第30話 もぬけの宿
朝、定期連絡としてコヨミ達に連絡を入れようとしたけど、そちらも返事がなかった。
中央領のどこかにいるルミナリアや三座ちゃん達の方も。
不穏の気配が強くなってきた。
イフィールさんの事もあり心配だ。
そのため、午前はイフィールさん達が滞在している宿屋に寄ってみる事にした。それで、何もなかったらセルスティーさんの手伝いをしようという事で、意見がまとまった。
カクエ宿屋
イフィールが滞在している宿屋に向かった僕達だったけど、その部屋に人はいなかった。
「いない、ね」
生活の痕跡はある。
今もこの部屋でイフィールさん達が過ごしているのではないかと思えるくらいに。
けれど、チャットに彼女達からの応答はない。
これは何かあったと考えていいだろう。
相変わらずコヨミ姫や他の面々にも連絡が繋がらないしで、何か関係があるのだろうか。
とりあえず、尋ねる人間を変えることにした。
選達はシステムの使い方を覚えていないが、華花なら覚えているはず。
という事で、彼女にも連絡をとってみるのだが……。
「こっちもダメみたいだよー」
部屋の様子を調べていたみんなに伝える。
収穫なし。
これは、あからさまに何かが起きている。
けえど、それが何か分からないのが辛い。
ディークさんがハイネルさんに意見を求める。
「どうする兄貴」
「連絡がつかない、か。……聖堂教をひきはらって隠れるか、今のままの生活を続けながら調査していくかの二択しかあるまい」
ハイネルさんは姫ちゃんを見る。選択はこちらに任せるという事だろう。
姫ちゃんは、きっぱりと告げた。
言うべき事もしたい事も最初から決まっていたようだ。
「私はやっぱり、隠れるのは嫌かな。何が起こっているのか確かめて、必要な事をしたい。でも、ハイネルさん達の意見はどうなんですか?」
「私としては、逃げ隠れしてほしいところですな。現在の状況では、分からない事が多すぎる。しかし、私達は護衛なので」
意見は対立しているようだ。
ハイネルさんの意見に賛成するエアロが、口を開いた。
彼女は不満げな様子だ。
「私も同意見ですよ。なんでそう進んで危ないところばっかり行きたがるんです? ちょっとくらい逃げ隠れしたっていいじゃないですか」
そう文句を飛ばしてくるが、要するに心配してくれているのだろう。
未利に次ぐツンデレだ。
しかし、それに意を唱えるのはディーク。
彼だけはこちらの考えと同じらしい。
「でも、俺は。姫乃様達に賛成だ。何とかできるなら何とかしたいって思う。兵士としては失格だろうけど」
「失格だな」
「兄貴……」
しかし、自分の意見を表明してすぐばっさり切られて、意気消沈。
ハイネルさんは兵士としての意見を述べている体だけど、兄として弟を心配してもいるのだろう。
ディークさんは色んな意味で兵士らしくないから。
僕達はそういうとこ、嫌いじゃないんだけどねー。
沈んだ空気を追い払う様に、姫ちゃんが場をまとめていく。
「とりあえず、まずセルスティーさんに相談してみよう。未利とも話しをしなくちゃいけないし」
「そうだねー。大事な事はしっかりと報告連絡相談しなくちゃー」




