表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/61

61

宴もたけなわになって、ようやくアスラン王が現れた。

そして、アリシアの客人たちに歓迎の言葉を述べる。

アリシアであれば、まず最初にやるはずであるが、ラシュタールはあくまでも最初に食事が振る舞われ、参加者の腹が満たされたのち、王が現れて、言葉を発するのが慣わしらしい。


アデルはあまり自覚がなかったが、相当酔っ払ってしまったらしい。

せっかくのアスランの歓迎の言葉もほとんど頭に入らなかった。


ふわふわとした思考でアスラン王をみる。

金色の柔らかそうな金髪が、なぜか今日見た絵の中にいた獅子を思い出させた。

(そうだわ、あの獅子はアスラン王にどこか似ているわ。)

呂律の回らない思考で、アデルはふと何か大切なことを思い出しそうになった。アスランの挨拶が終わっても、アデルはまっすぐ王を見つめたまま、その何かを思い出そうとしていた。

ふと、アスラン王と目が合った。サファイアのように美しいあお。アスラン王も、初めて謁見した時と違って、まっすぐにアデルを見つめた。王も何かをアデルの中に探しているのだろうか。二人はそのままじっと見つめ合う。お互いというより、その背景にあるはずの何かを探して。

しかし、アデルの探索は急に終わる。


「アデルーーー、酔っているのか?」


優しくて、少し掠れたユキの声が、アデルの頭から降ってきたせいだ。


アデルは振り返ってユキを見る。


湯浴みをしたのだろうか、ユキからは白い花の香りがした。


「ユキ・・・。遅かったじゃない。」


「色々あったんだ。しかし、アデル、相当飲んだな。あっちで君の同期の一人がグデングデンになって運ばれていたぞ。」


アデルはトロンとした瞳でユキの漆黒の目を見つめ、微笑んだ。


「リューがいろんなお酒を教えてくれたのよ。」


アデルが無邪気にそう言うと、忌々しそうにユキは舌打ちをした。そして何かをつぶやいた気がするが、アデルの耳には入らない。

ユキは漆黒の目を細めて、アデルの腕を掴み、酒の入った杯を遠ざける。


「だからと言って、そんなに飲むもんじゃない。

アデル、君は、馬鹿なのか。

仮にも白き翼で、ここはアリシアじゃないんだ。

万が一、何かあったらどうするんだ。」


「ああ、ルカ先生みたいなことを言うのね。もう今日はこってり絞られたの。お説教は勘弁してほしいわ。それに・・・。」


思わず「私は酔っていないわ。」と言おうとして、アデルは立ち上がったが、急に動いたせいで、一気に酔いが回ってきて、ぐらりとよろめいた。


ユキはよろめいたアデルをがっしりとした腕で抱き止めると、そのままヒョイっと抱いた。


「言わんこっちゃない。さっさと部屋に戻るぞ。」

「え・・・?なにこれ・・・・。すごく気持ち悪い。」

「許容量もわからずに飲むからだ。」

「・・・・。」


そこに、ラシュタールの高官への挨拶のために席を外していたロランが戻ってきた。聡いロランはユキに抱かれたアデルを見て、全てを察し、心配そうに見つめる。


「この酔っ払い姫様は、今日はもう仕舞いだと伝えろ。」

「わかった。アデル、お大事にね。リューも潰れているけど、あとは僕が対応するから。」


そのままアデルはユキに抱かれたまま、瞬間移動で部屋まで連れて行かれた。


飲みすぎて気持ち悪かったはずなのに、ユキの腕の中は暖かく、いい匂いがして、心地よくて、アデルはそのまま眠ってしまった。


「まあ、アデル様。どうしたのですか?」驚いたミーナの声がする。

「初めての酒に調子に乗って、飲みすぎただけだ。このまま寝かせてやってくれ。」

「承知しました。アリシアの魔導士様、あとは私がやりますので。」


そっと冷たいシーツの上に優しくおろされる感覚したが、アデルは眠すぎて目を開けることができない。

柔らかな寝息をたてるアデルを見つめながら、ユキは何かを思案していた。


「おやすみ、アデル。いい夢を。」


優しく額を撫でられた感覚を最後に、アデルは完全に眠りの世界に入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ