第59話 励ましの言葉
僕は、うつむいたままでいる。
けれど姫ちゃんは何かを決心したようだ。
自分の胸に手を置いて、自分自身に誓うように、その言葉を述べていく。
「私に任せて」
「姫ちゃん?」
力強い言葉だった。
僕は思わず視線をあげてしまう。
そこで、視線が合った。
まっすぐに、強い意志を宿した少女の視線と。
「私が全部やってあげる。私が全部がんばって、問題も解決する。私が皆を助けるよ」
それはとても、らしくない言葉だった。
姫ちゃんなら、一緒にがんばろうって、落ち込ちこまないでってそう言うと思ってた。
厳しい言葉で相手を叱咤して、頑張れって励ますんだと思っていた。
そう思えば、相手も自覚していたようだ。
頬を染めながら、視線をちょっとだけそらす。
「うん、私も変な事言ってるなって思ってる。でも、なんでだろう。啓区がそういう顔してるの見たら、言いたくなくなっちゃった。本当は怒ったり叱るつもりだったのに。分からない事だらけだからかな? だってぜんぜん理由を話してくれないし」
それはそうだろう。
僕が話した事なんて、微々たるものだ。
ループの事や、さきほど発現した力の事もまだ行ってない。
この世界に姫ちゃんには、ループの記憶がないのだから説明しないと分からないはず。
でも、それでも姫ちゃんは、何かあったのだと気づいてくれている。
分からないなりに、自分にできる事をしようとしてくれている。
「ごめん」
「謝らないで」と彼女は続ける。
「おかしいよね。私一人じゃ何もできないってことは私自身が一番よくわかってるつもりなのに。普通なら、手伝ってって言う所だと思う。必要だから、手を貸してって。そんな風に。でもたぶん、……怖かったんだと思う」
「怖い?」
「貴方に嫌われるのが。貴方に失望されるのが、かな?」
以外な言葉に目を丸くしていると、姫ちゃんが反転。
背を向けて、首だけを巡らせてこちらを見る。
「ずっとすごいなって思ってた。旅の間、私達にはできない事いくつもやっちゃうんだもん。だから、尊敬してる。ちょっと意地悪なとこもあるけど、細かいところに目が行くの、なかなかできる事じゃないよ。うーん、立派な人を見ると自分も背筋がのびちゃう感じかな? だから啓区には、あんまり恰好悪いところ見せたくないなって思ったのかも」
「そんな、事……」
嫌うなんてない。
失望もするはずないのに。
ちょっとぐらい落ち込んだって、ちょっとへこんだって、それくらいで見る目が変わるはずなんてない。
だって、姫ちゃんはいつだって頑張ってて、一生懸命だったんだから。
そんな人を、悪く見るなんてできるはずがない。
「落ち込んでる人のきちんとした励まし方、私にはわからない。だから、色々考えてちょっと無茶してみることにしてみたの。らしくないかな?」
どう答えていいのか分からずにいて困ってしまうけど、じっとこちらを見つめられて意見を求められ続けているので、やむなく口をひらいた。
「……うーん。正直驚きはしたけど。でも、らしくない事はないと思う。最近の姫ちゃんなら、ちょっとそんな所があるよねー。最初らへんは、もっと自信なさそうだったけど」
「そうかな。そうだと頑張ったかいがあるかも」
振り向いた姫ちゃんはこっちに手を差し出してきた。
「戻ろう? みんなの所に」
僕はためらいながらもその手をつかんだ。
気持ちに区切りはついてないけど、少しだけ楽になった気がしたから。




