表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第2・6章 青春・気分転換

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/41

七瀬との釣り

「ねぇ! 川に魚釣りに行こうよ!」


 七瀬にそう言ったのは、六月末の放課後だった。



 七瀬と別れた帰り道、俺は少し浮かれながら歩いていた。


 倒れたとはいえ、七瀬がまた無理に勉強をしてしまう可能性がゼロとは言い切れない。

 そう思った俺は、七瀬が勉強しないよう、家の外に出すことにした。

 せっかく身近に自然があるので、釣りで気分転換でもしてもらおうかと思い、誘ってみたらうまくいった。

 

 七瀬と一緒に遊びに行けることが、とても楽しみだった。



 だが、次の日。

 朝九時半頃、母さんが部屋をノックし、入ってきた。

 そして、七瀬の母さんから電話がかかってきたと、母さんに言われた。

 俺は母さんのスマホを借り、電話に出た。

 


「あ、正道くん。ごめんね、休日なのに連絡しちゃって......」


「いえいえ。それより、どうしたんですか?」


「実は、七瀬が今日釣竿を買いに行ったのよ。ふもとの街まで......」


「えっ!?」


 俺は驚いた。

 それと同時に、不安になった。


「い、今の七瀬がふもとまで出かけたら、誰かに男装していることを指摘されるんじゃ......」


「実は、釣具屋の店主が指摘しそうになったのよ」


「それで、七瀬はどうなったんですか......?」


「お父さんが一緒に行ったんだけどね、今はジェンダーレスで性別関係なく自由な服装をするのが普通だから、って言ってなんとかなったんだけど......」


「そ、そうですか......」


 俺はホッとした。

 バレなくて本当に良かった。


「でも、今回は大人が相手だったから良かったけど、子どもが相手となると、いきなり指摘しちゃったりするでしょ? だから、七瀬ちゃんが遊びに来るってことにして、すぐに帰ってきてもらうようにしたの。その後、急用でキャンセルになったって伝えるつもりよ。だから、七瀬に何か聞かれたら、急用ができたって答えてちょうだい」


「分かりました......。......それと、すみませんでした。俺が釣りに行こうだなんて誘うから、七瀬はふもとに......」


「いいのよ。それより、七瀬のこと、よろしくね」


「......はい」


「それじゃ、切るわね」


 携帯の画面を見ると、通話は終了していた。


「......今後は、気を付けないとな」


 今後は、七瀬がふもとまで行く可能性がある誘いはしないようにしようと、心に誓った。



 次の日、今日は七瀬と釣りに行く日だ。

 朝食を食べ、着替える。

 それから、リュックサックの中身を確認してから背負い、クーラーボックスの紐を肩にかけ、外に出た。

 日差しはいつもよりも強く感じた。

 おそらく、今日はいつもより暑いだろう。


「ちゃんと水分補給しないとな......」


 俺は、鞄から凍った水が入ったペットボトルを取り出し、少し飲んだ。

 歩いては飲み、歩いては飲みを繰り替えし、七瀬の家へと向かった。



 ペットボトルの水が半分になった頃、七瀬の家に到着した。

 玄関の扉を開けると、釣竿などの荷物に囲まれた七瀬が座っていた。


「おはよー。今日は朝から暑いねー」


 運動したわけではないのに、汗だくになってしまった

 俺はTシャツを指で摘み、パタパタと仰ぐ。


「正道も準備できてるみたいだし、それじゃあ行こうか! ......ってあれ? どうしたの?」


「いや、何でもない。何でもないから」


 七瀬はそう言うと、立ち上がって釣竿と鞄、クーラーボックスの準備をした。


「じゃ、じゃあ行ってきまーす!」


 準備を終えた七瀬がそう言うと、七瀬と共に釣りへ向かった。



 畑に囲まれた道を歩き、途中から森へと入り、草で生い茂った斜面を登っていく。

 川までのルートは林の中なので、直射日光を避けられて少し涼しかった。


「もうそろそろだよな......?」


「うん! もうすぐ!」


 七瀬に聞かれ、俺はもうすぐだと返事をした。

 少しだけ、七瀬の息が荒い気がするが、大丈夫だろうか。

 七瀬の顔色を窺いながら、俺たちは川へと向かった。



「見えたよ!」


 俺は川を指差す。

 川の中流であるため、そこそこ勢いがあった。

 俺と七瀬は荷物を砂利の上に置き、腰を下ろす。


「はぁぁ......! 疲れた......!」


 七瀬は相当疲れたのか、砂利の上に寝転んでしまった。


「お疲れー。お水飲む?」


 俺はペットボトルを鞄から取り出し、七瀬の額に置いた。


「冷たっ! あ、ありがとう......」


 七瀬はペットボトルを受け取り、体を起こす。

 そして、水をごくごくと飲み始めた。


「それじゃ、さっそく釣りしよ!」


 俺は肩にかけていたクーラーボックスを置き、その上に座った。

 そして、鞄から取り出した餌を針に取り付け、川に投げ込んだ。


「すげー手際良いな」


「へへっ。釣り好きだったからね。正道はあんまりやったことない感じ?」


 昔、父さんに川に遊びに連れて行ってもらったことが何度かあったので、釣りには慣れている。

 最近は演劇の練習に力を入れるため、一緒に出掛けることはなくなってしまったが、まだ体が覚えていた。


「は、恥ずかしながら......」


 どうやら、七瀬は釣りをほとんどしたことが無いようだ。

 しかし、最低限の知識はあり、自分で餌を取り付け、竿を振った。



 それから、俺と七瀬はボーっと川を見つめながら、魚が引っかかるのを待った。

 そんな七瀬を見て、勉強から離れて休めているかな、と思っていた。


「おっ? おおっ!?」


 突然、俺の釣竿に魚がかかった。

 リールを回しつつ、必死に引っ張っている。


「七瀬、手伝おうか!?」


 七瀬は立ち上がり、俺の後ろから釣竿を持つ。

 そして、一緒に引っ張ること数十秒。

 釣竿を引いた瞬間、川から四十センチほどの魚が飛び上がり、地面へと落ちた。

 

「やった! 釣れた!」


 俺は魚の口に刺さった釣り針を外すため、魚に駆け寄る。


「なんの魚だ?」


 七瀬はポケットからスマホを取り出して調べようとした。


「正道ー! 手伝ってよー!」


「あ、悪い」


 七瀬は魚に駆け寄り、体を抑える。

 その間に、俺は釣り針を外した。


「よっこらせっと......」


 俺は魚を運び、クーラーボックスへと入れた。


「すごいな。そんな軽々と運べるなんて」


「え......? あ......。こ、これも演劇の訓練の賜物かな?」


 腕を曲げ、上腕をポンポンと叩く俺。

 一般的に男性の方が力が上だから、なんて絶対に言えない。

 振る舞いだけでなく、身体能力に関しても気を付けなければいけないな、と思った。


「それに比べて俺は......」


 俺と自分を比べ、落ち込む七瀬。


「ま、まぁ正道は頭いいから......!」


 すかさずフォローしたが、七瀬は落ち込んでしまった。



 それから数時間後。

 日陰のこの場所も気温が上がり始めた。


「正道? 大丈夫?」


「ああ、ちゃんと水を飲んでるから、大丈夫だとは思う」


 七瀬はペットボトルに入った水を飲む。

 日陰なので分かりにくいが、少しだけ顔色が悪いような気もする。


「本当に大丈夫......?」


「大丈夫だって......」


 そう言いながら、スマホのカメラ機能で自分の顔色を確認する七瀬。


「......あれ?」


 次の瞬間、七瀬は急に頭を手で押さえ始めた。


「正道? 正道!?」


 俺は正道と声をかけながら、七瀬に駆け寄る。


「大丈夫!? ねぇ!」


「あ、頭が......」


「どうしよう......! と、とりあえず横にして......!」


 俺は七瀬の体をしっかりと持ち、地面に寝かせる。

 そして、七瀬は気を失ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ