386話目
久しぶりの更新となってすみません!
そして、通算400となる今回ですが、400話目ではないので、あの方は『待て』出来たようですm(_ _)m
386話目
「フシロ団長、それは一体何を……」
唐突に知らない男性の声が聞こえてきて、俺は思わずビクッと身を固くしてなるべく息を潜める。
そんな俺が今どんな状態かというと、小熊姿でフシロ団長の腕の中で丸まっている。
「ぢう」
寝過ぎだと服の中に潜ってついてきてくれているノワに呆れられた俺がどうなっているかというと。
いわゆるベビースリングっていうやつだと思うけど、フシロ団長が持ってきた布みたいなのに包まれたような感じで抱かれているのだ。
外からどう見えるかわからないが、たぶん知り合いが見てもぱっと見俺が抱かれているとはわからないだろう。
フシロ団長の手を空けるために用意されたんだろうが、いくら俺が小柄でも六歳児にする対応じゃないと思う。
思いの外、快適で爆睡しちゃっていて知らない男性の声が聞こえてくるまで起きなかった俺が言えることじゃないけど。
「聖獣様対策のためにちょっとな」
フシロ団長の濁した言い方が気になったのか、向けられている視線が増えた気がする。
そもそも寝てしまう前はフシロ団長に抱っこされた状態で馬に乗っていたはずだが、今はフシロ団長自身の足で移動しているようだ。
これはもしかしなくても現場に到着している?
「ぴぃぃーっ!」
姿は見えなくても匂いや気配でわかってくれたのか懐かしい声が俺を呼んだかと思うと、風が吹きすさぶ音がして周囲が慌ただしくなる。
「慌てるな! そのまま離れて待機しろ! 部外者を近づけさせるな!」
その慌ただしさを鎮めたのは、よく通るフシロ団長の一喝だ。
「──っ!! ────っ!?!?」
なんか、女の子ぽい叫び声も遠くで聞こえた気もしたけど、聖獣に夢見てる感じのシスターさんでもいたのかな?
なんでシスターさんかもって思ったかというと、聖獣は呼び名に聖って字がついてることからわかるように、教会では神様と同じ扱いで敬ってるってフシロ団長が言ってたからな。
そういえばゲームでもそんな設定が出てきた……気もするような?
とりあえず、この現場にも教会関係者が出張って来てるのはフシロ団長から聞いていたから、あの叫び声がそれかはともかく、教会関係者もいるのは確かだ。
万が一、犬……聖獣と話してるの見られたら、聖人扱いされて教会に連れていかれるかもしれないと忠告をされてるので、俺はしっかりと自身を包む布を掴んでおく。
「向こうには小声でも聞こえるだろう? 近づく事を伝えてくれ」
フシロ団長の指示に頷いた俺は、
「……これから近づくけど、この人は信頼出来る人だから」
とかなりの小声で呟いた。
これぐらいの声量でも、犬は毎回聞き取ってくれていたから、今回も大丈夫だろう。
「ぴぃっ!」
無事に届いたらしく、犬に代わってロック鳥からの「了解した」という声が聞こえたので、フシロ団長の胸板をぽふぽふと叩いて合図をする。
俺の合図を受けて、フシロ団長が歩を進めたのか何度か体が揺すられた後、フシロ団長は動きを止めて大きく息を吸い込む。
「俺はフラメント王国騎士団長のフシロだ! 話をさせていただきたい!」
おぉ。さすがというか腹から出た! って感じの声に、思わずビクッと体が震えてしまう。
別に怖かったとかではなく、物理的なやつだ。
だからフシロ団長、不安そうにちらちらと見てこないで欲しい。
布の隙間からフシロ団長と目が合ったので、安心させるようにへらっと笑っておく。
「わふ……いいだろう」
俺とフシロ団長が目線を交わし合っていると、犬が普通に答えかけて人の言葉で誤魔化すように答えたのが聞こえてくる。
「聖獣様だ!」
「なんて神々しい!」
そんな声が遠くから聞こえたので、隙間からそっと犬の声が聞こえた方へ視線を向けると、大きなロック鳥の足元とそこにすっくと立つ犬の姿が見える。
どうやら俺から見える範囲にアシュレーお姉さん達はいないようだ。
もしかしたら途中でアシュレーお姉さん達を降ろして、犬だけ乗せてここまで来たんだろうか。
「うちの騎士と冒険者は何処へ?」
フシロ団長も同じ疑問を抱いたらしく、犬へ問いかけている。
「うむ。途中で降ろして、先触れ役に王都へ向かわせたぞ」
「……連れてきてくださり、感謝いたします」
犬、ドヤってるところ悪いけど、たぶんアシュレーお姉さん達を置いてけぼりにしてここまで来たんだろうな。
フシロ団長のなんともいえない表情と声音からすると。
まぁ普通に考えて、人間の足じゃ空を飛んでるロック鳥に勝てる訳ないし、馬とか馬車でも無理ゲーってやつだろう。
俺がそんな事を考えている間にも、フシロ団長と犬による緊張感溢れる話し合いは続いていたようで──。
「……確かに受け取ったぞ」
「ふぇ?」
笑いを含んでくぐもった犬の声が聞こえたかと思うと、気付いた時には俺の体は森にいた時の二番目の定位置に。
つまりは犬のもふもふした背中へ乗せられていた。
フシロ団長はどうしたんだと視線を巡らすと、困りきった表情をしてこちらを見ていて、口の動きで「すまない」と謝られる。
「さぁ、人の王の顔を見に行くぞ」
どういう事だろうと思っていたら、そんな楽しそうな犬の声が聞こえてきて、なんとなく状況を察してしまった。
周囲を囲んでいる人達からは、
『あれは聖獣様のお子なのか?』
『いや、あれは毛皮で作った服のようだ。もしや、騎士団長のお子様かもしれん』
などなど風に乗って聞こえてくる。
どちらも違うけれど、ここで何かを喋れば俺の正体を隠そうとしてくれたフシロ団長の気遣いが無駄になるので黙って犬の背中に埋もれる。
犬種的にサモエドとかグレートピレニーズよりさらにもふもふしている犬の背中は、俺の体ぐらい余裕で埋もれるぐらいのもふもふなので、これでほとんど俺は見えなくなっただろう。
「わふっ」
俺だけに聞こえるよう鳴いて、行くぞの合図をくれたが、そもそも犬の言葉は俺にしかわからないと思う。
もし俺の他に犬の言葉がそのままわかるとしたら、それは聖獣の加護とか受けた尊い存在なんだろう。
それがそれこそ聖女とか聖人とか呼ばれる存在なんだろうなぁと場違いなことを考えているのは現実逃避だ。
しょうがないだろ?
どうやら俺は白熊な着ぐるみパジャマ姿のまま、この国の王の前へと連れて来られちゃったようだからな。
途中まではちゃんと騎乗したフシロ団長が背後にいたんだけど、王都へ入ったら当然ザワザワされちゃって、それがウザかった犬が速度を上げた。
その結果。
俺はフシロ団長の引き留める声が変化しながら遠ざかっていくのを犬の背中にしがみついて聞いていた。
これってドップラー効果ってやつかなぁと現実逃避していると、浮遊感が体を襲う。
たぶんだけれど、犬が城の高い塀を飛び越えたんだろう。
犬の跳躍力なら余裕だよなぁ、魔法使いの結界とかも犬なら大丈夫だろうし。
騎士さんか衛兵さんかわからないが周りで大騒ぎしているのが聞こえてくるけれど、犬が聖獣だとは伝わっているのか攻撃されたりする気配はない。
「我が王に会いに来てやったぞ。早く案内しろ」
「そ、そうおっしゃるなら、置いてくのは止めてもらえませんか」
さすがフシロ団長。なんとか追いついたらしい。
「ほう。我に追いつくとはなかなかに足の速い馬だ。存分に誉めてやるのだぞ?」
そして犬は馬を誉めるぐらいなら、フシロ団長置いてこないであげて欲しかった。
「勿論そのように。……では、こちらへ」
無駄話はそこで終わり、犬と俺はついに王様の元へと案内されるらしい。
どんな王様か期待と不安を抱きながら、俺は犬の背中にしっかりとしがみつき直すのだった
●
そうして通されたのは、いわゆる『謁見の間』という所らしい。
金の縁取りがある高そうな赤い絨毯がこれまた高そうな石の床の上に敷かれ、両側には装飾された石の柱が並び、奥の数段高くなっている場所には立派な玉座が二つ並んで置かれている。
玉座は俺でもわかるThe玉座って感じの高そうな椅子だ。
その玉座の片方には王様らしき男性が座っていて、もう片方には王妃様らしき女性が座っている。
コソコソと盗み見るのはこれが限界で、俺は不敬なんて知るもんかな精神で犬の背中へしっかりと顔を埋めて気配を殺しておく。
それでも雲の上の存在である人物達を間近にして、緊張で体が強張ってくる。
さすがのノワも緊張しているのか俺にしがみついて縮こまって……。
「……ぢゅぅ」
ただお腹が空いただけなようだ。
腹減ったと訴えるノワを服の上からぽふぽふと叩いてなだめ、俺はノワにならって緊張していた体から力を抜く。
主役は犬なんだから俺が注目される訳ないよなと開き直って。
そのはずなのに何故俺は気付いたら……。
「やはり子供は可愛いのう。陛下にねだってもう一人……」
赤裸々な事を頬を染めて呟いている王妃様の膝に抱かれているんだろうか。
マジでなんでだ?
いつもありがとうございますm(_ _)m
白熊ジルヴァラ、子供好きに突き刺さっているようです。
本人はずっとチベスナ顔してそうですけど(笑)




