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サースルカサルの街

 魔物狩りの後始末は覚悟してたんだが、猟師だっただけのことはある。

 だが意外も意外、狩りでは戦力外かと思っていたスクトも、戸惑う様子もなく解体に入った。

 大物がいるのでメグ、クレアは残る。


 俺は荷車に山と積んだ肉皮牙などを、メアリを連れてサースルカサル城塞の商業ギルドへ運ぶことになった。

 荷は3回を数えた。


   ・   ・   ・


 スンダルシカの湿地は広い。

 カーナビの索敵によると街道から離れた場所にも、2箇所の赤い影が出ている。

 調査依頼から始まる狩りはまだ終わってないってことだ。


 季節は晩春から初夏。

 日中は暑いが夜は少し肌寒い。

 幌つき馬車は男達6人で寝るにはかなり狭い。


 俺たちの荷車には、側面にテントが張り出す仕掛けがある。

 長い砂漠の旅暮らしだったからなあ、それなりに必要なものは自然と整っていく。

 使う頻度はそうでもないが、無理にも必要な時ってのはあるもの。


 夜の野営、俺たちの中では魔物に一番博識なメグがこんな事を言うんだ。


「ナミノカズラは魔木の類(まぼくのたぐい)や。

 魔物の死骸を引き寄せとったんを見たやろ?

 ああやってようさん食うては増えるんや。

 けど、攻撃言うたらあの鞭を振り回すくらい、土の中におるよって普通の攻撃やら通らへんのんが厄介なんやで。

 けどほんまに厄介なんはなあ?

 ムシ魔物を呼ぶとか使う言われとるこっちゃ」


 ムシって聞くと俺はどうしてもクイツクシムシを思い出す。

 あれは物凄い数だった。何十、何百万といたんじゃないかな。

 そう思いながら聴いていた。


「いつぞやの鉱山に居ったイシモドキやらアオシモドキなんぞとはちゃうで。

 タケオは知っとるなあ、クイツクシムシや。

 ウチもこの頃調べたってなあ、ええように暴れさせとったらとんでもないんや。

 帝国が10年前に滅ぶとこやったんやで?」


「今回も出るのか?」


「どうやろなあ。帝国には百年に1度、アレが湧くらしいて。

 こないだから10年や、今回はないんちゃうやろか。

 古い本に書いたったもんやから、間違いないんやない?

 とにかくや。

 今のんはナミノカズラが中心になっとるようやから、こないな調子で狩って行ったらええねん」


「ドリック達も沖に出られる日は近いよ!」


「クレアの(あね)さん、勘弁してくだせえ」

 ドリックとアックスが揃って言うが、依頼も請けちまったし流れは変わらないな。


   ・   ・   ・


 他の2箇所も最初と同じように狩って行く。

 狩った数は初日より少なめの100前後だが、ドリック達の動きが良くなっている。


 半数以上は彼らが止めを刺し切ったくらい。

 親玉に当たるナミノカズラも数体づつ狩ることに成功した。


 それぞれに片付け含めて1日掛けたんだが、湿地での野営なんかできる物じゃないなあ!


 ジメジメは仕方ないとしても、歩く度に捏ねられた泥が軟らかく沈むんだ。

 ビッチョビチョのクッチャクチャってやつ。


 荷車で獲物を一旦街道まで運び出して、そこで解体することになってなあ。


 メグの話にあったムシ魔物は影もない。


 そして最後の荷と共に、サースルカサル城塞の商業ギルドへ戻って来た。


「調査依頼で行ったスンダルシカ湿地一帯の討伐が終わりました。

 魔石と剥ぎ取り素材は今入れた荷車で最後です」


「はい。ご苦労様でした。

 計数結果の証明書を取りまとめますので、少々お時間を頂きます」


 通常であれば魔物素材は冒険者ギルドでの換金一択だ。

 それを大量の素材持ち込みだから、ここの受付もホクホク顔、対応が丁寧なんだ。

 俺の見かけはほんの若造だってのに下へも置かない。

 まあ、後ろにはクレアが、護衛ですって感じでムッスリ立っているのもあると思うが。


 俺たちは、商業ギルドにも登録があるし、計数証明さえ出るなら実入はこっちの方がいい。


「じゃあ、調査依頼の方の終了報告をしに、冒険者ギルドへ行ってます。

 また戻ってきますので」


「それでしたら、計数が終わり次第そちらへお持ちします」


「ああ。それじゃ向こうで待っているよ」


 買取額は金貨4枚に迫る。

 これは調査報酬と討伐報酬を加えると6枚に近いな。

 6人の漁師どもにも幾らか回さんといかんか。

 2割の税金免除もここまでのようだしな。


 冒険者ギルド。

 子爵様発行の調査依頼はここで代行している。

 メグが今回の調査結果である遭遇箇所と、討伐範囲について報告した。


「討伐した素材は全て商業ギルドへ持ち込みました。

 計数証明は後ほどこちらへ届くと思います」


 あからさまに肩を落とす受付の男。

 受付に座らせておくのが惜しいようなガッチリ体型で、目配りに只者ではない感がある。


「分かりました。そちらが揃い次第清算しますのでホールでお待ち下さい」


 チラと後ろを振り返るメグが言った。

「通りの露店を回ってきます。

 後でまた寄りますので」


 ステス以下のチビ達と漁師組、何よりクレアが落ち着かない様子なんだよな。


「はい。では用意しておきます。

 行ってらっしゃい」


 ほう、いかつい割に口調が丁寧だな。


 そんな俺の感想などお構いもなく、クレアに腕を引っ張られて通りに出た。


 考えてみたら、総勢13名の屋台、露天巡りだ。

 取り敢えずドリックに小金貨6枚を預け、先に行かせる。


 こんな大人数に群がられては屋台も迷惑だろう。

 口には出せないが、ガラの悪いのとは別行動が良い。


 チビ達ならメアリの引率でまだ行儀が良い。

 欲しいと言う分はクレアがドンドン買い込んで、空いた席で食べさせる。

 ステスは別として、目が欲しいだけで年端もいかない子供だ、そうたくさん食えるわけもない。

 それをクレアが片端から胃袋に収めて行く。

 屋台、露店を3軒も回る頃、眠くなったチビ達をメグがタクシー(イブちゃん)の座席へ連れて行った。


 その間もクレアが止まらないんだからなあ、よく食うよ!

 あの細い体の何処に入るんだか。

 テレビでやってたフードファイターもかくやと言うところ。


「タケオ。

 ドリック達、なんや様子がおかしいで?」


 メグが俺の袖を引いて指差す。

 10数人の人集りの上に背の高いドリックとヌストの顔が見える。

 なんか制服っぽいのも見えるぞ。

 衛兵と揉めたりしてないよな?


「ちょっとすんまへん。ウチの(もん)が見えよったんで、通しとくんなはれ、すんまへんなあ」


 メグの先導で割って入るとドリック達の他に人相の悪いのが2人向かうように立ち、5人が石敷きの路面に転がっている。

 他に女性と子供が二人、少し離れて抱き合い震えている。

 メアリがそこへ駆け寄った。


 ケンカか?

 また派手にやったなあ。


「こっちの人たちは助けてくれたんです……」

 女性も怪我をしてるようで声がか細い。


 メアリが腰の物入れバッグから、ポーションを出している。

 やり取りは聞こえないが、飲ませながらコクコク頷くのは事情を聞いているのか。


「そっちの6人はウチの連れや。

 おまんら、なんぞ悪さでもしよったんか?」


 如何にも魔法職と言う濃紺の衣裳だ、この脅し衣裳でメグに凄まれると、誰でも一瞬怯む。

 これを着せて送り出した師匠と言う人はやはり偉大だな。


「そんなことしてませんぜ、メグの(あね)さん!」

 とアックス。


「俺ら、そこの女が絡まれてた……」

「そうですぜ、こいつらだって先に…」

「衛兵がなだれて来やがって……」

 そしたら続いて口々に言うものだから。


(やかま)しいわい!

 一人づつ喋らんかい、何がなんやら分からへんやん!」

 一方的に叱り付けられシュンとなる荒くれ風の6人だ。


 この光景を見せられては衛兵も、

「喧嘩騒ぎで駆け付けましたが、怪我人を挟んでの仲間割れかと。

 どうらやとんだ勘違いのようです」


 そこで突然ボカバキと手荒な打撃音。

 振り向くと短剣に手を掛けた笑顔のクレア、その視線の先に小さなカラダのステスとミトアに、腕を逆に決められ石敷き街路を舐めるように踠く悪党面が2人。


「こっそり逃げようとしてたー」

 とミトア。

「あんま動くと折れちゃうよ?」

 ステスが言い聞かせるように。


 ともかくも相手の7人はメグが提供したロープで縛られ、繋がれて番所まで連行されて行く。

 これもいつものことだが、官憲といえば事情聴取だ。


 一応俺がこの連中の責任者(村長)だからなあ……

 行かない訳にも…


「ウチは冒険者ギルドに行ってみるよって、タケオ、クレアと行ってあとの面倒見たりいな!」

 メグの止めが俺の胸を抉る。


 はあ……

 めんどくせえ……

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