第20話 漆黒の刃からの連絡
しかし、これ以上どこを見て回れば良いだろう。
頭の中に、見て回ってきた各区画の様子を思い浮かべる。
ざっと見て回った感想としては、聖堂内部に怪しい部分は見られなかったという事になるけど。
やましいところがあるなら、そんな場所が簡単に見つかるとは思えない。
最初から疑ってかかるのもアレだけど。
けど、調査に夢中になりすぎて背中をぶっすり刺されるような事態にならないように注意しなければならないのが、大変な所。
弱点の多い……というか弱点だらけの僕達には、骨が折れる作業になりそうだ。
そんなこんなで。いったん頭をひやすために休憩する事になった。
部屋に戻って、善意でここの人達から届けられた食事を食べる。
お客様用の食事は、各部屋に直接、という形らしい。
シュナイデル城では、食堂で他の兵士さんとまざって食べる事が多かったけど、ここでは本当に他所の人扱いだ。
食べるのは、もちろん毒が入ってないか、しっかりチェックした後に。
味付けが薄いのが特徴なのかな。
ダシの味とか、素材の味とかが活きてる感じで、香辛料が少なめ。
シュナイデの町ではお魚のメニューが多かったけど、こちらはお野菜のメニューが多い。
視線の先では、野菜炒めっぽいメニューを口に運んでるなあちゃん。
と、そのお世話をするエアロと姫ちゃん。
「あむあむ。とっても美味しいの」
「あ、なあさん口の端についてますよ」
「私がとるよ。なあちゃんじっとしてて」
未利がいたら、もうちょっと賑やかだったんだろうけどね。
護衛組は、黙々と食事中だ。
がつがつ勢いよく食べてるディークさんに、静かに口に運んでいるハイネルさん。
そんな兄弟は、同時に窓へ視線を向けた。
「なんか気配が……って思ったら、コウモリだな」
「こんな時間に、人のいる場所に近づくのへ珍しいですな」
僕達も視線をむけると、窓の向こうにコウモリがとんでいた。
この世界では昼間でも割と飛んでる事があるらしいけど、それでも珍しいようだ。
なんでここに?
エアロに視線を向けると、彼女は首を横に振った。
彼女のではないらしい。
「お城においてきましたから」とのこと。
なら一体だれが、と思っていると、そのコウモリが手紙を持っている事に気がついた。
窓をあけると、その紙切れをほうりなげられた。仕事が雑い。
一仕事をやり終えたコウモリは、どこかへバサバサ飛んでいってしまう。
ハイネルさんがその手紙を拾い上げる。
あれこれ眺めたり、手触りを確認したり、光にすかしたり、においをかいでみたり。
一分ほどでチェックは終了。
安全が確認されたので、手紙を開封することになった。
こういう厳重な扱いされると、やっぱり姫ちゃんは戸惑ってしまうようだ。
そこまでしなくても、みたいな顔してる。
視線の先では、ハイネルさんが封をきって、中から用紙をとりだしていた。
入っていたのは一枚だけ。
紙を広げてみると、そこには、地図がかかれていた。
そして、黒い刃のイラストも。
このイラストから連想できる事といえば、僕達には一つしかない。
なあちゃんを除いた全員が息をのんだ。
みんな差出人の正体が頭に浮かんだようだ。
やっぱり、漆黒の刃から?
「読んでいきます。よろしいですかな」
ハイネルさんの言葉にうなずいて、傾聴。書かれていた内容は簡潔だった。
とうやら向こうは僕達に用があるらしい。
一言「話がある」との事だ。
これはそのままの意味でよいのだろうか。
よくも部下をやってくれたな(怒り)
なんて意味じゃない?
だって、そっちの方が犯罪組織らしいし。
でも、これは逆にまたとない機会でもある。
いつもどこかに潜んでいる連中が、こちらに姿を現すというのだから。
罠であっても、前に向かっていくべきなのろう。
手紙を読み終えたエアロが、意外そうな声を出す。
「あの漆黒の刃がこちらに手紙を送ってくるとは思いませんでしたね。てっきり逃げ隠れして、こちらの消耗をまってから仕組んでくるかと思ったんですが」
うん、僕もそう思ってた。
まさか、喧嘩を売った相手からコンタクトをとってくるとは思わなかった。
クルスとロザリーの身柄をこちらが所有している事が、効いたのだろうか?
あちらの組織の内情は分からないので、そう推測するしかないのがもどかしいが。
真意はやはり、向こうに確認してみるまで分からない。
チャットで各地域にいる者達に連絡を飛ばしてから、人目のつかなさそうな場所を探す事になった。
場所は指定されてなかったから、接触方法は、そういう事でいいのだろうか?
姫ちゃんとしては、「他の人を巻き込みたくないから、できるだけ戦いやすくて人が少ないところがいいよね」とのことだ。
戦う事が自然に選択肢に入っているところが、物騒だけど。
特に反対する理由もない。
場所探しにはちょっと時間がかかってしまった。




