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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第三章 恋と争う二人

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第67話 秘密のショートカット


「な、なぁ、どこに行くんだ?」

「教えたら面白くないじゃないですか~。翔輝さんは黙ってわたしについてくればいいんです!」

「…………むぅ」


 昼休みになった直後。


 俺と聖菜がまだいい感じに見えたことで怒りを露わにしていた院瀬見が、モブ男子――いや下道たちのお昼の誘いを振り切って勢いそのまま廊下に飛び出した。


 しかもせおり先生に体当たりをしながらだ。


「こ、こら、院瀬見つらら! 私に何の恨みが……」


 先生は突然のことでパニクっていたが、院瀬見に引っ張られていた俺に気づいて密かに親指を立てていた。


 一瞬見ただけで判断してくれたうえ、ざわつき始めようとしていた生徒たちを制してくれたのは、院瀬見を俺の家に預けた恩があるからに違いない。


 それはそうと、


「なぁ、俺を引っ張ってどこに行くつもりなんだ? このままだと壁にぶつかりそうなんだが」


 学食がある方に進んでいるわけではなく、視線の先にはどう考えても行き止まりの壁しか見えていない。


「ぶつかるわけないもん。ちゃんと通じてる道だもん」

「……そんな可愛く言われても」


 学校では敵ですとか自分で言っておきながら、何でまたこんな暴挙な行動に出たんだろうか。あの場にせおり先生がいたから誤魔化せたが、下道や鈴原からすれば変な感じにしか見られかねない。


「あっ、こっちだったかも! 翔輝さん、このまま手を離さずに進んでね!」


 何が何だか分からないが、院瀬見は俺の手を握ったまま校舎の外につながりそうな通路へと進みまくった。


 それにしても気のせいだろうか。


 院瀬見は俺の方をちらりと見るだけで全く後ろを振り向いてくれないし、お腹の部分が何となく膨らんでいるような。


 そんな俺の疑問などお構いなしに、院瀬見は生徒が通りそうに無い薄暗い通路を抜け、頑丈そうなドアノブを回して進みまくった。


 その先で見えたのは、


「……庭園か?」

「あったりぃ~! 何だか久しぶりって感じ、しません?」

「庭園といえば……つららの足と脚立事件か!」

「別に事件でもなんでもないですけど、まさしく現場です! 現場に戻ってきました」


 どこに来たかと思えば、おそらく関係者くらいしか知り得ない非常口を通って、いつぞやの庭園に到着していた。


 ここでの記憶にはあまりいい印象が無いが、院瀬見の反応を見る限り俺とは違う印象深い場所とみているようだ。


 物置小屋しかないと思われたが、実は隠れた憩いの場になっているのか花壇の近くにベンチが設置してある。


「さっき通ってきた通路って――」

「うん。秘密のショートカット! 庭園に出て来るのって結構遠回りなんだけど、さっきの非常口からだとすぐなの」

「ふーん」

「何ですかその反応!!」


 俺としてはここは庭園だなくらいしか思わないが、院瀬見にとっては思い出の場所とか記憶に残る場所なんだろうか。


「いや特には……」

「まぁいいです。鈍重男子なんかに期待なんてしてませんし!」


 しかし学食とはまるで逆側の場所なわけだが、まさか昼抜きとかじゃないよな?


 校舎の窓に目をやると、人の動きが学食に向かって行くのがかろうじて確認出来る。外からは良く見えるが昼休みに庭園を気にする奴はいないだろうな。


「一応聞くけど、昼は?」

「食べたいですか?」

「そりゃそうだろ。つららは平気かもしれないけど、俺は育ち盛りだからな! ――というか、訊いてもいいか?」


 普通なら女子にこんなことを訊くのはどうかと思うが、あまりにも不自然すぎるし黙っているわけにはいかない。


「何です?」

「その腹の膨らみって何だ……? まさかすでに食べて膨れ――」

「……えっと、おバカさんでしたっけ?」

「違う!」


 くっ、明らかに呆れかえっているのは何でだ?


「どうしてそういう考えにいくのか理解出来ないんですけど~……何のために朝早く起きて頑張ったのか分からなくなるじゃないですか!!」


 そうかと思えば少し泣きそうになりながら悔しそうにしている。


「朝早く? 俺よりも気合い入れて生徒会長らしい行動をしたとかじゃないのか?」

「はぁ……生徒会長の件は今はどうでもいいんです! そうじゃなくて、これですっ!!」

「ぬっ――!? へっ?」


 腹の部分が膨らんだ制服から何が飛び出してくるかと思えば、出てきたのは弁当箱だった。さすがに重箱ではなかったが。


「おぉ……? もしかしなくても弁当箱……だよな?」

「他にどう見えるっていうんですか?」

「どう見ても弁当箱だな」

「ですです! もうお分かりですよね?」


 つまり、俺にくれる――そういうことだったのか。


「十分すぎるほど理解した」

「うんうん。それじゃ、頂きますね!」

「……へ?」


 俺が求めていた答えかと思いきや、俺の期待を見事に裏切り、院瀬見は弁当箱の蓋を開けて中に敷き詰めていたサンドイッチを手にする。


「え、あれ? 俺にくれるんじゃ?」

「口を開けてもらわないとあげられないです。欲しいんですよね?」


 これはもしや、アレなのか?

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