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ようこそ幻想都市塔京へ   作者: 竜馬光司
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第1話 その5

「あそこか」

「あそこね」

「あそこですね」

三人はスマホのマップの誘拐されたミスフォルラがいる場所に辿り着き角から様子を伺っていた。

入り口には先程の探索者達が言っていた通り、見張りが二人いた。

彼らの格好は白いローブに、目の所だけ穴が空いた仮面を被っていて、素肌を全く露出していない。

その姿も充分不気味なのだが、一番不気味なのが、仮面に描かれた血の色の手形だ。

神の手の信者達は、その名の通り神の手として活動している。

仮面の手形は、自分が神の下僕だという証だった。

見張りは二人共、右手でAKを持ち、その銃口をダラリと下げていた。

「あいつらが近づく者を撃っているらしいな」

勝太郎が、見張りの足元を注視すると、空薬莢が散らばっていた。

「さっきの人達もあいつらに撃たれたんだね」

「ああ、あそこで間違いないな」

「どうしますか? マスター」

「こちらから近づいてもあいつらの事だ。問答無用で撃ってくるだろう。静かに行くぞ」

そう言って、勝太郎はベストのポーチから筒状のサプレッサーを取り出し、HK416に取り付ける。

このサプレッサはフラッシュハイダーの上から直接取り付けられるので、迅速に脱着が可能だった。

勝太郎とバルイールは手持ちの銃にサプレッサーを取り付ける。

メルヒェンはMK48をストラップて背中に回すと、スカートの中のホルスターから、サブマシンガンを取り出す。

それは予めサプレッサーが取り付けられMP7だった。

メルヒェンはストックとフォアグリップを展開し構える。

「バルイール。狙撃を頼む」

「任せて」

バルイールは角から体を極力露出しないで銃を伸ばし、スコープを覗く。

「囚われのお姫様。今、騎士(ナイト)が助けに行きますよ」

バルイールはスコープの中央を頭部に合わせて、引き金を引くのだった。


その囚われの姫であるミスフォルラはテントの中にいた。

誘拐された彼女はその時のパジャマ姿ではなく、純白の衣装を纏う。

その姿はまるで花嫁姿のようにも見えた。

(私これからどうなるんだろう?)

テントの外には見張りがいるだろうが、中は彼女一人しかおらず、ミスフォルラは冷静に今の状況を考えていた。

誘拐犯は彼女の事を神の生け贄と言っていた。

何が起きるのか分からないが、このままここに居れば、自分に待っている未来は果てしなく暗いものとなるだろう。

そう考えると寒気が走り、震えが止まらない。

それは衣装が薄いだけではなかった。

「恐怖に負けちゃ駄目。負けたら終わりだから!」

ミスフォルラは自分の身体を抱きしめて、腕を力一杯握りしめた。

その時、テントの入口が開き、二人の人間が入ってきた。

「これはこれは神の生け贄に相応しい衣装だな」

仮面から覗く四つの目がミスフォルラの肢体を舐め回すように見る。

二人共ローブと仮面で性別は分からないが、声から男である事が分かる。

しかもその声には聞き覚えがあった。

「あなた、さっきの……」

「覚えていたか? そうだお前の父を撃ち殺し、誘拐した者だよ」

ミスフォルラは鋭く睨みつけるが、男は意に介さずその視線を受け流す。

「あと数時間したら教祖様が到着し儀式を始める。それまで神に気に入られるようにお祈りをしておくんだな」

「あなた達は人間じゃないわ!」

「それはそうだ。我々は神の手! 神の為に生き、神の為に死ぬ存在なのだから!」

男は両手を広げ興奮した様子で、テントが割れんばかりに大声で叫ぶ。

「喜べハーフエルフ! 我らの教祖様がここに到着次第、お前は神の供物となるのだ」

ミスフォルラの顎をぐいっと持ち上げる。

「貴様の高貴な血は、神もきっとお喜びになるだろう」

「離して!」

男の手を振り払い、ミスフォルラは出来る限り距離をとる。

「おい。あんまり手荒いことは……」

「うるさい。俺とした事が神の降臨を前に年甲斐もなく興奮してしまったようだ。許してくれ生け贄よ」

「失礼します」

入り口から三人目の男が入ってきた。

「教祖様があと一時間でこちらにつくそうです」

「分かった。こちらも準備を怠るな。教祖様が来られたらすぐに儀式を始められるようにしておけ!」

「分かりました」

そう言ってテントを出る。

「俺たちも行くぞ」

「分かった」

二人もそう言ってテントを後にした。

残されたのは、耐えられなくなって泣き崩れてしまうミスフォルラだけだった。


「俺は教祖様に報告してくる。お前はここで生け贄を見張っていろ」

「ああ、分かった。もし逃げ出そうとしたらどうする?」

「その時は何発か殴ればいい。だがくれぐれも殺すなよ?」

見張りに立った信者は、以前ミスフォルラに頭突きをされた男だった。

彼はその仕返しができるなら、あの女が逃げ出してくれればいいのにと思っていた。

美しいハーフエルフの整った顔が血塗れになるところを、彼はずっと想像していた。

「ねぇねぇ」

「ん? 何だ」

そんな暗い事を考えていると、テントの陰から不意に女性に呼ばれる。

「ちょっと手伝って欲しいんだけど……」

この教団でも、女性の信者は珍しくない。

「ああ、いいぞ」

彼は何の疑問も抱かず、テントの陰に足を運び女性に近づく。

「何を手伝って欲しいんだ?」

不用心に男はこちらに背中を見せている女性に近づいた。

「…………」

「おい、何とか言え」

男が手を伸ばそうとした時、彼女は質問に答えずに、着ていたローブを男に投げつけた。

「おわっぷ」

視界をふさがれた男は、慌ててローブを払いのけるが、目の前に女性の姿はなかった。

「どこ行っ……うぐっ」

突然背後から首を絞められた。

「だ、誰……ぐうぅぅ」

男の首を絞めているのは褐色の肌の右腕だった。

「アタシ、男って嫌いなんだよね」

そう言ってバルイールは右腕に力を込める。

呼吸出来なくなって、男の顔がどんどん青ざめる。

「特に女の子にひどいことする奴が一番キライ!」

バルイールは一気に力を込めて男の首の骨を破壊した。

物言わぬ男の身体を、音を立てないように地面に寝かすと、手で合図する。

現れたのは物陰に隠れていた勝太郎とメルヒェンだった。

「もうこの辺に信者はいないよ」

「よくやったバルイール」

「マム。ご苦労様です。腕、痛くないですか?」

メルヒェンは彼女の右腕を優しく撫でる。

「大丈夫だよ。ありがとうメルヒェン。さあショータロー。お姫様を助けましょう」

三人は辺りを警戒しながら、テントに近づいていくのだった。


「俺が先に入る。二人はそこで誰か来ないか見張っててくれ」

「分かりました」

メルヒェンは素直に従う。

「え〜何でよ。女のアタシが先に行った方がいいと思うんだけど?」

「お前を二人きりにしたら、ヤバイことが起きかねない。そこで待ってろ」

「ヒドイ。アタシ信用されてないんだ」

バルイールは渋々といった様子でメルヒェンの隣まで行き、中腰になって辺りを警戒する。

それを確認してから、勝太郎は万が一に備えて、サイドアームのM1911を両手で構えて、テントの中に、足を踏み入れた。

中は薄暗く入り口を閉じると、完全に闇に包まれる。

「誰?」

暗闇の中で勝太郎は人が動く気配を感じた。

「お前が、美花子・ミスフォルラか?」

「……あなたは誰?」

勝太郎はフラッシュライトを取り出しミスフォルラに向けてスイッチを入れる。

ライトは強い明かりで彼女の身体を照らした。

「…………」

ミスフォルラを見て勝太郎は固まる。

彼女の白い衣装は透けていて、ライトに照らされて、ミスフォルラの豊かな双丘と美しい身体のラインが浮かび上がっていた。

だが勝太郎が固まった原因はそれではなかった。

彼はミスフォルラの顔から目が離せなくなっていた。

「ど、どうしたの?」

「……か、母さん?」

「えっ?」

勝太郎は慌てて、自分の口を押さえるが、今の一言は完璧に彼女に聞かれてしまう。

「い、今私の事なんて? 母さんって……」

「言ってない! そんな事一言も言ってない!」

勝太郎は顔を真っ赤にしたまま、ミスフォルラの言葉を遮る。

「ここから脱出する。い、今行った事は忘れろ。いいな!」

「う、うん分かった」

勝太郎の顔を見て、どこかで見た気がするミスフォルラだったが思い出せない。

「後、これを着ろ」

勝太郎は制服の上着を脱ぐと、ミスフォルラに放る。

「お前の格好で外を出歩かれたら、目のやり場に困る」

ミスフォルラは言われて、自分の身体のラインが透けた格好に気づく。

それを男子に見られたかと思うと、ミスフォルラの顔もリンゴのように赤く染まる。

「あ、ありがとう。あれ?」

「どうした? 早く行くぞ」

「うん。今行く」

ミスフォルラに渡された上着は、彼女も通っている学校の男子生徒のものによく似ていたのだ。

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