痕跡。
「あ」
瑠奈さんは、家を飛び出した。
大荷物を背負って。
そして見つける。
紫子さんの
──痕跡。
「……」
薄紫色のショールが、道の真ん中に落ちている。
出てすぐ、事件は起きたのね──!?
さすがは紫子さん。
瑠奈さんは、慌ててショールを拾った。
ショールはまだ、あたたか……いわけがない。冷たかった。
瑠奈さんは心配になって、ショールを抱きしめる。
優しい紫子さんの匂いがした。
泣きそうになっていると、何が飛んで来た。
瑠奈さんは、ぼんやりとソレを見る。
ソレは、白くてふわふわで、
春のあたたかい日差しの中を、ぷわぷわ、ぷわぷわ飛んでゆく。
「……」
紫子さんみたい……。
瑠奈さんはソレを見送った。
そしてぶるぶると頭を振る。
早く紫子さんを見つけなくっちゃ……!
「……!」
そこで瑠奈さんは、ハッとする。
もしかして! そしかしたら!!
探しているのは紫子さん。
紫子さんは、何を考えているか分からない。
だから、きっと──!
瑠奈さんは、ソレを追いかけた。
白くてふわふわで、柔らかそうな、
ケサランパサラン──!!
きっとアイツについてった!
紫子さんな、らやりかねない。
幸せを呼ぶ、ケサランパサラン。
その、正体は……。
それは不思議な力を持つ妖怪なのですって。
だから誰にも捕まらない。
こっそりソレを捕まえて、
箱に閉じ込めて、飼うのですって。
白粉を食べて大きくなるらしい。
ちなみに『ケサランパサラン』
日本語らしい。
瑠奈さんは、初めてそれを知りました。
× × × つづく× × ×