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第1話 始まり1

 俺は池田白虎びゃっこ。姓の方には不満はない。問題は名前の方だ。小さいときは格好良くてお気に入りであり、三国志を大好きになったのも、この名が中国の方位神と知るゆえ、その歴史も身近に感じてというのも、多少はあったとは想う。ただ、徐々にではあるが、名前負けがあからさまになってくる。神どころか虎にさえなれない俺である。姓同様名前もありきたりで良かったのに。


 そんな俺であるが、大学一年の後期試験を終え、実家に帰省するとき、さすがに俺は認めざるを得なかった。大学生になったら、彼女ができる。その希望に支えられて、一年の浪人生活を耐えたのだが。しかし、そんなの幻想に過ぎないと。いや、正直言って、入学してひと月もすれば、大体、分かっていた。


 経済学部に通う俺。一応、女子は数人いるが、話すきっかけなどない。高校生のときの方がまだ話した。最低限必要であったからとしても。


 バイト先は工場やレストランの皿洗いなど、人と話す必要が少ないところを選んだ。そこに女子がいることもあるが、当然、自分から話しかけることなどできない。


 大学生なら合コンがあるだろう、正直俺も期待していたが、そもそもお誘いがない。なぜなら、ボッチだからだ。




 そして、ド田舎に住む俺。谷にかけられた橋にさしかかる。しかし、家に帰るのに吊り橋を渡らなければいけないなんて、そんなにいないよな。車道もあるんだけど、それだと、大きく迂回することになり、歩くには遠すぎる。


 フラフラ揺れる。谷底までかなり距離があり、恐いのは確かだけど、案外、落ちないものなんだよ。なんて想っていると、強風が俺の体をさらいかける。なんとか、態勢を立て直す。と想ったが、橋の片端が壊れる。こんなことってある。確かに人のみが渡る、古い、確か戦前の吊り橋だと聞いたけど。俺は落ちて死んだ。

 そして更に気付く。あれ。俺、死んだはずなのに、なんで意識があるんだ。これって、もしかして、異世界転生? とすると、これは、あれだ。女神様。しかも、とびっきり美人の。ああ。きっとあんな死に方をした俺を憐れんで、女神様が会ってくださるのだろう。俺の目標。一分でも長く女神様としゃべること。


 そして、遠くに白衣をまとった者が見える。腰まで垂れる髪も白い。きっと銀髪の美女だ。更に近づくと、


「じじいじゃねえか」


 俺の心の声が口をついて出た。


「失敬な。太上老君たじょうろうくんと呼びなさい」


「タ? タ? なに?」


「そなたの国では老子様の方が有名かな。そっちでも良いぞ」


「それなら、知っている。その老子様が何の用?」


「相変わらず失敬な奴だのう。用があるのは、そなたの方であろう」


 ムム。そうか。俺は考えた。女神様ではないからといって、不満たらたらではダメだ。別にじじいでもいいんだ。だって、このときだけだからな。それで、俺は念のために聞いてみる。当然、できるだけ丁寧に。


「これは、あれですか? 老子様。もしかし、俺……いえ、私の望む者に転生できるというアレですか?」


「そうじゃ。まさに、そなたの望むままだ」


(来た。来た。来ちゃー)


 まあ、多くの者は勇者とか賢者とかモフモフとか選ぶんだろうけど。俺は自らの願望をかなえるために、そこにまっすぐ向かうことにする。確かに勇者などに転生しても、そこに至れるかもしれない。でも、保証はない。人生、甘いものではないとは、前世で学んだ。何せ、俺はそれに恋い焦がれつつも、得られぬままに死んだ。


「オッパイだ」いや、オッパイそのものに転生したい訳ではない。まあ、話としては面白いかもしれないが、俺は楽しくない。そこで言い直す。「女だ。しかも飛び切りの美人で、とびきりスタイル良く」


「分かった。やり直しは効かぬゆえ、一応、確認するが、本当にそれで良いのか?」


「もちろんです。お願いします」


 俺は想わずこうべを垂れていた。まさに感謝感激である。ようやく、俺の望みがかなう。俺のオッパイ星人としての本願が。


 俺は目覚めた。どうやら、一端、意識を失っておったらしい。どっかの屋内だった。ただ、周囲を確認する前に、まずは胸。俺は両手でゆっくり、自分の胸をつかむ。布地越しとはいえ、分かる。男の胸ではない。ちゃんとオッパイがある。そして柔らかい。オオ。オオ? オオオ? なぜだろう。何の感動も無かった。そして気付く。俺はやらかしたらしい。俺は心まで男でなくなったらしい。


 おまけ 老子(太上老君):孔子や荘氏などと異なり、ここでの老は姓ではなく、尊称である。「おじいさま」いう感じであろうか。太(=大)も上も君も尊称であり、尊称の4連であったりする。本当の姓は李。これに基づき、唐朝の玄宗が老子を祖先とみなしたのは、そこそこ有名な話。

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