第26話 小鳥のさえずり響く朝
中央領に来てから四日目の朝。
小鳥のさえずりで、目が覚めた。
「ふあ」とあくびをしてしまうのは、普段にない行動だ。
昨日は色々あったから、精神的に疲れたのだろう。
そんな僕に声をかけてくるのは……、
「おはようございます」
一足早く起きていたらしいエアロ。
彼女は今まで、(これまで皆が交代で書き綴ってきた)日記の中身を確認していたらしい。
言語は日本語だけど、エアロにはある程度読み解けるのだ。
冊子を閉じてしまいながら、彼女が声をかけてくる。
「ちょっと疲れた顏してますよ」
「あ、分かっちゃうー?」
「まあ、貴方達とのつきあいもそれなりですからね」
エアロに気づかれたという事は、もっと付き合いの長い姫ちゃんにも気づかれるという事だ。
あまり心配はかけたくないが、今さら顔色を変える事などできないのだから、上手な言い訳でも考えておこう。
「おっ、啓区様おきたみたいだな」
次に声をかけてきたのはディークさん。
入り口近くで椅子に座って目を閉じていたらしい彼が、立ち上がって伸びをしていた。
「あはは、おはようー。ベッドに横になってないの凄いよねー」
「鍛えてるからな。でも兄貴の場合は立ったまま眠れるんですよ」
「へー、おもしろーい」
見ると、ハイネルさんは壁にもたれかかって目を閉じていた。
あれで寝てたのかな。
が、こちらの会話に反応して瞼を上げた。
そして挨拶。
「勇気殿、おはようございます」
「あはは。おはよー」
ディークさんが言うように立って寝ていたのか、それとも起きていたのかどっちだろう。
横にならないと疲れが取れないと思ったけど、そうでもないようだ。
護衛役としてついてきている彼等二人は思ったより体力がある。
専門の技術を身に着けた彼らは、いざという時は徹夜ぐらいはどうって事ないのだろう。
単純作業で面倒くさそうとか、頭を使う作業からハブられて退屈そうな顔をしてるのは見たことがあるが(主にディークさんが)、二人が疲れた顔をしてるところを見た事が無い。
そんな彼に、先輩であるエアロが尋ねる。
「アスウェルさんとかフォルト・アレイスみたいな、不審者の気配とかはありませんでしたよね」
「おう。エアロ先輩。誰もこなかったぜ」
「それなら良かったです」
心の底からほっとしたようなエアロ。
その二人を今の状況で引き合いにだすとは。
エアロの心配はまだ尽きないようだ。
「部屋の外で一晩中こちらの様子をうかがっていたとか、実は隣の部屋との壁が薄くて誰かが一晩中壁にはりついているとか、そういう事は……ないですよね?」
読んでる本にそんな話があったのかな。
そんな事実際にあったら、ホラーすぎる。
ディークさんは軽く引いていた。
「な、ないと思うぜ」
「ならいいんです。こんなところまできて、あの二人のような危ない人には近づいてきてほしくないんですよ」
それにしても、エアロは本当にアスウェルやフォルトの事が嫌いみたいだ。
啓区が言えた事ではないが。
「エアロ的には極刑確定枠みたいなー?」
「好きになれる要素があまりないんですよ。根本的に相性が悪いんでしょうね」
「そうなんだー。でも、仲悪かった未利とは今はそれなりだよねー」
「未利さんの場合は、特別です。いえ、特例です」
どちらの言葉も似たようなものだと思うけど?
少しばかり照れ臭そうな表情を見せたエアロは、話の軌道を修正。
「アスウェルさんは、似てるんですよ。都合のいい幻想を押し付けてた頃の私に。フォルト・アレイスも。特にアスウェルさんは、あの人は一度未利さんを……」
「?」
「いえ、何でもないです」
ものすごく何かありそうなところで言葉をきられると、余計に気になっちゃうんだけどな。
でも姫ちゃんが起きたようだから、その話は別の機会に。
「ふぁ、あ。皆おきてたんだ」
「すぴー……すぴぴー」
「なあちゃんはまだ眠ってるんだね」
とりあえず、四日目の予定を話し合うことになった。




