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番外編 厨二病でも友達が欲しい

□冒険者ギルドネビュラ支部 酒場 クロウ・ホーク


「《創造(クリエイト・)呪人形(カースドール)》」


 藁をベースにMPとモンスターの素材を練りこんでいく。

 そして、溶け込むように素材は消え……藁は暗く染まった。


 ここまで練りこんだら、次に整形だ。

 <呪いの藁の束>に対し、このまま形を作り効果を付与するのだが。


「《造形変化(フォーム・シフト)》」


 【造形師】が最初に覚えている基本スキル《造形変化》。


 手元にあった素材を消費し造形を付与していく。

 まだ、《創造呪人形》の効力は残っているためここで一工夫。

 魔力を操り少しずつ細部に変化を加えて……


 藁細工とでもいうべき、ムーンバットの人形ができた。


「《呪物(カース・オブ・)操作(マリオネット)》」


 宙に浮かせパタパタと羽ばたかせる。


「うーん、まあまあかな」


 感覚的に、俺が操作しなくてもある程度は羽ばたいてくれるらしい。

 ラジコン感覚とはこういうことか。

 ゴーレム操作も似たようなものなのだろう。

 

 俺は今日も冒険者ギルドにいた。

 ここは聞き耳を立てているだけでも様々な話題が耳に入ってくる。

 俺も例にもれずモンスターを狩りに行くときや散策に出かける時以外の時間は大体ギルドにいるのだ。


「クロウ」


「おうユティナ、どうだった?」


「プラス800ってところかしら? 今日はルセスから来た新人のゴーレムオペレーターのデビュー戦で、お祝いみたいな形だったわね」


 ゴーレム同士を戦わせる賭博についてだが、ネビュラの冒険者ギルドの片隅でひっそりと定着した。

 さすがにこないだのような大規模にはならないが、ユーザ間で大会を開こうとしている連中も一部いるらしい。


 そして、暇を見つければユティナはギャンブルに興ずるようになってしまった。

 ああ、なんということだ……


「言いだしたのはクロウよね」


「だって、ユティナ強いし」


「ちゃんと操作の癖を見てるだけよ。四足歩行が上手かったり、人型の動かし方が上手だったり、あとは相性もあるわね。1対1は儲けは少ないけどコンスタントに増やせるのよね。当たれば嬉しいし、観察や分析の練習にもなるわよ……それこそクロウの得意分野じゃない」


「ああいうのはその場のノリと勢いを楽しむ心が大事だからな!」


「謎の拘りよね……それで、その人形は新しいスキルで作ったの?」


「おう、せっかくだし俺も真似をしようかなって」


 【造形師】のレベル上げをする予定はないが、さすがにここまで流行っているのを見たら手を出してみたくなるというもの。


 《創造呪人形》。

 このスキルは、俺が【マグガルム】を討伐しレベル40を超えた際に習得した新スキルだ。

 基本は《呪物生成》と同じなのだが、人形の素材がある程度指定されているというのが異なるところか。

 人形の素材に対し、モンスターの素材を消費して呪いを練り込み、そのまま人形を作るスキルだ。

 ある程度型が決まっているため、スキルを使えば簡単にアイテムを作れるという生産系のスキルに近いのだろう。


「使う予定はないけど、スキルレベルは上げないとだからな」


 極端に言ってしまえば、このスキルは現状率先して使う気がなかった。


 普通の【呪術師】の戦い方は、《創造呪人形》で生成した呪いの人形を《呪物操作》で盾にしながら、呪物を投げつけ《呪爆》や《呪縛》、多様な武器スキルで動きを妨害するという中後衛のデザインだろう。

 パーティを組んだ時のいやらしさも相当なものではないだろうか?

 呪人形に呪いの武器を縫い付けてもいいはずだ。


 反対に、俺は自分も前に出て自らの手数で道具を扱う前衛スタイル。

 呪いの盾を運用するぐらいなら、その分武器を直接操作した方がよっぽど早い。

 その方がコストも安く済むしな。


「ほら、<ナイトウルフ>に<パラガイザー>の人形も……」


「うおおおおおおお! シルバーよ! なんだそれは!?」


「うおっ、と。ブラックか。久しぶりだな」


 声がかけられ、見ればそこには彗星がいた。

 数日ぶり、なんなら星天の日以降初めて会ったかもしれない。


「くく。かの月夜の魔境にてしばし凄惨なる宴に独り興じていたゆえ。ならばこそ、久方ぶりに日の元に繰り出すもまた一興というもの……その呪われし魔の者たちはシルバーが闇の儀式にて作り出したものか?」


 ダンジョンに潜ってずっとソロで探索を続けていたと。


「そうそう、細部は少しこだわってるけどな。ほら、向こうでモンスターの形をしたゴーレムが戦ってるだろ? ジョブスキルでそういう方法が見つかったから俺もスキルレベル上げついでに試してるんだよ」


「ふむ……もしや、それは異次元の狭間に封印することも可能ということか?」


「アイテム扱いだからな。ゴーレムと違って収納できるぞ」


 アイテムボックスに収納できるか気になったらしい。


「……シルバーよ、ならば一つ依頼がある」


「うん?」



「《創造(クリエイト・)呪人形(カースドール)》」


 量を増やした藁をベースにMPとモンスターの素材を練りこんでいく。

 ここまではさっきと同じだ。

 俺は彗星から貰った【キラーブラッド】……<ムーンバット>の特異種の素材を消費し、呪いの藁の束、否、呪いの藁人形に造形を付与する。


「《造形変化(フォーム・シフト)》」


 少し細部に手を加えながらスキル発動の光とともに、それは完成した。


(へぇ、こういう形をしてたのか)


 【キラーブラッド】の見た目は、鋭利な牙に大きな羽。

 そしてなにより、胸の周囲にとげとげした羽毛らしきものがじゃらりと生えていた。


「《呪物(カース・オブ・)操作(マリオネット)》」


 その姿を模った藁細工は羽をはばたかせ、空を飛びはじめた。

 キラーブラッドの姿を模した人形が完成したのだ。


「おおおおおおおお!」

 

「さぁさぁ、買った買った。ムーンバットの特異種の素材を用いて作った藁細工。今ならなんとたったの100000スピルだ!」


「ぼったくりよね、それ?」


「素晴らしい出来だ! 我が血のコレクションにふさわしい! ふはははははははは! げほ! こほっ……うぅ……」


 笑い声でむせた彗星を見ながら、しばし思案に暮れる。


 呪いの藁細工であればアイテムとして存在しているため、ゴーレムと違いアイテムボックスに収納し持ち歩くことができる。

 それに気づいた彗星が戦った強敵を血のコレクション……ではなく形として残したいと言っていたので協力した形だ。


「俺でよかったのか?」


「けほ……む? なんのことだ」


「俺のスキルレベルは低いからさ。ほら、本来であればもっといろいろ機能をつけれるはずだったんだよ。一応MPを消費して自己修復する機能はつけたからよっぽどのことがなければ長持ちするけどさ」


 一応、丁寧に細部も整形を行いはしたが、正直誤差の範囲だろう。

 せっかくの素材なのだから、ちゃんと初期ジョブに【呪術師】を選んでちゃんとスキルレベルが上がっている人や他の生産系のジョブ持ちに依頼した方がよかったのではないかと思ったのだが。


「ふっ、それは違うぞ。改めて礼を言おう、シルバーよ」


「ん?」


 彗星は晴れやかな顔をしていた。


「我が求めるは魔の眷属を血のコレクションに加えること。しかし、それはこの世界に過ごした歴史として形に残すためだ。なれば、凡百なる者ではなく、シルバーが創りしこの呪われし魔の眷属こそ我が血のコレクションに最も相応しい」


 あの日、あの夜、場所こそ違えど共に戦った俺が作ったからこそ価値がある、と。


「それならよかった」


 嬉しいことを言ってくれるものだ。


「では、さらばだ。永劫なる時の果てにまた会おう!」


 そう言い残し、彗星はマントをはためかせかっこよくポーズを決めた。

 星天の日もいつの間にか似たようなことを言い残し去って行った。

 彼女の癖のようなものなのだろうか。


 あ、忘れるところだった。


「ブラック、フレンド登録するか?」


「うぇ……?」


 結局彼女とは交換をしていなかったのだ。

 ブルーとはこないだギルドであったときに交換しておいた。

 T&Tとも交換しようと思ったのだが……断られてしまった。

 パーティには興味あったが基本ソロ専だからフレンド登録はしたくないらしい。


 自由でいたい、ということなのだろう。


「まぁ、嫌なら無理にとは……」


「す、する! します!」


「そ、そうか。じゃあフレンド登録申請するぞ」


「……っ!」


 彼女はコクコクと細かく何度も頷いた。


─システムメッセージ─

【アブソリュートエターナルカタストロフィ・彗星】がフレンドに追加されました。


 あれやこれやフレンド登録するのもどうかと思うが、せっかく機能としてあるのに使わないのも損だろう。


(や、やった。初めてのフレンド、だよ? ありがとう! うん、うん。そうだよね……このままフレンドを増やしてゆくゆくは……!)


 ……内なる邪竜と会話してるのだろう。


 少女は少し俯き小声で話しだした。

 意識をずらし、情報として処理せず耳に入ってきても務めて聞き流すようにしておく、というか邪竜なのに封印主の相談に乗ってるんだな。


(邪悪な気配が一切しない邪竜とはこれいかに)


 しばらく手持ちのアイテムを見ているとどうやら相談は終わったようだ。


「ふははははは! シルバーよ! 我が最も新しき盟友よ! この恩は忘れぬぞ!」


「ああ、また何か血のコレクションに加えたい強敵がいたらメッセージで連絡を入れてくれ。盟友のよしみだ。俺で良ければ請け負うよ」


「そう! 我らは盟友なり! ふ、ふは! ふははははははははは!」


 それだけ言い残し、彗星はギルドの外へ走っていった。

 商業ギルドか、もしくはダンジョンに潜りに行ったのだろう。


 それにしても、確かに会話は少しコツがいるかもしれないが、フレンドが今までいなかったのは違和感がある。

 本人が望むのであれば、割とすぐにできそうなものだ。

 レレイリッヒとも普通に会話していたみたいだしな。


 それこそ、フレンドに誘われる前にその場からいなくならない限り……


「……そういうことかぁ」


「ん、なにかしら?」


「いや、まぁ。不器用なんだろうな」


 まさか、誘われる前に会話が終わったらすぐに逃げ出していたとは……

 最初に会った時や、前回に引き続き今回の動きを見るにほぼ確定と見ていいだろう。


「……とりあえず、メッセ―ジだけ送っておくか」


 これからよろしく、と送信。


「ふぅー……」


 一息つき、周囲を見渡す。

 ギルドの奥からは歓声が聞こえ、冒険者たちは思い思いに雑談に興じていた。

 ユティナは先ほど彗星から貰ったこの世界の星について書かれた本を、興味深いのか笑いながら読み進めている。


 俺は手元に《創造呪人形》で作りだしたアイテムたちを並べていき……


「うん、悪くない」


 ネビュラでの日々はこれ以上なく、平穏そのものだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 彗星は人付き合いは苦手なのだろうけどいい子なんだろうな、とほっこりしますね。 そして討伐対象を直接知らなくても再現可能な呪人形ですか。長く保管可能なら過去に現れた特異個体の博物館、みたいな…
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