07 魔喰いの木
睨むように振り返った。
「ローランド・・・。」
冷酷な表情の半分は、包帯に覆われていてよく見えない。うす暗い空間で、青白い光に輪郭が不気味に浮かび上がる。
「いないって・・・どういうことだ。」
「そのままだ。その木は、魔喰いの木。クシュ族以外の魔力を喰らい、その木は成長する。」
「喰らいって・・・シルヴィアは!」
口を開きかけた途端、ローランド卿は左目に痛みを感じた。思わず左手で押さえ、膝をついた。体が宙に浮くような錯覚に陥った。全員、注目した。しがみついている感情で、なんとか冷静になろうとしたものの、頭を巡る考えは、全て焦りだった。
しまった―迂闊だった!一度体が感覚を失くすと、当分は大丈夫だった。油断していた!今、また血が抑えられなければ!
そう思った瞬間、体に何かを感じた。どこかへ押し流される。踏ん張りが利かなかった。他の者も、顔を手で覆い、耐えている。いやだ!俺は魔物じゃないのに!だが、次の瞬間にはもうそこにはいなかった。
「ウィル・・・?」
シアーズはか細い声で呟いた。なんで、あいつが?どこにもいない。魔喰いの木だと言っていた。あいつの呪いは、七歳の時に解けたはずなのに。
「閣下・・・?」
シアーズはイギリス軍の士官の中から、普段からローランド卿の傍によくいる従卒を見た。そして、彼の胸を掴んだ。ひっ、と悲鳴が聞こえた。
「おい、話せ!なんでローランドはここに来た?何が目的だ?」
話していいのだろうか。自分以外には、出港の理由すら、閣下は告げなかった。ここにいる誰一人、自分以外は知らない。その沈黙にシアーズはいらついた。
「おい、喋れ。あいつを、助けたかったら。」
士官は目を閉じた。ここで何もしなければ、おそらく何も知らない自分達だけではローランド卿を救いだせない。例えローランド卿に恨まれようとも、ここであの方を死なせるわけにはいかない。決心して、重い口を開いた。ローランド卿の母が魔物であり、その力を封印する前にローランド卿は生まれてしまったこと、つまり彼の体には魔物の血が流れていることを。シアーズからだけではない、兵士達からも驚きの声が漏れた。
誰も知る訳はないのだ。あの方は、誰にも話さなかった。恐れていたのだ。居場所を追われることを。




