その8「……いや、どうせそんなこったろうとは……(諦め)」
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「そ、そ、そんな!? 無茶ですよ!!」
--な~にが無茶なもんか。別に海の底に潜れとかでもない。たかが学校のプールじゃぞ? そのくらいどーってこともないじゃろが。
「無理ですよ!? 僕まだ、足がつかないトコで泳いだこと無いんですよ!? フツーに溺れますって!!」
--そこはノープロじゃ。あの怪異ができるぐらいのことはとーぜん吾輩もできる。水中でも息ができるようにしてやるから安心せい。ついでに碧衣を見つけやすいよう視界もクリアーにしてやるぞい。
「で、でもぉぉぉぉ!!!」
--ああもうじれったい奴め! いいからさっさと覚悟を決めんか! そうでなければ……
「そうでなければ?」
--せっかくの三姉妹のピンチシーンを見られんではないか! くそぉ、怪異め! どうせなら水の上でやれ! 水の上でッ!!
「やっぱそっちが目的かい!」
何が「ついでに碧衣を見つけやすいように」だ!……と、腹立たしくはあったが、とはいえ、玉神の言う通り、覚悟を決めるしか無い状況なのは分かる。
でもやっぱり足がすくむ。何故なのかは分からないが、溺れてしまいそうな深さの水を前にするとこうなってしまうのだ。さっきまでは碧衣の圧に押されて感覚が少し麻痺していたが、自分一人で入るとなるとやっぱり恐怖が込み上げてくる。
それでも何とか飛び込み台までは来たものの、それ以上は一歩も進めなくなって、やっぱりダメだ……と宗春がギュッと目をつむったそのとき--
〈……おねがい……たすけて……たすけてよぉ、宗春~~~ッ!!〉
(--ッ!? な、何、今の声……??)
突然脳裏に響いた声に、ハッと宗春は目を開く。碧衣や三姉妹の声では無い。もっともっと幼い女の子の泣き声だ。でもそれは決して知らない声では無くて、むしろ自分は確かに「この声」を知っている。でも、それが一体誰なのかは、どうしても思い出すことができない。こんなにも「聞き覚えがある」のに、一体、どうして……!?
〈こわいっ! こわいよおぉ! たすけてっ! わあぁぁぁんん!!〉
(……ッッッ!?)
しかも次の瞬間、泣き声に続いて「情景」までもが記憶の底から浮かび上がる。次第にかさを増していく水の中に、今にも沈みそうになっているドレス姿の幼い少女、顔ははっきりとは見えないが、長めの髪を振り乱しながら必死にこちらに手を伸ばしてくる--この子は一体??
--だが、それもあくまで一瞬のこと。たちまち声も姿もかき消えてしまい、ただただ混乱する宗春だったが、でもその不思議なビジョンを契機に、心の中から恐れの感覚が消えていく。
そうだ、怖がっている場合じゃない。僕がやらなきゃ、誰が碧衣さんたちを助けられるんだ--!
「うわあぁぁぁぁぁっ!!」
もちろん台から華麗に……とかは無理だが、宗春は身体を前に飛ばして、お尻からドボン!とプールに飛び込む。かなづちだけにたちまち水に沈んでしまうが、ま、まぁあくまで学校のプールの深さだし、じきに足が着くはず……
(……って、深ッ!?)
足が付くどころかそのままズブズブ沈んでいって、たちまちパニくりかける宗春! そう、初心者レーンにはプールフロアが設置されているので勘違いしていたが(その場合の水深は1.2m)、このプール自体の水深は通常で1.6m。更に今は水泳部の練習用に2mまで深くなっているため(可動式)、身長158cmの宗春だと楽勝で沈んでしまうのだ!
--だから落ち着けって。どんだけ深かろうが、息ができるんならどーってことはないじゃろうに。
(……ッ! そ、そっか。そうですよね)
玉神の呆れ声に、宗春はハッと我に帰るとまずは気持ちを落ち着かせる。確かに水中だというのに全然息苦しさを感じないし、目だって普通に開けられる。これなら……!
(よしっ!)
自信を持った宗春は、完全に沈んだ状態のままプールの底を進んでいく。玉神は三姉妹の方向を見たがってうるさいが、そんなことより(そもそも見せるわけにはいかないし!)今は碧衣さんを----居たっ!
(あ、碧衣さんッ!?)
碧衣はプールの底にぐったりと仰向けで横たわり、長いまつげを伏せて眠るように目を閉じている。一瞬、最悪の想像をしてしまったが、胸元が緩やかに動いている気がするし、おそらくは気絶してるだけだろう。うん、多分そうだ。だって--
(「水着」が「とんでもないことに」なってるから、じっくり確認できないしッ!!)
いや、その、きょ、競泳水着ってあんなに伸びるの?? 完全にその……こぼれ出ちゃってるし……! うわぁ……碧衣さんの、あかりさんやキイロさん程は大きく無いけど、すごく形が整っててキレ……って、し、しげしげ見たわけじゃないからね!? チラッと見えちゃっただけだし、水の中だからハッキリも見えないからッッ!!
--さっきから誰に言い訳しとんのじゃ、お前は。ほれ、いいからさっさと助けんかい。
(で、でもこれからどうすれば!?)
不幸中の幸いというか、怪異の本体は少し離れた場所に移動しており、囚われ状態の碧衣は水底に無造作に放置されている。しかも怪異は現在三姉妹に夢中で、そのおかげもありここまでは気付かれずに来られたわけだが(囮にしてごめん、村上さんたち!)、でも「連れて逃げる」となればさすがに怪異も反応するだろう。
かといって、肝心の碧衣が気を失っている以上、蝶ネクタイを渡すこともできないわけで、ホント、一体どうすれば……??
--え? そんなのおっ〇い揉んだら起きるんじゃね?? せっかくポロリ☆としておるわけじゃし、ほれ、あかりにしたみたいに〇首をクリクリクリ☆って♪
(起きた瞬間、僕が殺されますよ!?)
お気楽に言ってのける玉神に反論しつつも(てか、絶対自分がしたいだけだろ!?)、やっぱそういう手段になるのか……と青ざめる宗春。いや、そりゃ「健全な男子」として、興味が無いわけじゃないけど、でもそれ以上に後が怖い!!
--というのは「玉ちゃんジョーク」で、今のまま起こしても無駄じゃな。碧衣はどうやら怪異に《エナジー》をたっぷり吸われて戦闘不能状態じゃ。具体的に言うと、盛大に〇〇されたばかりで精根尽き果てておるようじゃな。いわゆる「失神〇ク〇」的な?
(そんなの、具体的に言わなくていいですから!!)
慌てて宗春がツッコみを入れるも(だって、そんなこと言われたら想像しちゃうし!(汗))、玉神はサクッとスルーして解説を続ける。
--故に今の碧衣では「戦う」どころか「変身」すらできんよ。とはいえ、それでも「復活させる方法」自体はありはするが、な。
(え、そんな方法あるんですか!?)
--な~に、簡単なことよ。《エナジー》が尽きたというなら、吾輩の《神気》を授けてやればいいのだ。そうすればたちどころに復活できるばかりか、パワーUPまで果たせちゃうという寸法よ。さっすが玉ちゃん、頼りになるぅ♪
(……………………具体的な方法は?)
一瞬、期待した宗春だったが、でもそれなりにこの神様のタチの悪さを理解しているだけに、すぐさま警戒モードに入る。いや、どうせまた「ろくでもない方法」に決まってるというか……
--そりゃ当然「口移し」じゃな。ほれ、溺れた相手には「人工呼吸」が基本じゃろ? 体内に直接エナジーを行き渡らせるには、それが一番効果的じゃて♪
(やっぱりか~~~~!!)
あまりにも予想通りの玉神の言葉に、宗春はたちまちげんなりする。いや正直「逆らっても無駄」というのも分かっているが、でも一応聞くだけは聞いておく。
(…………他の方法は無いんですか?)
--んー、本番行為は《神の使徒》的にアウトじゃから、後はち〇ぽを口にツッコむぐらい?
(やりますよ、「口移し」! すればいいんでしょ!!)
やけくそでそう返答すると、宗春はそれ以上の抵抗を諦め、碧衣のすぐ近くにまで接近する。そしてまずは蝶ネクタイを首元に置くと、シュルルル……と自動的に紐が首の周りを巡って装着完了。となれば次は……と宗春は顔を上げ、気を失っている碧衣と正面から向き合う形になる。
改めて見ると本当にすごい美人で、こんな人にこれから「口移し」をするのかと思えば、それだけで恐ろしく緊張してしまう。だけど、碧衣さんを復活させるためには、他には方法は無いわけで!!
(これはあくまで「人工呼吸」、あくまで「人工呼吸」……)
自分にそう言い聞かせつつ、碧衣の紅い唇に向け、宗春が恐る恐る唇を近づけていった--そのとき!
パチッ☆
(…………え”え”え”ええッッッ!!??)
不意に碧衣のまぶたが開いて、まさに心臓が飛び出る程に驚いた宗春の身体が、背中に回された碧衣の両手にグイ!っとばかりに引き寄せられる!
とはいえ、おそらくは寝ぼけているような状態なのだろう。トロンとした目つきのままの碧衣は、続いて「ンッ☆」と色っぽく唇を突き出したかと思うと、
一体「誰」と勘違いしているのか、動転するばかりの宗春の唇めがけて、ムチュッ☆とそれを押しつけた!
「んんんんんんっっ!?(訳:あ、碧衣さんっっ!?))
驚愕に目を剥く宗春の「中」に、すかさず侵入した碧衣の舌が、獲物を襲う蛇さながらにニュルリ♪と舌先に絡みつく! そしてそのままネロネロ動いて、されるがままの宗春の舌を隅から隅まで舐め回した!
「んんっ!? んんんんんんんっっっっ!!」
何これ!? 上手い、滅茶苦茶上手い! いや、宗春としてはこれが2回目の「大人のキス」だが、そんなビギナーな宗春であっても分かるぐらいの、それは圧倒的なテクニックでッッ!(注:ちなみに碧衣は舌でサクランボが結べます)
(こんなの……こんなのおかしくなるぅぅ……ラッ……ラメェェェ☆☆☆)
碧衣の凄すぎるキステクの前に、助けに来たはずの立場も忘れて、宗春はたまらず悲鳴を上げる! だが、そんな風に「限界」を迎えそうになっていたのは、何も宗春だけではなくて--!
--うおおおおおおおっ! なんちゅう……なんちゅう悦楽かッッ! 吾輩、タマランチ! タマラ~~ンチッッ!! (☆ω☆)
もちろん「口移し」に向けて「感覚同期」をしていただけに、碧衣のキス技は玉神をも圧倒ッ! て言うか、ほぼ「即堕ち」で玉神が叫ぶと同時に、それに反応した碧衣の蝶ネクタイがカカッ!とまばゆい閃光を放つ!!
そして碧衣のまとう競泳水着がバラバラに吹き飛んでいくのに続いて、青を基調にしたバニースーツが光の中で次々と生成されて--
やがて光が収まった後、プールの水底に顕現していたのは、青の《バニー戦士》である《バニーブルー》へと変身を遂げた、小早川碧衣の姿であった!!
いよいよ変身!ということで、次回大バトルです!
それでは続きはまた明日~☆




