其の12 ワガママな王様と季節の女王
其の12 ワガママな王様と季節の女王
最初の王様から数えて四代目の王様の時に 季節の女王達と 王家との間に溝が生まれてしまうできごとが起きました・・・
それは この島を支配しているのは王様なのか それとも 季節の女王達なのかと 島の人達が言い始めたことが始まりでした
どうしてそんな話が この島の人達から沸き起こったのかといえば
それは この四代目の王様がとても怠け者で それでいてワガママだったからなのでした
ある時 この王様は「夏が暑すぎる! 誰か四季の塔に上って 夏の女王にもう少し涼しくする様にさせるのだ!!」と家来たちに命令したのでした
しかし家来たちは「この王家の最初の王様の他には 誰一人として あの塔に入れた者はいないのです 私達に入れるわけがございません」と言って 王様にひざまづいて許してもらおうとしたのでした
それでも王様は「ええい!うるさい! それならば私が出向いて 夏の女王に命令してやる!!」と息巻いて 真夏の暑い最中に 家来に担がせた担櫓に乗って四季の塔へと向かったのでした
お城を出発してから七日をかけて 王様が四季の塔にたどり着いた時には 家来達はヘトヘトになっていました
それは ただ櫓に座って 悠々とここにたどり着いたはずの王様でさえも そうなのでしたが 家来達が見ていたので王様は平気なフリをしていました
家来達は 四季の塔に向かう途中で野宿している時に 王様に聞こえない小さな声で噂してました
「夏の女王に会って・・・夏を涼しくしろ! だなんて そんなメチャクチャなことができるのだろうか?」
「そもそも 四季の塔の扉は 季節の女王達しか開けないのじゃないか?・・・夏の女王に会うなんて 誰もできっこないですぞ!」
「いやしかし 王様は王家の血を引いておられるのだ もしかしたら塔の扉を開けるのかもしれないぞ」
「いやいや! 言い伝えでは 最初の王様が扉を開いたのでは無いぞ」
「そうだ・・・ 王様をご案内した見知らぬ男が 不思議な言葉を扉に投げ掛けると 扉がそれに応え 扉が開いたと聞きましたぞ」
その言葉に 家来一同は「うむむむ~・・・」と唸って 黙り込んでしまったのでした
そうして 誰も四季の塔の中に入ることができるのか解らないまま 旅を続けたのでしたが
王様は 四季の塔に近づいて行くほどに 心の中では後悔し始めていました
それは今さらでしたが 四季の塔の扉を開けるには どうしたら良いか解らなかったからなのでした
「はて・・・困ったぞ・・・」王様は 家来達の手前 小さな声で独り言を漏らしました
「四季の塔の扉は 季節の女王にしか開けられないのだったか・・・」
しかし王様は ここに来ることを止めようとしていた家来達に鞭打つようにして 無理矢理ここまで来てしまっていたので 今さら扉を開ける方法を知らないとは 言えなくなってしまっていたのでした
(ええい! 私はこの島の! この四季の島の王なのだ!! 夏の女王が私の言うことをきくのは当然なのだ!!)
王様は 心の中でそう思い なんとしても 夏の女王を自分に従わせようと考えていたのでした・・・
そしてついに 今こそ その時が来たのでした
王様は家来達を連れて 四季の塔の下にたどり着いたのです
王様は最初に 家来の何人かに扉を開けるように言いました
そう言われた家来達は とても驚きましたが 王様の命令だったので断ることができないと思い 塔の扉に手を掛けました
そして 取っ手をつかんで 思いっきり引いたり 押したりもしてみましたが 扉はビクともしませんでした
それを見ていた王様は 今度は扉の取っ手にロープを括り付けさせて 家来全員に引っ張らせました
それでも 結果は同じでした
次に 近くにあった木を切り倒して 大きな丸太ん棒をこしらえて それを何本ものロープで縛って持ち手を作り 30人の家来に持ち上げさせました
家来達は呼吸を合わせて 丸太ん棒を前後に大きく振り始め 勢いをつけて扉を打ち壊そうとしました
そして一斉に「そーれ!」と声を合わせて 振った丸太ん棒を扉に向かってドーン!っと打ち付けました
すると 丸太ん棒が扉に打ち付けられた瞬間 バーン!っと弾かれて 30人の家来達は ロープの持ち手をつかんだまま 一斉にもんどり打って倒れてしまったのでした
「魔法じかけの扉だ・・・」
その光景を見ていた家来の一人が 驚きのあまり そう呟きました
すると ほかの家来達も口々に言い始めました
「やっぱり 神様が建てられた 神様の塔なんだ・・・」
「この島を支配しているのは 神様の使いである季節の女王達なのだ!」
「なんと 畏れ多いことをしてしまったのだ・・・」
「もうだめだ! 呪われてしまう・・・」
すると 家来達はいっせいに腰が抜けたようになってしまい 四季の塔の近くから逃げ出そうとし始めました
「ええい!黙らぬか!!」
声を張り上げたのは 王様でした
「もう良い!お前達は下がれ!! 私が扉を開ける!」
そう言って王様は 下がる家来達と入れ替わるようにして 四季の塔の扉の前に立ちました
しかし 鼻息荒く扉の前に立ってはみたものの 全く扉を開ける方法は解りません
それでも こうなっては自分がなんとかするしかないと 王様は思ったのです
そこで王様は 取り敢えず両手を扉に当ててみました
王様のその姿に 家来達は王様が扉を開けるのではと思い 固唾を呑んで見ました
しかし 扉はいっこうに開きません
次に王様は 扉に向かって命令しました
「私は この四季の島の王である! 扉よ開け!!」
その声が辺りに響き渡った後も 扉はピクリともしないまま 辺りの鳥のさえずりが聞こえるばかりでした
この時になって王様は 冷や汗をかき始めました・・・
辺りに散り散りになって見ていた家来達は ザワザワとし始めました
それは(やっぱり 王様は扉の開け方を知らないのだ・・・)と 思い始めたからでした
王様は 扉が開かないことに段々と腹が立ってきたのでした
「忌々しい扉め! 四季の塔め! 夏の女王め!!」と 独り罵りました
さらには夏の女王に大声で命令しようと思い 四季の塔を見上げました
しかし 塔はとっても高く 王様の声が塔のテッペンまでは届きそうもありませんでした
王様は しばらくの間 四季の塔のテッペンを苦々しく見上げていましたが
「夏の女王よ!! 私の命令を聞けないのなら もうお前達の世話は誰にもさせないぞ!!」と 怒鳴りました
それでも 塔は静かなままで 夏の女王からの返事はありませんでした
王様は塔を見上げて さらに罵りました
「魔法じかけの扉など付けおって!! 魔女め!! 忌々しい 魔女めが!!」
怒りに任せてそう言った時 王様は突然 ひらめいたのでした
それは 自分をこんな目に合わせた季節の女王達に 仕返しをする方法だったのです
王様は たった今 思い付いたことを 家来達に向かって大声で言い始めました
「良いか者共!! 私の言葉を聞くが良い!・・・実は季節の女王は 魔女なのだ! あの者達は季節を支配しているのではない 季節を支配しているフリをしているのだ! そうだ 季節の女王達は 季節の変わり目に四季の塔に向かい 入れ替わり・・・ ちょうどその時に季節が移り変わったように 見せかけていたのだ!!」
家来達は 顔を見合わせ 王様の言っていることが 本当なのだろうかと思いました
すると 王様はさらに付け加えて
「この話は 先代の王 私の父から聞いたことである! 先代もまた その父 私の祖父から聞いたと言っていたことなのだ!!」
その言葉に 家来達は驚きました
「先代のお言葉とは・・・・」
「先々代のお言葉とは・・・」
「ならば 初代の王の時代からなのか・・・?」
「しかし 魔女とは・・・そんなことが?」
「いや 魔女なら 扉に魔法を掛けることもできるだろう」
「だが 冬の女王と四季の塔に向かって旅をしたことがあるが 女王の周りは冷たい空気が漂っていた・・・」
「そうだ 確かに冬の女王の周りには 光かる雪のようなものまでチラチラと舞っていたぞ」
「ほかの季節の女王達にも 同じ様な話がある・・・」
「ああ・・・春の女王の周りは暖かく 夏の女王の周りは暑いし 秋の女王の周りは涼しい風が吹いてくるとか・・・」
「それこそが 魔女の魔法なのでは?」
「いやしかし・・・・」
家来達がそんな風に言い合っているのを見ていた王様は これで自分は恥ずかしい思いをしないで済むし 皆んなが季節の女王よりも 自分がこの島を治めていると思うだろうと 安心しました
王様の話を聞いた家来達は 季節の女王達が本当に季節を変えているのか解らなくなってしまったのでした・・・
こうして塔にまでやって来た王様と家来達は 結局は四季の塔に入ることも 夏の女王に会うことも無く
もと来たお城まで戻って行ったのでした
それから 王様が出任せに季節の女王のことを言ったウソの話は 家来達の口から街の人々に広がって やがては島中の人々に広がってしまったのでした
それでも島の人々は そんな話を始めはあまり信じてはいませんでした
しかし 長い時間が経つに連れて 段々とそうなのかも知れないと思い始めるようになっていったのでした
そうして季節の女王達は 王家と縁遠くなっていくに連れて 島の人々との関わりも無くなっていったのでした・・・
そんな時でした この季節巡る四季の島に 終わらない冬がやって来たのは・・・




