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聖水の量産

人物紹介 (本編はこの下にあります)

 メアリ 11歳 少女 青い髪

 ステス  8歳 少年 茶の髪

 ミトア  8歳 少女 赤い髪

 ラトル  6歳 幼女 茶の髪


 クゼルという男に飼われていた

 街で捕まえられる犬猫ネズミの解体経験がある

「聖水の話、まとまったで?」

 あくびを噛み殺す風でメグが俺に言う。


「どうすることになったんだ?」


「アレは『聖水』言う(なあ)で売りに出すことにしたんや。

 ここはタケオの案やな。

 材料の銀魔法石混じりの岩は、鉱夫さんらあが掘ってここまで運んでくれよる。

 蒸留水はウチが担当や。

 売り値はキリのいいところ1本千ギルや。

 でな、問題の卸値や。

 この鉱山にも色々事情があるよってなあ、650ギルで押し切られてもうたわ」


 なんかメグがガックリしてる。

 多分商業ギルドでよく聞く3割ってのを、死守できなかったってことなんだろう。メグにも拘りがある。


「そんでもな?他の鉱山に直売りやら、商人との交渉はギグスクル鉱山の(なあ)で通す話や」


「じゃあ何?あたし達って作るだけでいいの?

 他は全部お任せってこと?」


「せやなあ、帳簿つけるくらいやろか?」


「それはまた…交渉頑張ったんだなあ」


 俺が言うと少し照れたようなメグの表情が新鮮だった。


 午後になるとトロッコで運ばれた銀魔法石混じりが、木箱に分けられたくさん届く。

 どれも片手で持てるくらいに破砕されて、それが大箱に3つだ。

 1箱50個くらいは入ってる。


 この箱一つで何本作れるんだ?

 一本は結構軽いから相当な数になるんじゃないかな。


 ここからはクレアの内職モードだ。

 いつぞや団扇(うちわ)にハマって大量に作り続けた。

 大雑把なようで実は凝り性ってことなんだろう。

 今回も楽しそうに小瓶を量産している。


 できた小瓶は箱詰めにしてステスがメグのところへ運んで行く。

 メアリは途中の数を確認していた。


 そのクレアの手が夕方近くにふと止まる。

 銀魔法石のカケラを持って何か考えているようだ。


「どうかしたのか?」


「うん、ちょと纏められないかなあって」


「纏める?」


「うん。このちっちゃい粒をさ、こう、ぎゅうっとね?

 集められたら純度だっけ?

 アレが上がるんじゃないかな……とか?」


「集めるったって岩の中の話だろ?

 粒だってすごく小さいのもあるし、できるのか、そんなこと?」


「うん、まあ。

 ほら、魔道具屋で魔銀を精製したでしょ?

 アレに近い感じで、できるんじゃないかって気がするんだよね」


「魔銀って銀色の針金輪っかのことか?

 精製ってのはどうだったか……覚えてねえな……」


「ああ!まあ、それは良いんだよ!

 ちょっとやってみるね!」


 うん?こいつ今なんか誤魔化した?

 なんて思ったのも一瞬。


 クレアの手の中で鉱物塊が色を変える。

 白い岩は灰色に変色し、銀の粒がいくつか集まったようでちょっと大きくなった?


「すぐはできないかあ!

 もう少しやり方を考えよう!」


 なんか元気そうだから良いや。

 俺はメグの様子を見に行くことにした。



 メグは退屈していた。

 気だるそうに杖に手を添え、ミトアが10個単位で並べる小瓶に、チャポンチャポンと小さな水塊を落としていく。

 それをラトルが溢さないように小箱に並べて詰める。


 けれどメグは大欠伸。

「ふあああ!

 退屈や、ウチ、失敗してもうたかなあ?」


「どうしたんだ、メグ」


「どないもこないもあらへん。

 ウチは退屈なんや。

 蒸留水なんぞウチに掛かればナンボでも作れるっちゅうねん。

 けどなあ?

 詰めるんは小瓶なんやで、ほんのちょびいっとしか入らへんねん。

 1回分()けんのにナンボかかるんやっちゅう話や。

 失敗したなあ、小瓶やのうてデカ瓶にするんやったなあ!」


 俺はそれを聞いて吹き出してしまった。


「なあに笑とんねん、タケオ」


「いや、聖水をデカ瓶でってさ。

 それどうやって撒くの?」


「そ……そら、そこはほら、こう……

 柄杓でも使(つこ)てやな……あ、あかんか。

 うーん、やっぱり小瓶に入れ換えてやな、チャチャーっとゴーストにかけるん……やで?」


 メグが一生懸命にやってることがよくわかる返事だった。

 悪ぶって見せることもあるけれど。


「でもデカ瓶か。

 どこかで纏めて詰め替えってのも良いかも」


「まあずデカ瓶はなんで作りよる?」


「そんなに大きいものじゃなくて良いんじゃない?

 20か30回分入れば十分でしょ?」


「それなら小そなるし、強度もそう要らへんか。

 あとはせやなあ、小瓶の栓はどないする?

 今はクレアが石を柔らこうしてとか、よう分からんこと言うてやっとるけど?」


「あれは他の人には無理だよ。

 なんか代わりになるものってあるかな、グニッと縮む感じの」


「グニッと縮む…ねえ。

 魔物の皮……は不純物だらけやなあ。

 水漏れもしそうやし。

 アレはどうやろか、カベヌリノカイ。

 あの殻引き潰して防水に壁に塗りよるやろ?

 アレの乾き始めがかなりのネットリなんや。あれを栓に塗ってやなあ、こうキュッとな?

 乾いてもうたら水漏れなんかせえへんで?」


「良さそうだけど聖水に混じらないか実験しないとダメだね。

 今度試してみようか?」


 こんな実のない会話でも退屈は紛れたらしく、メグはやる気を取り戻した様子だった。



 初回ロットの500本はあっという間に売り切った。

 ガンツさんは「この調子で売りまくって、資金貯めて鉱山を再開させてやる!」

 なんて息巻いていた。


 鉱石は鉱夫さん達によってどんどん運ばれてきて、商隊が来てテオドラ全土を目指し広がっていく。


 話によると、ゴーストってのは鉱山だけじゃなくあちこちに出るらしい。

 需要は結構あるんだ。

 上手く使って1本で3匹倒せばそう高いものでもないってことで、売れ行きは順調!


 そんなこんなで3日目の朝のこと。

「青い網が来てます」

 大体の6時間おきに索敵をチェックするメアリが言う。


「ほーう?

 またなんか来よるかなあ?」


 酷く好戦的な笑みを浮かべるのは退屈だとこぼしていたメグだ。


 オネシスでも3日の待機を1日で切り上げ、偵察と称してラテラへ向かったとメアリに聞いた。


 けれどまだ何が来たわけでもない。


「それよりメグ、今日も聖水よろしくね!」


 なんかテンションの上がることを、考えてやらないといけないかなあ?


 銀魔法石混じりの岩壁は、元々純度が低くなって諦めた場所だ。

 大体は鉱石が枯渇してしまい、目的の鉱物を全く含まない岩に変わっていく。


 小瓶の材料を採取する岩壁の3つ目まではその通りだった。

 だが4つ目、()しくもクレアが手をついて探った岩壁。

 一旦は銀魔法石の含有が減るように見えた。

 だが今回の採掘は目的が純度ではない。

 表面に(ほの)見える銀魔石の粒。目的は小さくともキラリと光る小さな粒であり、言わば飾りである。

 それさえ入っていれば販売の指標として、この小瓶ならばと客を寄せるのが目的のものなのだ。


 まだ取れる、含有は十分だと掘り進め遂に銀魔法石の粒は消えた。

 ここも終わり。

 それは元の岩壁から30セロト(cm)近くも削ったところだった。


 次の岩壁に採取を移そうかと考えていたガンツが、採掘面に浮かぶ模様に気がついた。

 削ったばかりの面に円形の模様が浮かび出ていたのだ。

 それは拳大の、高純度の銀魔石をクレアが採取した跡。

 その一つが融合が甘かったようで断面を晒していたのだ。

 試しにタガネを当てハンマーを振るガンツ。

 岩の採取跡は一度亀裂が入っていたからもあろう、脆く掘り易い。

 さらに深く掘るのは長年ハンマーを振り続けてきたガンツには容易いことだった。


 ずいぶん脆い場所に当たったものだと槌の導くままに掘るうちに、銀魔法石粒の含有が増えていると気がつく。


「おお!」

 震える手でカケラの表面に浮かぶ銀魔法石、その極小さな粒を撫でるガンツ。


 そこへ含有鉱石を運び出していた鉱夫4人が戻る。

 4人で運ぶ理由。

 実は出口のやや先まではトロッコが使えるが、そこからクレアたちが居る番屋までは手運びなのだ。


 戻った4人にガンツは、

「おい、移動は止めだ!

 ここを掘るぞ!」と吠えた。

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― 新着の感想 ―
(151話から確認に来ました。 前書きのメアリの説明文に、やっぱり「鑑定魔法」の字が有りますね。今話見た時、そんな設定出てたっけな??と思ったのは正解だったな。 レベルアップ的にはこの時から覚えてたの…
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