


ゴリアシ「いいってことよ、兄弟。」


フレームアイ「俺たちの名前は

       出さないでくれよ。」


 小声で話していた、ヌル達であったが、

聴覚が鋭いエルフとクルム、うまーるには

全て聴かれていた。


 帰ったあと、フレームアイとゴリアシは

レイカからコッテリ絞られたという。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ダークエルフの里が見えてきた。


 里の様子がおかしい。

 襲撃を受けている。


 10人が車から飛び出した。



 敵は、体長1メートルを超える

巨大なスズメバチの群れだ。


ヌル「なんだこの生物は!?キメラじゃない。」


 ヌルは鑑定魔法を使った。


ヌル(……強化改造生物。)


レイカ「戦え!!里を守れ!!」


 普段はユルユルなレイカが、

珍しく真剣な表情だ。


 フレームアイ、ゴリアシ、レスベラ、うまーるが

飛び出し、次々とスズメバチを薙ぎ倒す。


 アカマルとクルムは後方から援護射撃をする。


 こまちゅ、レイカ、アローヒは怪我人の手当てをしている。

 ヘンゼルも救助を手伝う。


 近接組を見ていると、敵が飛び回るのが

厄介なようだ。


ヌル(ならば。)


  「風属性魔法【レイノルズ】」


 ヌルが魔法を使うと、飛んでいた

スズメバチ達が一斉に落ちた。


 ヌルは魔法で空気の粘性を下げた。


 一昔前、クマバチが飛ぶのは航空力学上

ありえない、という話があった。

 現在は、流体力学上では可能となっている。


 ヌルはその流体力学を利用して、

巨大スズメバチの飛行能力を奪った。


ヌル「これでヤツラはもう、

   飛ぶことができません!」


「チッ!ジャックフロストの野郎、

 デカいクチ叩いておきながら、

 しくじりやがったな。」


スズメバチの群れの中から現れたのは、

見たまんま昆虫のキメラであった。


 その見た目は、まんま

"小学生が考えた最強の昆虫"

みたいな姿をしていた。


 頭にはカブトムシのツノ。

 大顎はクワガタのようだ。

 両腕はカマキリ。

 4本足のうち2本はバッタのような足。

 残る2本の足はヒト系の足。

 尾はサソリのような毒針付き。

 翅はトンボのようだ。


 体長は約2メートル。


 レスベラが斬りかかる。

 キメラはカマで受け止める。


レスベラ「いいカマだな。アタシと遊ぼうぜ。」


キメラ「舐めやがって。」


 キメラは、両手のカマと尾の高速連続攻撃で

レスベラを攻め立てる。


 攻撃を全て受けきるレスベラ。


 地上戦では、

エルフ軍がかなり優勢のようだった。

 エルフ軍は、順調にスズメバチの数を減らした。


エルフの兵士が大きな声を上げた。


「森が燃えてるぞ!」


 白エルフの国がある森が、

真っ黒な煙を上げている。大規模森林火災だ。


こまちゅ「おのれ…。」


 ヌルは、うまーるに声をかけた。


ヌル「うまーる!俺と一緒に、森に行こう!


   レスベラとクルムも、

   ここが落ち着いたら来てくれ!」


レイカ「アンタたち!ここは任せたよ!


    みんな乗りな!車で行くよ!」


 レイカ、こまちゅ、ヌルが車に乗り込む。


 うまーるは既に走って向かってしまった。

 もう、うまーるの姿は見えない。


レイカ「3人なら軽いね!

    スピードアゲて行くよー!!」


 ヌルは、イヤな予感がした。

 座席と自分の体をロープで縛った。


 車が急発進する。

 ヌルは背中に、とてつもないGを感じた。


 こまちゅの方を見ると、荊のツタを上手く使い、車椅子を固定していた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 一足早く、うまーるが白エルフの国へと着いた。

うまーるが目にした光景は驚くべきものだった。


 大量の倒れた、巨大シロアリ。

 その中に傷だらけのゼットが立っていた。


 女王アリのようなキメラが怒声をあげる。


女王アリ「たった1匹の犬コロ相手に情けない!

     大勢でかかれ!!」


ゼット「ここの加勢は不要だ。

    ヒマなら火をつけて回ってる奴を

    仕留めてくれ。」


うまーる「わかったんだよ。

     ゼットくん、気をつけてね。」


 うまーるは、帯電し、走り出した。

走りながら森の外周にいる火付け役を

次々と火雷で仕留める。


 それから少し遅れて、車の3人が到着した。


 その頃には、

ほぼ全てのシロアリが倒されていた。


 逃げ出そうとした女王アリのキメラが、

ゼットの一撃で倒れた。

 ヌルはスキル『築城S級』を手に入れた。


 疲労で倒れるゼット。


 レイカが駆けつけ抱き起こし、

回復魔法をかける。


 ヌルはシロアリの残党を狩った。


 こまちゅは辺りを見渡し焦燥する。


こまちゅ「この火の回りは…。


     皆の者、森から避難せよ。

     この火を消すのは不可能だ。」


 シロアリの残党を倒したヌルは、

万物創生魔法で水を創りだし、消火を試みるも、

とても追いつかない。


 敵を倒した、うまーるが戻ってきた。


うまーる「ヌルお兄ちゃん!どうしよう!

     森が燃えちゃうんだよ!」


ヌル「大雨でも降らない限り、

   もうダメかもしれない。」


 ゼットが起き上がった。


ゼット「俺が火を消す。

    氷狼になれば、きっとできる。」


 こまちゅが珍しく感情的になる。


こまちゅ「グレイプニルを壊したら、

     もう2度とヒトの姿に

     なれぬのだぞ!!」


ゼット「俺は、この森を守りたい。

    エルフの皆を守りたい。

    こまちゅにとって大切なモノは、

    俺にとっても大切なモノなんだ。


    そのためなら、いいよ。

    2度と戻れなくても。」


 ゼットは、左手の手首に装着した腕輪を

叩き壊した。


 冷凍庫を開けたときのように、

辺りに白い煙と冷気が漂い、少しヒンヤリした。


 白い煙が晴れると、そこには全身白い毛の

大きな狼の姿になったゼットが立っていた。











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