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          27 香織

 香織は帰宅した。マリエールも一緒だ。マリエールは我が家に馴染む。有り得ない状況だ。香織は考えるのを放棄した。

            27  香織


 帰宅した香織が待っていたのは片付けをしている母だった。家中散らばっている。香織が取り敢えず下駄箱の片付けをしているとマリエールは洗面所の片付けをしている。一応片付けが終わると母とマリエ'ールが一緒夕食の準備を始めている。香織は予習を始めた。父が帰ってきてマリエールをみたが、ただ「ただいま」と言っただけだ。何だか香織だけがマリエールを他人扱いしているようで気持ち悪い。

 大きな混乱もなく日常が戻ってきた。香織は毎日学校と塾だ。マリエールは家のリフォームをしている。夕食毎にどこをどうリフォームしたのか教えてくれる。マリエールがきてから香織の成績が上がったような気がする。今度の土日が最後のセンター模試だ。

 センター模試の結果は非常に良かった。これで自信をもって入試に臨める。

 ある日マリエールが香織に話しかけた。

「私はあなたに生き方を強要するつもりはないわ。あなたが生きていてくれるだけで嬉しいの。でもあなたが死んで転生した私の記憶や知識もあなたに知ってもらって人生を選んで欲しいの。私の記憶や知識を受けとって。私の記憶や知識を贖わず受け取って。」

香織に膨大な記憶や知識が流れ込んだ。アレンを助け、助けられる記憶もある。それが心の大きな割り合いを占める。香織は、

「私に医者になれっていうの。あなただって私だというなら父が如何に数学が面白いか教えてくれたこと覚えているわよね。私は数学で生きていくって決めてるの。余計な口出ししないで。」

香織は感情的にマリエールを怒鳴った。

「知っているわ。子どもの私にも判り易く数学の面白さを話してくれるパパ。せっかく高原に遊びに行っても話していることは数学の話し。赤トンボを見ても目が2個で羽が4羽で足が6本の等差数例で最後は地球の蟻の数まで類推したり、小学生の私に微分方程式であらゆる現象が説明したり偏微分方程式でどこまで解析が可能か説明してくれたわ。お陰で数学では私誰にも敗ける気がしないけど、パパたらアメリカで研究発表したくらい英語に堪能だったはずなのについぞ英語は一人娘に教えなかったので私英語は苦手だわ。」

香織はマリエールを見てその顔で良くいうわと思った。マリエールは、

「あなたの気持ちは良く判るわ。でも私のアレンへの気持ちも考えて、人を救う尊さ、アレンへの気持ち、あなたの気持ちではないかも知れないけど、あなたであった私の気持ちよ。良く考えて選んで、もしあなたが私の気持ちを尊重してくれたなら私の全てをあなたにあげる。アレンの前世の加納慎二はT大医学部であなたが来るのを待っているわ。私の記憶と知識のあるあなたなら必ず合格するわ。その日まで私は異世界で待っているわ。」

私は数学が好きだ。大好きなパパとの思い出。世界の発展に貢献して益々その重要度が増す基礎的な学問。しかし、マリエールの思いも判る。彼らを救ったのは数学ではない。医学がマリエールとアレンを救ったのは確かだろう。

 香織のセンター模試は非常にいい成績だった。志望校合格の可能性が高まる。マリエールは自分の記憶と知識を香織に与える。

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