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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
エピローグ

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最終話 こじらせ人形師は嫁を愛する。


 目覚めるとそこは真っ白な──。


(ぬ、布?)


 真っ白な布が眼前に拡がっていた。

 正確に言えば二つの柔らかな膨らみと奥に見える白い肌と金髪が目に入ってしまい現実に引き戻される。


(そう、か。ミヤって、あのミヤか。俺を振った。でも、何で同じ世界に?)


 引き戻されつつミヤが居る理由を考える。

 前世では確かに付き合っていた。死ぬ直前で手酷い別れを突きつけられ絶望のまま記憶が途切れた。それがどういうわけか病子(ヤミコ)の記憶と合成され俺の中で魅夜(ミヤ)という扱いになっていた。

 病子は俺にとって女友達の認識だった、


「それでミヤが病子だって暴露してないの?」

「それをする前にシュウが亡くなったもん!」

「愚兄の命令で別れ話なんてよくやったよね、断れば良かったのに。それさえ無ければってこじれる事も、転生している身の上で、たらればを言っても仕方ないけど」

「本当はするつもりは無かったよ、結婚を前提とした関係だったし。しないと学校の友達にバラすって脅された以上はさ。それに反論すれば認めるって言われて」

「シュウに反論が出来るわけないじゃん。愚兄の威圧的な性格とは正反対だったし」

「それは分かってた、分かってはいたけど」

「はいはい、それで暴露して関係を結ぶの?」

「そのつもりだけど、許されるかな?」

「大丈夫じゃない。病子として懺悔すれば」

「同じ懺悔ならマリアもね。シュウの初めては寝てる間にマリアに喰われていたから。そのまま行くところまでいってたけど」

「ホント、困るようなオチを与えられたわ」


 マリアとの会話が耳に入ってから同一人物だと知ってしまった。今は周囲の雑音が聞こえておらず馬車の中ということだけは分かった。

 おそらくサーシャ達も空気を読んで俺達だけを残したようだ。リクは連れて行かれたか。


(今となってはリクはどうでも良くなったからいいか。中身が近くに居るのだから)


 そう考えると俺も幾分、チョロいらしい。

 いや、今世はともかく前世がチョロかったのは確かだな。病子やマリアのような女友達はともかく、交際と呼べる関係は一切無かった。

 それがどんな経緯があって病子もとい魅夜が好意を持っていたのかまでは分からないけど。


(そういえば違和感はあったよな。病子の尻と魅夜の尻の感触が同じだったし、別人扱いが俺の認識を曇らせていたって事か──)


 今となっては全て過去の事。今世では魅夜もミヤとして転生し、マリアも近くに居た。


「それこそ死んだ経緯も含めて言いなさいよ」

「シ、シュウの骨壺と御対面して飛び出してバスに飛ばされたとか笑い話にしかならないよ」

「私はどうなるのよ。電車でドンよ?」


 と、思ったらマリアからの苦言で知った。

 聞き耳を立てていた俺はこれ以上聞くのは悪いと思い、目を開けて起き上がる。


「あ、起きったーい! おっぱいが痛い」

「弾力がすげぇ」


 ミヤの下乳に額が直撃した。


「ぷっ。胸の反発で膝に戻されてる」

「マリアは笑い過ぎ!」

「ごめんごめん。で、聞いてたでしょ」

「うっ」


 しかもマリアから俺の意識が目覚めていた事に感づかれた。何処から気づいていたのやら。

 俺はミヤの胸を避けるように起き上がり隣に座り直す。今まではミヤの膝枕だったのな。

 俺が起きるとミヤはきょとんと聞いてくる。


「え? 聞いてたの?」

「と、途中から」


 今はバツの悪い顔になっていると思う。

 俺達の様子を見つめるマリアは口元を押さえたニヤリ顔だ。喰った事は詫びてもらうか。

 最後までいった事は俺もうろ覚えだけど。


「じゃ、じゃあ?」

「ああ、俺の勘違いだったって気づいた」

「な、なら」


 横目でチラッと見るとミヤは期待を持った顔になっている。俺自身も嬉しい反面、まだ『実在女は信じるな』と叫びが聞こえるから簡単に自分の状態を変化させるのは難しいと思う。

 でもそれを改善させる手段はすぐ浮かんだ。

 難しいからこそ、一言だけ願い出た。


「そ、その前に、い、今のミヤで、作っていいか?」


 それは純粋な好奇心から出た願いだ。

 願っている事は結構、ド変態に近い。

 自覚して願うのだからやりきれないが。


(でも、リクの人形の事とか考えると既に手遅れのような気もする。あれも今思えば女性である魅夜を思って拵えたような人形()だ)


 夜伽的な機能も稼働する扱いだが、あれもリクの遺体から回収した記憶がそこそこ使えるから残しただけだ。だがそれも必要が無くなった。

 本人が居るなら本人に願えば済むから。

 まぁミヤからはきょとんをいただいたけど。


「はい? い、今の私って?」

「わ、分かるだろ、ここまで言えば」

「マリアは分かる?」

「こじらせの原因はミヤなんだから分からないって流石に酷いよ?」

「マリアに分かってミヤは分からないって」

「い、いや、だってどういう意味なのかって」


 こいつ、俺の状態が分かって無いじゃん。

 そのまま愛されるものって思ってないか?

 自己分析して今のままだと俺は普通の恋愛は出来ないと分かっている。利益前提のサーシャと違ってミヤは純粋に愛情を向けてくるから。


「俺の職業は?」

「人形師だよね」

「リクの人形は?」

「前世の私だね」

「そこで分かるだろ」

「そこで、え? ほ、本気なの?」

「「やっと気づいた」」


 それを向けられて今の俺に受け入れる余裕があるのかってなると多分無理だ。内なる叫びが消えない限り、普通の恋愛は無理だから。


『実在女に惑わされるな。信じるな。そいつらは悪だ。害悪だ。愛するのは人形だけでいい』


 って、今もなお内側から溢れてくるからな。

 こじらせる原因その物の叫びには代替品を補うしか誤魔化せない。それはリクの人形で反応しない事が証明されたから。


(ホント、難儀な病気を患ってるよな、俺)


 これも死する直前の怨念めいた何かがこびりついているのだろう。現に『魅夜を許すな』って声もあるからな。よほど亡くなる直前の絶望が相当だったと思える話だ。今の俺にとっては迷惑極まりない執着となっているが。

 それを黙らせるため願う俺もどうかと思う、


「で、返答は? それ次第になると思う」


 これが今の条件だからどうしようもない。

 ミヤは苦渋の表情で思案する。心情的に受け入れられない感じになるよな、付き合う彼女の等身大人形を欲するとか異常すぎるし。

 自分でもおかしいと思うし。

 でもそれをしないと折り合いが付かない。


「な、なら私からもお願いがあるけどいい?」

「「お願い?」」


 出てきたお願いは俺とマリアが顔を見合わせる物だった。マリアにとっては巻き添え事案。


「ま、まぁ、いいか。婚約自体はしてるし」

「え? 俺、覚えが無いぞ?」

「母様と伯母上の間で成立してるからね」

「あぁ、俺の頭越しか」


 巻き添えだが寝耳に水な暴露もいただいた。

 そうなるとサーシャがどういう反応になるか分からない。だから連絡魔導具越しに問うと、


「別にいいですよ。既に見られてますし、全員で婚姻しますし、気にしても仕方ないですし」


 少々投げやり気味の答えをいただいた。

 多分、二年前の出来事を出されたようだ。

 ただ、あの時は見覚えのあるカミナ殿下しか見えてなかった。治療時にも見てるからな。

 またも驚きの一言があったけど。


「え? 全員って?」

「今だから言いますけど、ミヤも第三夫人で婚約済みになってます。このまま成人して婚姻ですね。それと、母上が騒いでいるので早く合流して下さいね。叙爵式が始められないので」


 ミヤとも頭越しで婚約が決まっていた件。

 ミヤ自身は知っていたということだろうか。

 いや、マリアも知っていたのか。

 俺は呆然としたまま二人と馬車を降り、


「前世の俺じゃ考えられないオチだわ」

「そうだよね。ロリ巨乳のマリア様」

「そうだね。地雷ヤンデレ女のミヤさん」

「ロリ巨乳って言わないで!?」

「私は地雷女を卒業したの!!」


 背後でキャットファイトを繰り広げる将来の嫁達とパーティー会場に入った。



  §



 それから四年の年月が流れた。

 俺はオルト大公として人形師として新たな嫁造りに邁進した。ミヤ達を見本に造った嫁達は俺の助手として仕事を熟し、シャル達と共に領地を盛り立てていってくれている。


「ヤミ、そっちの黄銅頼む」

「分かったよ」

「リアは図面運び手伝ってくれ」

「はーい」

「サーヤはシャル達と茶の用意を」

「はい、貴方。分かったわ」


 夜は夜で夜伽も行っているけど、これは嫁達公認の事なので誰も文句を言わない。現に本来の嫁達は嫁としての本分を全うしつつ今は子育てに邁進中だ。


「マイカを連れて王宮に行ってくるわね。帰りは夕刻だからサーヤに夕食の用意を頼んでね」

「おう、気をつけてな」

「レイカと道場に行ってくるね。リアのお尻を撫ですぎたらダメだからね?」

「き、気をつけるよ」

「ユウキと工房に行ってくるよ。ヤミのお尻だったら揉みまくってもいいよ?」

「ミヤ!? なんでそういう事を言うの!」

「でも結構、好きだよね?」

「うっ。うん、大好き」

「コントはいいから、気をつけろよ」


 若干、名前違いの同じ顔が揃うから混乱するけどな。それぞれの子供はサーシャが産んだマイカが長女。マリアが産んだレイカが次女。

 ミヤが産んだユウキが嫡男だ。

 洗礼では全員が人形師を与えられた。


「お前達も気をつけて行ってこいよ」

「「「はーい! 父様」」」


 ただ、俺の家では王宮のような二の舞は御免とし王位継承権も母様との交渉で与えない事とした。行えば第二第三のカイナ・カミナを生み出す事にもなるからな。そこに付け入る隙を与え、旧帝国のような間諜を招きかねないから。


「静かになったな。さて、今日はどのような人形でも造るかね? ロケットパンチはサーシャから止められたから、おっぱいロケットか?」


 そうして俺は助手達に囲まれて人形を造る。

 異世界では出来なかった特殊な人形達を。

 異世界に生まれ落ちて十九年。


「変形合体は、やめとこ。ミヤに怒られる」


 精神年齢では三十五歳だが、俺のミヤ愛と人形愛は日に日に高まっていくだけだった。




 この作品はこの話で完結です。最後まで駄文にお付き合いいただきありがとう御座いました。

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