第63話 仮面の下
六日目 夕方
その後も、作戦を決行する前に、できるだけの打ち合わせを行った。
それ以降は体力温存。
夕方。窓の外にたゆたう夕くらげを見つめながら、聖堂教会の部屋の中で待機。
イフィールさんは無事、未利もだ。コヨミ姫達とも連絡がついている。
その代わりアジスティアは助けられてないから、そこが不安だった。
こんな事はこれっきりにしたい。
姫ちゃんがアスウェルの能力を映して使えばすぐにループできるだろうけど、彼女だって大変だろうからできれば頼りたくないな。
やり直せるといっても、仲間に傷ついてほしくない。
窓の外でふよふよたゆたっている夕くらげを眺めていると、姫ちゃんから話しかけられた。
「考え事してる?」
「してない時ってないと思うよー」
こうみえて、けっこう必死なんだよね。
表情には出ないと思うけど。
でも恰好悪いから自分からはそんな事言えない。
「少しは元気でた?」
「もちろんー」
「うーん、強がってそう」
「あれー、逆効果だったかなー」
見透かされていたらしい。
おどけた態度で笑顔を繕うものの、姫ちゃんは心配そうな表情のままだった。
「取り繕うのには自信あったつもりだったんだけどなー」
「そうだね。最初はあんまり分からなかったよ。啓区って、自分の感情隠すの得意だなって。けど、今はちょっと分かるようになってきたかな。ううん、もしかしたら、色々思ってくれるようになった……? 悲しんでくれたり、喜んでくれたり。前はもっと距離を置いてたように見えたから」
僕はモブNPCだって、そういう意識だったからねー。
でも、運命は変わった。
変える事が出来たから。
だから、向き合う心が変わったんじゃないかな。
この世界に対しての。皆に対しての。
「姫ちゃん達のおかげでねー。僕もそれなりに希望がもてるようになったのでー」
「私が頑張ったんじゃないと思う。だって、私が何かして運命が変わるなら、啓区がいなかった世界でも、色々もっとよくできたと思う。でもそれができなかったから、今の世界がある。だから、運命が変わったのは、啓区が頑張ったからだよ」
そんな風に言われると、照れちゃうなー。
姫ちゃんは、何かに気が付いたように頷く。
「だから、……なのかな?」
「?」
「何でもない、こっちの話。尊敬してるよ。だから君をみならないと、って思ったくらい」
「あはは、過剰すぎる期待だと思うけど、受け取っておくよー」
夕暮れ空を眺めながらの穏やかな時間が過ぎていく。
そのわずか数時間後には、この町が地獄になるか、その平穏が守られるかの分岐点がやってくるだろう。




