第25話 強がりさん達
培養施設での調べ物を終わらせた後、重い足取りで聖堂教会へ戻る。
その日あった事は、帰路をたどる時点ですでにチャットで報告済み。
けれど、一部の事実は伏せたままだ。
伝えたのは、ホムンクルスの施設があった事と、そして、古戸零種とラルドさんの事、エアロと先代東領領主であるシトレの事。
チャットを飛ばしたラルドさんからの返信はない。
イフォールさんからの返信はあったから、様子に変わりはないとの事だったけど。思う所がまったくないというわけではないのだろう。
反対に、姫ちゃんの方の収穫はあまりなかったようだ。
計測器の設置をするついでに、聖堂の人たちのお手伝いを成り行きで手伝ったくらいらしい。
あとは司教さん達がバタバタしているのが分かった事だろうか。
なんでも、巷をにぎわせている犯罪集団が、有名な司教を殺害したとかでそちらの方でかかりきりになっているらしい。各地で略奪を繰り返しながら逃走・潜伏中とのことだ。
状況がおついた頃、夜。
旅の記録を残すために交代で書くようになった日記をめくって、文章をつづっていると、ディークさんが話しかけてきた。
「啓区様、まだ寝ないんですか? なんか、いつもより日記書くのに時間かかってるよな」
「あはは、ばれちゃったー。ちょっと道端でこけちゃって、恰好わるいからそれは書きたくないなーなんて考えてたんだよー」
口からでまかせ、だが相手は信じてくれたようだ。
「あー、そういう日って後から思い出して何とも言えない気持ちになるよな。兄貴とか忘れてればいいのに、わざと掘り返してくるしで。うざいからめっちゃ大変なんですよ」
ハイネルさんは、ある程度人の言葉の裏を読み取ったりしているようだけど、ディークさんは違う。
人を疑うのが苦手なようだ。
「まじでむかつきます」
今も、こちらに向けた顔から疑心の影はない。
「ディークさんのその言葉使い、すっごくうつってるよねー」
「あー、未利様? レミー? 城に慣れるために一緒にいた事が多かったから、その時にですかね。なんかすごく言いやすくて、なじむから知らない間に。兄貴なんかは口が悪くなったって嘆いてますけど」
そういえば未利は、変装している時に兵士の真似事してた。
新米兵士であるディークさんだから、一緒に先輩たちからあれこれ教えられることがあったのかもしれない。
「まあ、悪くはなってるよねー。でも、僕も姫ちゃんもそういうの嫌いじゃないよー」
「なら、いいんですけど。俺、敬語苦手だし、力仕事以外からっきしだしで、兄貴にもメリルにもいっつも馬鹿にされるんですよ」
「あはは、心配されてるんだよー」
「それは分かってるんだけどな」
はぁ、とため息をつくディークさん。
「啓区様や姫乃様は俺よりうんと年下なのに、なんでそんなにしっかりしてるんだ。なんか悔しい」
何やら、彼には色々とコンプレックスがあるようだ。
優秀なお兄さんのそばにいると、苦労するのだろう。
「しっかりしてるように見えるけど、余裕ないと思うよ。僕も未利もね。姫ちゃんだって、きっとそうだと思う。ただ、それを心配かけたくないから……じゃないかな。このパーティー、なあちゃん以外、ある意味虚勢を張ってるっていう特徴があるからー」




