第1話 その4
三人は歩いて第一階層中央に向かっていた。
そこには円柱の柱が一つある。
柱といっても中に人が入れるほど大きいものだ。
そして柱の中には、上に登る螺旋階段があった。
階段の幅は大人四人が横になっても余裕があるほどの大きさだった。
その階段前まで来ると、勝太郎が立ち止まって口を開く。
「そうだ。今の内に、スマホのマップに人質の場所を取り込んでおこう」
「そうだね」
勝太郎とバルイールは腕に装着したスマホをメルヒェンの前に持っていく。
二人ののスマホには、踏破したダンジョンのマップが入っている。
「メルヒェンよろしくね」
「分かりました。お二人共、失礼します」
メルヒェンが人差し指で、二人のスマホの画面に触れる。
「データ転送完了しました」
メルヒェンが触れた二人のスマホのマップに、光点が灯る。
「第三階層の北東の大きい部屋だね。ありがとうメルヒェン」
メルヒェンにお礼を言いながら、バルイールは彼女の頭を撫でる。
「いえ、お安い御用です」
撫でられている間、メルヒェンはずっと無表情だった。
「じゃれ合ってないで、行くぞ」
勝太郎が先に登り、二人も後に続く。
「ショータロー。それで、ここからどうやって行くの?」
バルイールが聞きたいのは、モンスターを避けるのか、それとも強行突破するかを聞いてきた。
「出来る限り避けていく。どうしてもダメなら強行突破。俺たちなら簡単だろ」
「オッケー。メルヒェンもそれでいい?」
「はい。問題ありません」
HK416を構える前衛の勝太郎の後に、G3を持った中衛のバルイール、そして後衛にMK48を腰だめに構えたメルヒェンが続く。
三人は辺りを警戒しつつも、出来る限り早足で目的地に向かった。
途中、小鬼のようなフィア族の集団を避け、ジャイアントスパイダーの吐く毒液が届かない位置から倒し、壁に擬態するウォールカメレオンをメルヒェンが見つけて排除しながら、上の階層に問題なく登ることができた。
第三階層は、第二階層よりもモンスターの数が多い。
更に慎重に進んでいくと、前方から人影が現れた。
「誰だ!」
勝太郎は銃を構えて、警告を発する。
このダンジョンの上層では人間そっくりに化けるやつもいるという。
油断は即、死につながるのだ。
復活の魔法などという便利なものは、この世界にないのだから。
「待て待て撃たないでくれ。僕は人間だ!」
そう言って現れたのは人の良さそうな顔をした男性だった。
彼はその顔を恐怖で歪ませながら両手を上げて近づいてくる。
「証明できるものはあるのか?」
「い、今見せる。だから手を下ろしてもいいだろ?」
勝太郎は、照準器を覗いたまま頷く。
男性はゆっくりと手を下ろして、懐から探索者許可証を取り出した。
「同業者か、すまんな」
確認して、勝太郎は銃口を下げた。
後ろの二人も警戒を少しだけ解く。
「いいんだよ。すまないが僕たち急いんでるんだ。通ってもいいかな?」
そういう男性の後ろから、三人の男女が現れる。
「その女性。怪我してるの?」
青ざめた顔で、赤く染まった腕を押さえた怪我人を見つけて、バルイールがそう尋ねる。
「ああ、いきなり撃たれたんだ」
「撃たれた? 掠奪者に撃たれたのか?」
探索者の中には、元犯罪者の人間も少なからずいる。
法の力もダンジョンまでには届かない。
その為、同じ探索者を襲って、装備を奪う人間、掠奪者と呼ばれている存在がいた。
探索者には彼らに襲われた場合、射殺する許可が与えられている。
「いや違うと思う。奴らは揃いの白いローブを着て、不気味な仮面を被っていたから」
「……そいつらはどこにいたんた?」
勝太郎は詰め寄る。
「わっ! えっと、ここだよ。北東の大きい部屋」
そう言って勝太郎にスマホのマップを見せた。
それはメールに記された場所と一致していた。
「そいつらは何人いるか分かるか?」
「すまない。何人いたかは分からない。ただ部屋の入り口には二人いて、僕達が近づいたら、突然撃って来たんだ」
「そうか。情報ありがとう」
「もう行ってもいいかい。彼女を医者に見せたいんだ」
「ああ。言ってくれ」
情報をくれた探索者達に別れを告げて、勝太郎達は先を急ぐ。
「ねえ、あの人達が言ってた白いローブと不気味な仮面って、もしかして……」
「ああ、神の手……カルト教団共だ!」
勝太郎は吐き捨てるように言った。
「やばいよショータロー。早く助けないと彼女がどんな目にあうか……」
「お話し中申し訳ありません。マスター、マム。前方に塔獣がいます。接触は避けられないかと」
文字どおり人間離れした眼を持つメルヒェンが、薄暗い通路の先に蠢くものを捉えていた。
「蹴散らして進むぞ! 弾は節約しろよ。二人共!」
「分かってる」
「はいマスター」
勝太郎とバルイールは銃をセミオートにセットして、メルヒェンはセレクターがないので、指切り単射で道を塞ぐ塔獣を蹴散らしていくのだった。




