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学園戦兎トリプルバニー!~えっちな怪異は許さない!バニー戦士の三人娘は「ピンチ」に負けず魔を祓う~  作者: 優パパ★&タマネギーニョ
第5話「祝・高校入学おめでとう! 新しい出会いが続々です☆」
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その6「ほな、『学園探索』と参りましょか♪」

続きデス!

その6「ほな、『学園探索』と参りましょか♪」


 --「それ」は、三ツ矢学園高等部の可燃ゴミ置き場で目覚めた。


--マダ……終ワレナイ。


 「それ」は長い期間、人に「道具」として使われ、すでにボロボロの状態だった。手垢で汚れ、日の光で色あせ、あちこちがすり切れ、綻びている。


 その摩耗ぶりから見れば、長らく「備品」として重宝されてきたものの、さすがに買い換えることになったのだろう。人の手によって作られた「道具」が、人に使われ、その役目を終えて処分される。人からすればそんな実にありふれた話にすぎない。だが--


--終ワレナイ……終ワリタク……ナイ……!


 「付喪神」と呼ばれる存在がある。長い年月を経て使われた「道具」に「神霊」が宿るというものだ。本来なら「九十九神」とも書かれるように、それには百年に近い歳月が必要なはずだが、この地の持つ特別な《霊性》と、この道具の持ち主が「密かに隠し持っていた欲望」が交わり合い、たかだか15年余り使われてきたにすぎぬ「それ」(と言っても長く使われてきた方だとは思うが)を、廃棄される寸前に目覚めさせたのだ。


 ……とはいえ、単純ながらも自我を持ち、ゆっくりとなら自分の意志で「這い回れる」ようにもなったものの、できることはせいぜい女子生徒を脅かすぐらい。わずかになら捕まえたこともあるが、あっという間に振りほどかれてしまった。


--チカラダ……チカラガ足リナイ……


 せっかく目覚められたというのに、このままではろくに成長することもできず、やがては消え去ってしまうだろう。そう思うと心に焦りが生まれ、隠れ家である草むらの中でとぐろを巻きながら、「それ」は懊悩を続けていたが……


「--ほぅ、これは『蛇』かと思えば……なかなか珍しいタイプの《なりそこない》ですね」


 突然、身体に影が差したかと思うと、上から若い男の声がする。慌てて「それ」は逃げようとしたが、すかさず身体を踏みつけられ、動きを封じられてしまった。


--ま~た変なの捕まえちゃってぇ。そんなの役に立つの~? もっと強そうなのにしたらいいのにさー


 じたばたともがく「それ」の聴覚に、続いて呆れたような若い女性の声が聞こえてくる。だが、男はそんなツッコミなど意にも介さず、興味深そうに「それ」を観察しながらつぶやいた。


「なかなかどうして、この《なりそこない》はかなりの『濃い欲望』を宿しています。もしかしたら大きく化けるかも知れませんよ」


 検分を終えた男は、「それ」をひょいとつかみ上げると、手にしていた捕獲用の袋の中にガサッと入れる。今は春休み中なので人目が少ないとは言え、あまり長々と時間を潰していると、万一見られた時に不審に思われてしまう。続きはあくまで「研究室」でだ。


「では、帰って早速実験してみましょう。フフ、どんな《怪異》が誕生するか、今から楽しみというものですね--」


 楽しそうにそうつぶやきながら、男はその場から立ち去っていく。


 これが、三ツ矢学園高等部で入学式が行われる、その2日間前に起こった出来事である--


     ※       ※


「しっかし、さすがお嬢様学校やなー。なんのかんので、ちいちゃんかて『社長令嬢』やし!」


「そ、そんな大げさなものじゃないよ! ちっちゃな果樹園を経営してるってだけで……」


 ぶんぶんと首と手を同時に振る千景=ちいちゃんに、けれど知由美は「うらやましいわ~」と大げさにため息をつく。


「ウチなんかブン屋の娘ってだけで、単なる『庶民』やもんなー。こりゃあ上手いこといったら玉の輿に乗れるで、ムネムネ♪」


「何ですぐそんな話になるのさ!? あとその呼び方やめてよ!」


 女子トークだと油断していたところに突然振られ、慌てて抗議する宗春に向かい、知由美はニマニマ笑って続けた。


「あら? お気に召さへん? じゃあ、ムネキチ? あはは、なんか『おっぱいマニア』みたいやなぁ~☆」


「だからそういうのやめてってば!」


 女の子が「おっぱい」なんて単語を平気に口にしないで欲しい! それも仮にも男の前で!!


 それにそういう名前弄りは、結構トラウマを刺激するのだ。この名前は死んだお父さんが「胸を張って生きろ」って意味でつけてくれたらしいのだけど、いじめっ子たちには散々ネタにされたもんなぁ……「お前女の子みたいだし、もしかして『胸有る』んじゃね?(ゲラゲラ)」とか……


 ちなみにそういう自分は「ちゆピー」って呼んで欲しいそうだ。何でもそもそも彼女の名前は父親の勤める新聞社のマスコットにちなんで付けられたものらしいけど、ごめん良くわかんない。岡山の新聞といったら山〇新聞(シェアは何と65%)だし……


「え、えーと、じゃあ2号館の紹介をするね!」


 リアクションしづらい発言の数々に、終始困り顔の千景であったが、そこは見た目通りの真面目さで「ガイド役」はしっかり勤めてくれる。


「本館は主にホームルーム教室があるけど、2号館は特別教室棟なの。中等部の頃から使ってるから、私たちにとってはむしろ本館より馴染みがあるんだよ」


「でもいちいち外出てから回るのめんどいなー。普通やったら渡り廊下でつなげるやろ。そんなら教室からすぐいけるやん」


「それは思わなくもないけど、デザイン的なこだわりがあるんだって。でも2号館と隣の事務棟は3F同士つながってるんだよ」


 なるほど、入り口に掲示してある館内図を見ると、3Fは各教科の準備室になっていて、廊下の奥の扉を開けたら渡り廊下があるようだ。


「で、渡り廊下を渡ったら第2食堂があるの。と言っても、あんまり生徒は使わないんだけどね。基本は先生や職員さんたちのための食堂だから」


 なるほど、だから3Fだけ渡り廊下があるのか。でもって、生徒が使わない理由も分かる。そもそも昼休憩に行くには遠いのもあるけど、2号館からだと先生たちがいる準備室の前を通らなきゃだし、かと言って事務棟は「大人の職場」って感じで入りにくいし、行ったところで周りは教職員ばかり……と色々敷居が高いのだ。


 そう納得する宗春の横で、こちらは逆に探究心を刺激された様子の知由美が勢い込んで言葉を返す。


「せやけど三階やから眺めはええやろ? 知る人ぞ知る穴場スポットやって聞いて、行ってみたいって思うとったんや。生徒用の第1食堂は半地下やって話やし、せっかくの入学式の後や、気分アゲていきたいやん。絶対そっちの方が気持ちえーって♪」


「そうだね、私も初めてだから興味はあるし、ちょっと怖いけど、みんなと一緒でなら行ってみたいかも」


 そんな知由美に合わせるように、ニコッと柔らかな笑顔を浮かべる千景。宗春は宗春で、土橋さんすごいリサーチ力だなぁと驚きつつも、入学式後の昼食だけにレアな経験をしてみたいというのは同感だ。少なくともコンビニ弁当ですますよりはいいに決まってる!


 と言うことで、三人は2号館のエントランスからそのまま中央の階段をのぼり、渡り廊下のある3Fへと向かう。今日は入学式のみの日なので、他に生徒がいる様子も無く、明日からの新学期スタートに向けて会議でもしているのか、先生たちの姿も無い。


(何だかこう人気ひとけが無いと、正直……)


 本来賑やかな場所であるはずの校舎がシーンと静まり返っていると、何だか無性に心細い気持ちになる。しかも階段をのぼり出してからというもの、急に知由美が静かになってしまったからなおさらだ。更に言えば、玉神も一向に話しかけてこない。まぁ多分こっちは移動には興味無いのでゲームでもしてるんだろうけど……


「--そう言えば、内部生のちーちゃんなら当然知っとるやろうけど」


 そのとき、不意に先頭を行く知由美が立ち止まったかと思うと、ゆっくりとこちらを振り返る。出し抜けだったし、しかも今までとは違う低~い声だったせいで、千景だけで無く宗春までビクッとしてしまったが、知由美的には狙った通りのようで、ニヤッと楽しそうに笑って言葉を続けた。


「なんかアレらしいなぁ。この学校って、たま~に変なのが出るんやろ?」


(な……?)


 思わぬ発言に、事情を知る宗春は今度はドキッとさせられるが、横の千景もまた「……ッ!」と動揺が隠せぬ様子で、キョロキョロ辺りを見回した後、声を潜めて言葉を返す。


「ど、どこから聞いたの……? その話……」


「その様子やと、やっぱ有名らしいなぁ。ウチな、実はそういうのに興味あるねん。オトンは真実を追求するブン屋やけど、ウチは別の意味でこの世の真実を追究する、オカルトライターになりたいんや」


 知由美はフフンと胸を反らしてそう言うと、トレードマークのべっ甲眼鏡をキランとばかりに光らせる。


「せやから、ここに来たのは潜入取材も兼ねてるんや。だって人気の無い校舎とか、ほら、いかにも何か出そうやろ?」


「そ、そんなのただの噂だよ!」


 口ではそう言いながらも、やはり怖くなったのだろう。少し青ざめた様子の千景が、横に立つ宗春のブレザーの袖をキュッと掴んだ、そのとき!


 2Fの廊下の奥の方から、ガララ……と扉の開く音がした--!

ちなみに学園のMAPと教室配置図はタマネギーニョさんと

打ち合わせを重ねて作ったものがあるので、それをベースに書いています。

また設定紹介編で披露するつもりです。


それでは次回は土曜日にて!


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