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ようこそ幻想都市塔京へ   作者: 竜馬光司
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第4話 その7

「メルヒェン!」

バルイールはスマホに向かって叫ぶがメルヒェンは答えない。

聞こえてくるのはドーシカが放つ銃声のみ。

バルイールは慌てて床に伏せた。

放たれた弾丸は、ビル壁のコンクリートを砕いてその奥の防弾素材まで達して止まる。

窓ガラスも同じく防弾仕様だったが、流石に十二・七ミリを止めることはできなかった。

次々に穴が開き、部屋中に着弾する。

やがて窓ガラスは細かく砕けて床に落ち、部屋のいたるところが破壊されていく。

天井は砕けて電灯は破壊され、仕事用のパソコンも壊れる。

穴だらけの流しからは、まるで血のように水が絶え間なく噴き出していた。

突然銃声が止んだ。

「メルヒェン。そっちは大丈夫? メルヒェン!」

弾切れか何かはわからないが、バルイールは射撃が病んでいる間にメルヒェンに呼びかける。

『……大丈夫です。瓦礫をどけるのに少し手間取り、返事が遅れました』

「よかった。無事なのね?」

メルヒェンの声が聞こえてバルイールはホッと胸をなでおろす。

『戦闘行動に支障はありません……しかし部屋もマムから貰った服も無残な有様です』

そういうメルヒェンの口調は少し悲しそうだった。

「ははっ。これが終わったら新しい服を上げるよ……それよりも敵の動きは?」

『お待ちください。機関銃手はリロードをしているようです。ビルを囲んでいた人間達が階段に向かっています』

「入ってくる気な」

バルイールはM93Rをホルスターから抜くと、スマホを頭と肩に挟んでから、スライドを引いて薬室に初弾を送り込む。

『二階と三階に四人ずつに分かれたようです』

「二階の敵は任せるよ」

セレクターをセーフティからバーストにセット。

『はい。お任せ下さい。それとマム』

「何?」

『殺しては駄目ですよ』

「……分かってる」

少し間を空けてからバルイールは答えた。

「殺さないよ。ただ彼奴らの腕か足に、穴を空けるだけさ」

探索者達はダンジョン以外で人を殺せば犯罪者と同じく殺人罪で逮捕されてしまう。

だが自分の身を守るために、相手を殺さずに無力化するのは許されていた。

『それぐらいなら問題ないと思います』

三階のドアの外から微かな物音が聞こえる。

敵がバルイールのいる階に到達した音だった。

「来た。じゃあメルヒェン頑張ってね」

『はい。マムもお気をつけて』

それを最後に通話が切れる。

直後、ドアが破られ中に入ってくる複数の足音が聞こえてきた。

下の階からも銃声が聞こえてくる。

メルヒェンが賊と戦っている証拠だった。

バルイールは息を潜めて姿勢を低くし遮蔽物に身を隠し、いずれ来るであろう敵を待ち構えた。

廊下から聞こえてくる足音がバルイールの部屋の前で止まる。

一瞬の間が空いてドアが蹴破られた。

部屋に入ろうとした賊の一人が、遮蔽物に隠れたバルイールに気づくがそれまでだった。

バルイールは入ってこようとした敵に向けて、M93Rのトリガーを引く。

バーストにセットされているので、一度引くだけで三発の弾丸が発射された。

放たれた九ミリ弾は賊の右肩に直撃する。

肩から血を流しながら、族はバルイールから見て左にきりもみしながら吹き飛んだ。

「よし一人……やばっ!」

撃ったバルイールは慌てて遮蔽物に伏せる。

右側からAKS74Uの銃口が突き出され、猛烈なフルオート射撃を開始したからだ。

激しい銃声が響き渡り、バルイールが隠れる遮蔽物に銃弾が当たっていく。

バルイールが縦にしている遮蔽物に、ギンゴンと嫌な音を立てて弾丸が着弾した。

賊は弾切れになるまで撃ち切ってから、驚いて目を見開く。

「なっ!」

部屋の机やベッドは穴だらけになっているのに、遮蔽物であった銀のスーツケースは弾丸を全て防いでいたのだ。

そればかりか、ひしゃげた弾頭がスーツケースから剥がれ落ちていく。

ケースは傷一つなかった。

「くそ、どういう事だ」

賊は悪態をつきながら、新しいマガジンを装填しようとする。

それを許すバルイールではなかった。

桃ノ木博士から届いたスーツケースで弾を防いだバルイールは、敵の撃った弾を冷静に数えて弾切れを察知し、遮蔽物から身体を出してバースト射撃する。

だが放たれた三発は敵が壁に隠れてしまって当たらなかった。

「だったらこっちから行くまで!」

バルイールは遮蔽物から飛び出し敵に肉薄する。

驚いたのは賊の方だった。

撃たれたので、壁に隠れてマガジンを交換しようとしたら、向こうからドワーフの女が突っ込んできたからだ。

装填するか迎え撃つか、一瞬の迷いが勝敗を分けた。

「せい!」

バルイールはAKS74Uのハンドガードを左手で掴むとそれを敵からもぎ取る。

女性とはいえドワーフの怪力に、人間が抗えるはずなかった。

「ふん!」

バルイールは奪った銃を棍棒のように振るい、スケルトンストックを敵の頭に叩きつける。

ボグッと鈍い音がして賊の動きが止まった。

「痛そう。まっ自業自得だから。おっとまだいたか」

見ると勝太郎の部屋から二人の賊が出てくるところだった。

バルイールは頭を殴った敵の胸部にショートブーツの底をめり込ませ蹴り飛ばす。

二人の賊の内、一人にぶつかりそのまま気を失った。

残った一人は咄嗟にVZ61を構えようとする。

「遅い」

しかしバルイールの方が何倍も早かった。

彼女は賊が構えた後に、M93Rを構えて相手の左肩を狙い引き金を引いていた。

左肩を撃ち抜かれダラリと腕が垂れ下がる。

それでも賊は右腕一本でバルイールを狙おうと構えた。

「しつこい」

そう言って冷静に賊の右肩を狙い撃ち抜く。

バルイールは銃口をVZ61を取り落とした敵に向けながら近づき、こちらを睨んでくる賊の顔面に鋭い後ろ回し蹴りを炸裂させた。

「よし、全員無力化。メルヒェン今そっちに行くよ!」

バルイールは敵四人が全員息をしていて戦闘不能なのを確認してからメルヒェンがいる二階に向かうのだった。

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