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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第三章 世界探訪
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47 真の聖女


47 真の聖女



 ヌルは鞘に納刀状態の剣の柄を握り、

深呼吸し、精神統一した。


 河童がガクガク震える脚にチカラを入れた時、

河童の首が地面に転がり落ちた。


 首の切断面からは、勢いよく血が噴き出す。


 河童の正面に立っていたハズのヌルが、

河童の後ろに立っていた。



ヌル「地属性魔法・『縮地』+

   居合道・『虎乱斬り』」




 ヌルが使った魔法『縮地』は、

文字通りの効果だった。


 砂浜の砂を動かし流砂のようにして、

河童を前に動かし、相対する自分も前に動かした。

 ヌルはさらに踏み込み前進することで、

更に加速し河童との距離を詰めた。

 相対速度に加え、カウンターになる形で、

納刀状態から高速の抜刀による一撃を

放ったのである。


 それは離れて見ていた、

うまーるとレスベラにとっては

かなり異様な光景であった。


 ヌルはスキル『守備強化・特級』を

手に入れた。


 ヌルが河童を倒すと、

隠れて見ていた村人たちが、

遺体の元に駆け寄った。


「お父さん!お父さああああああん!!」


「うっ、うっ、なんで。」


 子供達は泣き叫ぶ。

 大人たちも、

むせび泣く者、あるいは、すすり泣く者と様々だ。

 村は悲しみに包まれた。


ヌル「俺たちが、もっと早く到着していたら、

   結果は変わったんだろうか。」


クルム「起きてしまった事は仕方ない。

    全ては救えないのよ。

    これからどうするのか、を考えましょう。

    私たちには、私たちの目的がある。」


レスベラ「とりあえず、埋葬を手伝おうぜ。」


うまーる「うん。」


  ゴスッ!!


クルムは、畳んだ扇でヌルの頭をどついた。


ヌル「痛っ!何するんだよ!?」


クルム「そういえば、さっきの私たちの音声、

    あれは何かしら?

    なんか、よからぬ願望がハミ出てない?」


ヌル(しまった!いつもの妄想が…)


  「ないない!きのせい!

   演技が下手くそでごめんよ!」


  (つーか、あの扇、見た目より、

  めちゃくちゃ重いじゃないか!

  金属製だもんな。

  軽く扱ってるように見えるが、

  クルムの運動能力もハンパねえな!)


クルム「あらそう。それならいいんだけど。

    オカズなら、

    レスベラを使ってあげなさい。

    アレも見られて喜ぶ変態だから。」


レスベラ「誰にでも見られたくはないぞ!!」


ヌル「まあ、まあ、ね?

   とりあえず、

   亡くなった人たちを弔おうよ、ね?」


 ヌルたちは、死者たちの埋葬を手伝った。


 フルチン状態のヌルを見た村人が、

ヌルに服を貸してくれた。

 村人から服を手渡されて初めて、

 ヌルは股間のモザイク処理が消えていたことを

知った。

 ヌルは、股間がモザイク処理されている事を前提で動いていた。

 つまり全開の変態だったのである。


 体が乾いた血だらけであったのは、

幸いだったかもしれない。

 全裸ペイントみたいな感じで、

すこしだけ全裸感が薄くなっていた。


 ヌルたちは先に、魔物達の遺体を処理した。

 河童が使っていた魔法具は、

もう戦闘には使えそうになく、

釣り竿として使う事にした。


 ヌルはキメラたちを解体した際、

素材として使えそうなモノを回収していた。

 ラッコの毛皮、イモガイの貝殻、

河童の甲羅と腹甲であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 死者たちの埋葬を終えると、

子供を連れた女性がヌルたちに話しかけてきた。


 30歳前後くらいの女性だ。

 服装は質素なものだ。

 疲れているのか、はたまた食が細いのか、

かなり痩せている。


 連れている子供は、

10歳に満たないくらいだろうか。

 身長1メートルくらいで、

こちらもかなり痩せている。

 村の建物を見る限り、

この村も相当貧しいようだ。


女性「魔物たちを倒してくださり、

   ありがとうございました。


   名を『ミサオ』と申します。

   こちらは、娘の『たこわさび』です。


   ほら、挨拶なさい。」


 ミサオは、娘に挨拶するよう促す。


たこわさび「こんにちわ。」


 子供はうつむき

小さな声を絞り出し、挨拶した。


クルム「こんにちは。」


 クルムは、子供と目線が同じ高さになるよう

しゃがみ、微笑みながら子供に話しかけ、

そして子供を抱きしめた。


 小さな子供からしたら、

あまりにも凄惨で衝撃的な事件であった。

 その心の傷は、相当深いものであっただろう。

 クルムの不思議な魔力が、子供を優しく包んだ。


 たこわさびが、突然泣き出した。


たこわさび「ああああああああん!!

      おじいちゃん!おじいちゃんが!!

      ああああああああん!!」


クルム「もう我慢しなくていいのよ。

    偉かったわね。

    悲しい時は、思いっきり泣きなさい。


    でも、

    いつまでも泣いてばかりいてはダメよ。

    あなたのおじいちゃん、

    お空の上から見てるからね。

    おじいちゃんが安心できるように、

    毎日ちゃんと、

    あなたの元気な顔も

    上を向いて見せてあげるのよ。」


たこわさび「うん。わかった。

      ああああああああん!!」


 うまーるとレスベラが、もらい泣きをする。


うまレス「うわああああああああん!」


ヌル(クルム…。

  やっぱり、マジもんの聖女なんだなぁ。

  すげえ癒しのチカラだ。


  暗器を振り回し、毒のような言葉を吐く、

  普段の姿とのギャップがハンパねえよ。)


 ミサオが土下座をし、話し始めた。


ミサオ「この度は、村を救っていただき、

    誠にありがとうございました。


    私の夫の父親は、この村の村長でした。

    夫は不在で、村長は亡くなりました。

    私が村長代理として

    英雄様を、おもてなしいたします。


    よかったら、家に来てください。

    たいした、おもてなしは出来ませんが。」


ヌル「ミサオさん、顔をあげてください。

   御礼なんて、いいんですよ。

   ヤツラは、俺達の仇敵でもあるんです。


   それでは、

   お言葉に甘えさせていただきますね。」


 ヌルはミサオの手を取り、立ち上がらせた。


 レスベラは、たこわさびを肩車している。

 たこわさびは、笑顔になっていた。


レスベラ「悲しいときはな、

     楽しい歌をうたうんだぞ!!


     アマゾンのケツ〜♪

     うしろからぶちこんでOK〜♪

     さかさによんだら〜♪

     このザマァ〜♪」


ヌル(うおっ!?また変な歌うたっとる!!)


ずんだ「ポポーポポポーケ〜♪」


 謎の歌をレスベラと一緒に歌う、ずんだ。

 何故か、うまーるも楽しそうだ。


 ヌルたちは、村長の家へと向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヌル達は、村長の家へ通された。


ヌル「この村で何があったのか、

   わかる範囲でいいので、教えてください。」


 ミサオは語り出した。


ミサオ「突然でした。

    ヤツラは、ヌル様たちが来られる直前、

    いきなり海から現れたそうです。


    その場にいた漁師たちを殺害し、

    村の者全てを浜辺へと集め

    皆の見ている前で

    村長は殺害されました。」


ヌル「この子の目の前でやったのか。」


 たこわさびは、泣き疲れたのか、眠っていた。


クルム「酷いわね。

    魔王は人間を殺さず、

    奴隷にするイメージだったけど、

    方針転換したのかしら。」


レスベラ「全面戦争だな。」


 うまーるは、元気なく、うつむいている。


ヌル「あの亀は、人語を話しました。

   何か言ってませんでしたか?」


ミサオ「竜首宝珠を差し出せと、言ってました。

    村長は、そんな物は無いと言ったところ、

    殺されました。

    村人全員で海賊船のあたりを探せ、

    とも言ってました。」


ヌル(やはり、ここに竜首宝珠が。)


  「海賊船に、その宝が隠されていると?」


ミサオ「いえ、無いと思います。

    先祖である、海賊の宝だったのかも

    しれませんが、そんな物は村には

    ありません。


    ましてや、たくさんのトレジャーハンター

    が探索し尽くした、あの船に

    残されているとも思えません。」


ヌル「たくさんのトレジャーハンターたちは、

   何を元に海賊船の探索をしたのでしょうか?

   なにか、伝承のようなものがあるのでは?」


ミサオ「竜が火を吹くとき

    見つめる先の宝箱の下

    失われた竜の首の珠が眠る。


    という伝承があります。 」


ヌル「なるほど。

   そんな明確なヒントがあるのなら、

   もう残されてないでしょうね。


   一応、俺たちも現場を見に行こうか。」


クルム「海の中に入りたくないんだけど。」


レスベラ「宝探しか!いいね!」


うまーる「わたしなら、海の中に潜れるんだよ。」


ヌル「海の中は探さないさ。たぶん無いよ。

   竜岩の方に、もう一度行ってみよう。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヌルたちは外に出て、竜岩のところまで歩いた。


ヌル「太陽の位置の関係で、

   竜岩の口と太陽が重なるところは

   見れないけど、竜岩の目の穴から

   覗ける範囲で見えるのは、

   やはり海賊船だけだな。


   この竜岩も、伝承のために造られた

   彫刻なんだろうな。


   しかし、ひっかかる。

   隠したい物を、こんな目立つ目印に

   わかり易過ぎるヒント。


   あやしくないか?」


クルム「よほどのおバカか、誰かさんみたいに、

    玉を見せびらかしたい欲求

    でもあるのかしらね。」


レスベラ「ヌルは妻子持ちだからなぁ。

     私は嫌いじゃないぜ。

     最初は驚いたけどなっ!」


うまーる「ヌルお兄ちゃん、

     いつも、事故なんだよね?」


ヌル「あ、当たり前じゃないか!事故だよ!」


 ヌルは何故か、オドオドしている。

 事故なのには違いない。

 しかし背徳感の裏に、新しい感情が芽生え

始めているのもまた、事実であった。


ヌル「気を取り直して、

   なにか他にないかな?」


 ヌルは周りを見渡した。

 村の高台に、大きな貝殻のオブジェがある。

 巨大なシャコ貝の貝殻だ。


 他には、はるか沖合いに、

ポツンと岩が立っているのが見える。

孤島だろうか。


ヌル「とりあえず、村に帰ろう。

   あの貝のオブジェを、

   近くで見てみたいな。」


 4人は村に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ヌル達は村へ戻ると、

貝のオブジェがある高台の真下にやってきた。

 そこは、貝塚であった。


ヌル「この村の人たちは、

   代々海の幸を食べてきた事がわかるね。

   でも妙だな。


   昨日、俺たちは海で食材探しをしたけど、

   こんな貝類いなかったよな?」


うまーる「うん。いないんだよ。」


ヌル「やはり、磯焼けは最近の問題か。

   草食の貝類は、海藻が無くなり

   繁殖できなくなったところに、

   食用にされていなくなったんだろう。


   そして、ウニだけが残された。


   ミサオさんに話を訊いてみよう。」


 ヌル達は、村長の家に戻った。


ヌル「ミサオさん、

   この村の食糧事情はどうなってますか?


   外の貝塚を見た限り、

   海の幸が豊富な村なのかな?と。」


ミサオ「以前は浅瀬にも、

    貝や甲殻類がたくさんいました。

    しかし、海藻が無くなり、

    それらの生き物は姿を消しました。


    そして最近は、不漁続きなのです。

    かなり沖の方まで行かないと、

    魚が獲れなくなっています。

    私の夫をはじめ、

    優秀な漁師たちは今朝早く漁に出ました。


    そして、あのバケモノ達が

    海からやってきました。

    もう、戻ってきてもおかしくない

    時間ですが、夫たちは帰ってきません。


    もしかすると…




    ヌル様方、すみません。

    今夜はお食事を

    ご用意できそうにありません。


ヌル「いえいえ、そんな気を使わないでください!

   自分達でなんとかしますから!


   みんな!食い物探しに行こうぜ!」


レスベラ「しゃあ!

     デカいマンタ釣ってやるぜ!!」


うまーる「なんとしても、みつけるんだよ!!」


 クルムは、ダルい。といった顔をしている。



 4人が浜辺に行くと、

砂浜にアオウミガメがいた。

 アオウミガメは弱っていた。

 エサの海藻が無く、飢えているようだ。


ヌル「コレいくかぁ。」


レスベラ「コレ食えるんか?」


うまーる「星舞では、

     亀さん食べなかったんだよ。」


ヌル「アオウミガメを食べる地域は、

   俺の故郷にあるんだ。

   少ないけどね。」


   ヌルは検索魔法で、

   アオウミガメの調理法を調べた。


 ヌルたちは、

アオウミガメを村長の家に持ち帰った。


ヌル「ミサオさん!亀を捕まえました!

   調理場を貸してください!!」


 ミサオは、アオウミガメを見て驚いている。


ミサオ「ヌル様、この竜宮村には、

    亀を大切にしなさい

    という教えがあります。


    どんなに飢えても、

    それを私たちが食べるわけには

    いかないのです。


    しかし、余所者であるヌル様たちに、

    この村のルールを無理強いするわけには、

    いきません。


    調理場は、どうぞお使い下さい。」


ヌル「そうでしたか!

   それは、すみませんでした。

   この亀を放流して、

   別の食材探してきます!」


   ヌル達は海へ戻った。


レスベラ「マジメだなぁ。

     ああ、腹減ったなぁ。」


ヌル「この亀が泳いで海に帰れなかったら、

   俺たちで食べよう。」


レスベラ「まじか!?いいのかよ?」


クルム「賢明ね。

    どうせ死んでしまうなら、

    有効活用するべきだわ。」


ヌル「そうだ。俺たちには大事な使命がある。

   食べていかなきゃいけないんだ。」


 アオウミガメは、

もはや自力で泳ぐ元気が無かった。


ヌルたちは、亀に感謝をして、亀をいただいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 暗くなり、4人は村長の家に戻った。


 ヌルたちは、

海で新たな食材を手に入れる事ができなかった。


 ヌルは昨日クルムが採ってきた、

まだ青いバナナをミサオに手渡した。


 ミサオは深く頭を下げ、バナナを

たこわさびに与えた。


 たこわさびは、すごい勢いで、

まだ甘くない、種がゴツゴツしたバナナを食べた。

 よほど空腹だったようである。


 ヌルは気になっていたもの2つを、

ミサオに訊いてみた。


ヌル「この村の高台にある、

   大きな貝殻のオブジェ。

   あれは何なのですか?」


ミサオ「私も、よくわからないのですが

    昔からある、

    この村の象徴みたいなものです。」


ヌル「なるほど。

   沖の方に大きな岩が立っているのですが、

   あの孤島には何かありますか?」


ミサオ「『ぼっち岩』のことですね。

    あそこは、本当に何もない島ですよ。

    島というか、岩です。


    周辺の波も高く、漁師も近寄りません。

    事故が多いらしく、昔から

    近寄ってはいけないと、言われています。


    干潮時じゃないと、

    近寄るのも難しいようです。」


ヌル「それだ!

   近寄るな!そういう伝承には、

   なにかあるんだよ。


   もちろん、本当に危険なのも事実だけど。


   明日、あの島に行ってみよう!


   ミサオさん、

   船を貸してくれる方に

   心当たりありませんか?」


ミサオ「わかりました。危険だとは思いますが、

    ヌル様方ならきっと大丈夫でしょう。

    今夜は、ゆっくり休んで下さい。」


ヌル(海賊が本当に隠したかった、

  十至珍宝『竜首宝珠』。

  俺の予感が当たってるなら、

  まだ残されてるかもしれない!)


 ヌルは、昼間に回収したキメラの素材を使い、

鎧のような服の製作に取り掛かった。


 夜が更けていく。



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